相続登記をオンラインで申請する際の手続方法やメリット・注意点を解説

相続登記をオンラインで申請を行う方法について_サムネイル

相続登記を申請する方法

相続登記とは、不動産所有者が亡くなった場合に相続人へ名義変更する手続を指します。この手続の申請は窓口や郵送のほかに、オンラインで進める方法があります。

今回解説するオンライン申請とは、正確には手続の一部をオンラインで行う「特例方式」という方法です。この特例方式は、半分だけオンラインで手続するという意味で、通称「半ライン申請」とも呼ばれています。

具体的には申請自体はオンラインで行い、戸籍謄本などの添付書類は法務局に郵送するという方法です。これは、戸籍謄本などの書類をすべて電子文書化して電子署名を付与するという作業がとても煩雑であるためです。以上を踏まえて、オンラインでの申請方法について紹介していきます。

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相続登記のオンライン手続の流れ

オンライン申請するうえでの全体の流れや、申請に必要な準備項目を以下の項目に沿って解説します。

  • 必要書類の収集
  • オンライン申請を行うパソコンの準備
  • 相続関係説明図の作成
  • 申請情報の入力
  • 指定されたファイルの添付と電子署名
  • 申請情報を送信する
  • 登録免許税の納付
  • 原本書類を法務局へ郵送する
  • 完了確認
  • 登記識別情報の受領

必要書類の収集

相続登記の手続を行う際は様々な書類を準備する必要がありますが、申請する方法によって用意する書類に差異はなく、基本的にはどれも同じです。ただし、書類に不備があると差し戻しが発生し、複数回役場へ通うことになったり書類の修正などが必要になるため、準備する書類は入念にチェックすることをおすすめします。以下は相続手続で準備する頻度が高い書類一覧になります。

  • 遺産分割協議書
  • 相続人の印鑑登録証明書
  • 不動産相続人の住民票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 亡くなった方の住民票(除票)
  • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本
  • 固定資産評価証明書
  • 相続関係説明図

オンライン申請を行うパソコンの準備

実際にオンライン申請を行う際には、以下の環境を整えておく必要があります。

  • パソコン(Windows10・Windows11推奨)
  • 電子証明書入りのマイナンバーカード
  • カードリーダー(マイナンバーカード対応)

上記の環境を容易で来たら「登記・供託オンライン申請システム(登記ネット・供託ネット)」にアクセスします。ここのトップページに「申請者情報登録」という項目があるので、ここで必要情報を入力してIDとパスワードを取得しましょう。

そこから「ダウンロード(ソフトウェア・操作手引書)」を開き、「ソフトウェアのダウンロード」から「申請用総合ソフト」のダウンロードをクリックすることで、申請に必要なソフトがダウンロードできます。

相続関係説明図の作成

オンライン申請で相続登記を行う場合は、「登記原因証明情報」を送信する必要があります。これは相続関係を示す情報であり、具体的には戸籍謄本や遺産分割協議書などの書類を指しますが、オンライン申請ではこれらすべてを提示するのは煩雑になるため、これらの情報をまとめた「相続関係説明図」の送付が推奨されています。

この「相続関係説明図」を送付することで、登記原因証明情報を提示したことになるので、申請する際は事前にPDFファイルなどにデータ化しておくとよいでしょう。

申請情報の入力

次のステップは、申請情報の入力です。以下の手順に従って進めましょう。

  • 申請用総合ソフトへログイン
  • 「申請書の作成」を選択
  • 「登記申請書(権利に関する登記)(4)所有権移転(相続)」を選択
  • 申請情報の各項目を入力

ここで入力した情報が登記簿に反映されるので、特に相続人の氏名や住所などに誤りがないように確認しながら入力しましょう。なお、「不動産の表示」を入力する際は、手打ちでの入力ミス防止のため、オンライン物件検索を利用することをおすすめします。

指定されたファイルの添付と電子署名

申請用総合ソフト内にある「ファイル添付」を選択し、事前に準備した相続関係説明図のPDFファイルを添付します。そのまま「署名付与」に電子署名を記入します。これで申請前の準備が完了になりますので、最後に申請情報をプレビュー表示にして入力内容に誤りがないか、また添付情報が間違いなく添付されているかを確認します。

申請情報を送信する

ここまで記入した情報を確認し、不備が無ければ「申請データ送信」をクリックして申請情報を送信します。法務局側で有効な申請であると認識されたタイミングで「受付確認」が表示され、これを開くと受付年月日や受付番号、申請情報などが記載されています。これらの情報は用紙へのメモなどの方法で保管しておくとよいでしょう。万が一、パソコンが開けなくなって確認ができなくなった、といった状況にも対応できるためです。

登録免許税の納付

申請が完了すると申請用総合ソフトに「納付」ボタンが表示されるので、登録免許税の納付を行います。登録免許税の納付方法には、下記の3つの方法があります。

  • 現金
  • 収入印紙
  • オンライン

現金納付は納付書を使用して登録免許税を支払う方法です。支払いが済んだら、申請用総合ソフトから登録免許税納付用紙を印刷して領収書を張り付け、法務局へ郵送します。

収入印紙は登録免許税額が3万円以下の場合に限って認められる納付方法であり、現金の場合と同じく登録免許税納付用紙を印刷し、収入印紙を張り付けて郵送します。

オンラインでの支払いは、インターネットバンキングかATMで電子納付を行います。納付期限は申請情報が到着した日の翌日から起算し、閉庁日を除いて1日間です。申請時点で支払いが済んでいない場合、速やかに支払いを行いましょう。

原本書類を法務局へ郵送する

申請作業の最後に、原本書類や相続関係説明図を法務局へ郵送します。現金納付や収入印紙での納付した場合は、「登録免許税納付用紙」に領収書か収入印紙を貼付することを忘れずに行いましょう。なお、この書類は申請受付日を含めた3日以内の、管轄の法務局へ到着するように進めなければいけません。申請する法務局が遠方の場合、この期間内を過ぎる可能性があるので、重々注意しましょう。原本還付請求も受け付けているので、必要であれば合わせて準備しておくようにしましょう。

また、法務局の住所や電話番号などが不明な場合は以下をご参照ください。

完了確認

申請情報や添付書面に訂正や不備がなければ、申請から1~2週間程度で登記が完了します。申請用総合ソフトで自分が申請した案件を確認し、処理状況欄が「手続終了」となっていれば相続登記は無事完了しています。

申請者情報の登録時に、処理状況に応じた案内メールの受信設定ができるので、確認を忘れないために設定しておくとよいでしょう。

登記識別情報の受領

登記が完了すると、登記識別情報通知および登記完了証が交付されます。登記識別情報とは、数字や記号を組合せた12桁の符号であり、登記完了証は申請された相続登記が完了したことを知らせる通知です。

登記識別情報通知と登記完了証は、どちらもデータで受領できますが、登記識別情報は不動産の所有者であることを証明する非常に重要な情報なので、書面でも保存しておくことを推奨します。データのみの場合、パソコンの故障などでデータが消失してしまう危険があります。

相続登記をオンラインで行うメリット

相続登記のオンライン申請について解説してきましたが、オンライン申請にはメリットもあれば注意点もあります。ここでは相続登記をオンラインで行うメリットと注意点を解説するので、手続の際に参考にしてください。

メリット

相続登記のオンライン申請には、以下のようなメリットがあります。

  • 申請・支払い・修正が自宅からできる
  • 平日21時まで申請できる
  • 申請状況がわかる

申請・支払い・修正がすべて自宅からできる

オンラインであれば登記する物件の所在地にかかわらず、自宅から相続登記の申請ができます。

法務局は不動産の所在地ごとに管轄が決まっているため、窓口で手続する場合、登記する物件が遠方にあってもわざわざ管轄の法務局まで出向かなければなりません。しかし、オンライン申請なら物件の所在地に関係なく、自宅から相続登記を行えます。

また、窓口での手続の場合、不備があると法務局まで出向いて修正する必要がありますが、オンライン申請なら自宅で修正が可能です。

そして、登記と同様に登録免許税も申請・修正・支払いをすべてオンラインで行えます

平日21時まで申請できる

法務局の開庁時間は平日8時30分〜17時15分までですが、オンライン申請は平日8時30分〜21時まで利用可能です。平日は仕事の都合もあり、法務局へ行く時間がないという方も多いでしょう。そんな方にとって、オンライン申請はおすすめです。

オンライン申請で手続した場合、17時15分以降に送信された場合は翌開庁日に受付されます。

申請状況がわかる

オンライン以外の方法で手続した場合、登記が完了しても法務局から連絡が来るわけではないので、各法務局の公式サイトで完了日を確認しなければなりません。しかし、オンラインならシステム上の通知で登記が完了したことを確認できるため、申請状況を随時確認できます。

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相続登記をオンライン申請する場合の注意点

オンライン申請の注意点としては、下記のことが挙げられます。

  • 添付書類の送付・登録免許税の納付には期限がある
  • 「補正のお知らせ」を見落としやすい
  • 相続関係説明図の間違いは修正不可

どれも手続に関わる重要なことなので、一読したうえで内容をおさえておきましょう。

スマートフォンでは申請不可

オンラインでの相続登記申請はスマートフォンには対応していません。申請するソフトがスマートフォンに対応していないためです。もし手続を行いたい場合は、別途パソコンを用意する必要があります。購入する際は上述で推奨しているOK(Windows10またはWindows11)を選ぶと間違いないでしょう。

「補正のお知らせ」を見落としやすい

申請情報や添付書面に不備があると、オンライン申請システムに「補正のお知らせ」が届くので、見落とさないよう注意しましょう。補正が完了しないと、登記の手続はいつまでも完了しません。申請内容の不備のほか、書類の不足などでも補正を求められる場合があります。

補正には期限があるので、期限を確認したうえで迅速に補正をするようにしてください。期限を過ぎると申請が却下され、再度やり直しになってしまう場合もあります。

相続関係説明図の間違いは修正不可

オンライン申請の際に相続関係説明図をPDFファイル化して添付しますが、相続関係説明図は修正できません。そのため、もし相続関係説明図に誤りがあった場合、申請を一旦取り下げて再度申請し直す必要があります。申請のやり直しには手間がかかるので、相続関係説明図の内容には間違いがないよう念入りにチェックしましょう。

オンライン申請が不安なら司法書士への依頼がおすすめ

相続登記のオンライン申請は、自宅で手続を完了させられる便利な手段です。本記事で紹介した流れに沿って、ぜひご自身で申請を進めてみてください。

ただし、オンラインで相続登記を行うにはパソコンを所有していることが前提であり、そのうえである程度パソコン操作に慣れている必要があるでしょう。誤った申請があると、補正を依頼されて二度手間になってしまいます。

もしオンライン申請に自信がない場合、相続登記の手続をすべて司法書士に任せることもできます。司法書士に依頼すれば必要書類も不足なく確実に用意できるので、相続登記の手間を削減したい方は司法書士への依頼もご検討ください。

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記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載