相続登記の費用を安くする5つの方法!司法書士報酬を抑えるポイントも解説!

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相続登記にかかる費用と内訳

相続登記を行うには費用がかかりますが、相続時の状況に応じて金額は異なります。たとえば、不動産(土地や建物)の評価額や専門家に手続を依頼するかどうかは、費用が異なる大きな要因の1つとして考えられます。しかし、どのようなケースにおいても、相続登記を行う上で必ずかかる主な費用は、司法書士へ依頼するか否かは問わず、次のようなものが挙げられます。

添付書類の費用

相続登記の際は、登記申請時に登記原因(相続または遺贈)や住所証明となる書類を添付する必要があります。遺産分割で不動産を取得するケースを前提に、一般的な必要書類ごとに費用を一覧化すると、下記のとおりとなります。

【添付書類の交付手数料】

書類名称 概要 1通あたりの交付手数料
遺産分割協議書 不動産の分割に関する合意文書 無料(自分で作成する場合)
戸籍関係書類 相続関係がわかる文書 450円~750円
住民票除票の写し 被相続人の住所証明 200円~300円
印鑑登録証明書 協議書に使用した印鑑の証明 200円~300円
住民票の写し 相続人の住所証明 200円~300円

添付書類の費用の大半を占めるのは、戸籍関係書類印鑑登録証明書住民票の写しです。戸籍関係書類は被相続人および相続人全員分が必要となり、印鑑登録証明書および住民票の写しは、相続人全員分について取得する必要があります。

なお、相続する不動産につき別途「登記事項証明」と「固定資産評価証明書」も揃える必要があります。登記申請書に記載する不動産の表示や、登録免許税を計算するための固定資産評価額を確認するためです。これらの取得費用として、合計でおおよそ1000円程度かかります。

登録免許税

相続登記の申請手数料にあたる登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%(本則の税率)です。おおむね1000万円以下なら4万円以内、都心部のマンションのように価値の高い物件であれば10万円を超える可能性があります。

なお、特定の条件を満たした相続登記については、登録免許税が免税となる可能性があります。詳しくは節約方法を紹介する際に解説します。

その他の手続の費用

不動産の相続登記にあたっては、各相続人に指示して戸籍謄本などを取得し手渡すなどの対応のため、電話料金や郵便料金がかかります。住宅ローンを残したまま相続が開始したケースでは、団体信用生命保険で完済できる場合が多数ですが、完済後に抵当権(金融機関が設定した担保権)を抹消するため、登記費用として土地と建物で計2000円かかります。

ここまで解説した費用は、相続の事例にかかわらず、安く抑えるのは難しい部分と考えられます。

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相続登記の費用相場

相続登記(相続や遺贈で取得した不動産の名義変更)の費用の相場は、法定相続人の数および不動産の価値によって変動します。費用が高くなるケース、安くなるケースに分けて相場を考えると、次のようになります。

費用が高くなるケース(5万円から14万円程度)

  • 都市圏のマンションなど、評価額の高い不動産を相続する
  • 被相続人の婚姻回数が複数回にわたるなど、法定相続人の数が多い
  • 前回の相続登記が終わっておらず、数次相続に伴う登記を必要とする

平均的な費用もしくは安くなるケース(3万円から8万円程度)

  • 地方の空き家・狭小物件など、評価額の低い不動産を相続する
  • 一般的な家族構成で、法定相続人の数が3人から4人程度に留まる
  • 前回まできちんと相続登記を済ませており、今回の登記申請だけで済む

司法書士や弁護士などの専門家に依頼するケースでは、別途報酬額が加算されますが、詳しくは後述で紹介します。方法別に費用相場は大きく分けて次の2つです。

自分で行う場合の費用

相続登記の申請を自分で行うケースの費用相場は、費用の内訳を大きく3つに分けて、それぞれの金額の目安から考えることが出来ます。仮に固定資産評価額が2000万円の物件を相続すると、次のように考えられます。

費用の内訳 概要 金額の目安
添付書類の費用 戸籍関係書類など 数千円から1万円程度
登録免許税 登記申請の手数料 8万円(本則の税率による)
その他の雑費 郵便料金・電話料金など 数百円程度

司法書士に依頼する場合の費用

相続登記の申請を司法書士に依頼するケースでは、自分で行うケースでかかる費用に司法書士報酬が上乗せされます。

下記は日本司法書士会連合会が全国の司法書士に対して報酬額のアンケートを行った結果になります。もし、気になる事務所が、ほかの地域であっても、連絡を取ってみても良いでしょう。今はZOOMなどのオンライン面談や郵送のみで手続が完了する事務所も増えてきているので、積極的に活用していきましょう。

地区

低額者10%の平均 全体の平均値 高額者10%の平均
北海道地区 2万8320円 6万983円 9万7843円
東北地区 3万5457円 6万667円 9万9733円
関東地区 3万9212円 6万5800円 10万3350円
中部地区 3万7949円 6万3470円 11万6580円
近畿地区 4万5842円 7万8326円 11万8734円
中国地区 3万7037円 6万5670円 11万1096円
四国地区 4万683円 6万5578円 9万9947円
九州地区 3万8021円 6万2281円 9万6892円

※参照:報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)│日本司法書士会連合会

費用を安くする5つの方法

相続登記の費用を安く抑えられるのは、書類不備による連絡の往復や再交付請求などの手間がないように準備した上で、なるべく登記完了まで自力で手続する方法です。そうは言っても、ほかに不動産の名義変更を必要とするケース(売買や贈与など)に比べると相続登記の難易度は高く、最初にどんな手順にするのかしっかりイメージする必要はあるでしょう。

なるべく自力で手続する

相続登記を司法書士などに依頼するケースでは、依頼先に支払う報酬が費用の大半を占めます。自力で手続完了できれば、大幅な節約になるでしょう。

とはいえ、知識や時間が不足するなかで無理に手続に対応しようとすると、補正(登記官からの修正指示)や書類の再作成が発生し、かえって費用・時間共にかさむ可能性があります。このあと説明するように「手続の流れだけでも事前に司法書士に相談する」「遺産分割協議書の作成だけ自分たちでやる」とのように、計画的かつ無理のない範囲で対応すると良いでしょう。

オンライン申請を利用する

相続登記の方法は、法務局(登記所)での郵送または窓口申請のほかに、申請用ソフトを使ったオンライン申請もあります。パソコンとインターネット環境、ソフトのインストールや電子証明書に関する事前準備が前提ですが、交通費・郵便料金と共に時間の節約になります。

注意したいのは、数あるオンライン申請可能な登記のなかでも、相続登記に限ってはインターネットで完結しない点です。必要な添付書類に含まれる戸籍関係書類が電子文書の交付に対応しておらず、申請とは別に紙の原本を提出する必要があるのです。

取得・作成が困難でない書類は自分で揃える

相続登記の費用を抑える上で、取得・作成が困難でない書類は自分で揃えるのは効果的です。たとえば、法定相続人の数が少なく、亡夫から同居する妻が単独で自宅を相続するような簡単なケースなら、遺産分割協議書は雛形を簡単に改変するだけで作れます。住民票の写しも、委任状を作成して代表者が全員分をまとめて取ってくるなどの方法を取れば、連絡・手渡しの手間も省けるでしょう。

交付手数料が高額化する戸籍謄本も、1通ごとの取得自体は困難ではありません。ただし「戸籍謄本を取得しなければならない人」や「合計で何通必要か」は事例ごとに全く異なるため、判断に迷って不備・不足が生まれる可能性があります。

登録免許税の免税制度・税率軽減制度を活用する

相続登記の手数料にあたる登録免許税は、一定の場合に免税もしくは税率軽減があります。制度の対象となるケースは、次の通りです。

  • 100万円以下の土地の相続:免税
  • 数次相続に伴う登記:前回相続まで登録免許税につき免税
  • 配偶者居住権の設定:本則0.4%→0.2%に税率軽減

たとえば、配偶者と子が法定相続人で、被相続人と同居していた配偶者が単独で不動産を取得するケースでは、配偶者居住権を設定した方が登記申請費用が安くなります。

手続の流れについて司法書士に相談する

相続登記の費用節約を目的として「なるべく自力でやる」と決めた場合でも、念のため最初に司法書士に相談しておいた方が良いでしょう。状況を伝えて簡単にアドバイスを得るだけなら、無料で相談対応してくれる場合があります。

司法書士に相談しておいた方がよいのは、次のような部分です。いずれも、申請の際に補正(不足した書類の補填や記載内容の修正など)が発生しやすい項目であり、自己判断で行うと余計に費用がかかる可能性が大きいと言えます。

  • 遺産分割協議書の書き方
  • 必要な書類の集め方
  • 委任状の書き方(※)
  • 固定資産税の税率、免税制度

※不動産を共有で相続する場合、任意で決めた相続人の代表者が登記申請するのが一般的です。この場合、共有持分がある共同相続人は、連名で委任状を作成する必要があります。

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不動産の登記以外の費用を抑える

相続手続で必要なのは、不動産の名義変更にあたる登記だけではありません。預金の払戻し、証券口座内の資産の移管、各種会員権の解約など、さまざまな手続を要します。都度同じような書類を揃えて申し込む必要がある点などから、相続登記の手続のなかで「ほかの手続の費用を安くして全体の費用を抑える」という考え方もあります。

ほかの手続の費用を抑えるために相続登記で考えられることとして、次のような手続が挙げられます。

添付書類の原本還付を請求する

相続登記で登記申請書に添付する書類(戸籍関係書類や住民票)などは、登記完了後に返却してもらえます。原本還付請求と呼ばれる手続が必要ですが、請求書提出などの特別な対応は不要です。必要な情報を記載した相続関係一覧図や、原本と同一のものである旨を記載し署名押印したコピーを登記申請時に提出するだけで問題ありません。

あらかじめ法定相続情報証明制度を活用する

法定相続情報証明制度とは、戸籍関係書類と作成した法定相続情報一覧図を提出することで、一覧図に認証文を付したものを何枚でも交付してもらえる制度です。

一覧図は戸籍関係書類に変わる証明情報となり、相続登記だけでなく、ほかの手続でも活用できます。制度を利用することで、相続手続の全体を通して戸籍関係書類の交付手数料は1回分で済むようになり、手続費用の総額を数千円から数万円程度は抑えられます。

費用節約に関するよくある質問

相続登記の費用を節約するにあたって、「登記しなければ費用はかからずに済む」「司法書士に任せる範囲を調整して安く抑える」といった考え方もあります。登記の是非については、今後の法改正で義務化される点に注意しなければなりません。

費用を安く済ませたい人からよくある質問を注意点を交えて解説します。

相続登記は法律の義務なのか

相続登記(相続や遺贈によって取得した不動産の名義変更)は、法改正により、令和6年4月1日から義務化されました。同年3月以前に相続した不動産の場合は同年4月1日より3年以内、同年4月1日以降に相続した場合は、相続により取得したことを知ってから3年以内に登記しない場合、過料に科せられます。

法改正までは、相続登記をしなくても、売却・リフォーム・賃貸・隣人トラブルの解決などを必要としない限り、デメリットは生じないのが実情でした。そのため、全国に「所有者不明土地」や「管理が放棄された空き家」が増え、上記のような法改正に至っています。結論として、相続登記をしないことで費用をまるごと節約することは、今後不可能になります。

司法書士に依頼する範囲を自分で決めることはできるのか

司法書士に依頼する範囲は、無料相談などでの打ち合わせを通じて、個別に決めることが出来ます。遺産分割協議書の作成から登記申請までの一切を代行してもらうことも可能ですし、戸籍関係書類の収集から登記申請までの複雑な部分のみ依頼しても構いません

一般的には「遺産分割協議書の作成」と「登記申請の代行」でそれぞれ司法書士報酬が定められています。遺産分割協議書の作成は相談の上で自分たちでやり、登記申請の代行のみ司法書士に依頼することで、相続登記の費用の節約につながる場合が多いと考えられます。

費用ややってもらえる内容、自分たちで出来そうな内容については、初回相談である程度まで把握できます。まず相談してみて、家族の状況(調査や手続のため開けられる時間や体調など)に応じ、依頼する範囲を決めると良いでしょう。

相続登記の費用節約は見通しを立てる段階が重要

相続登記の費用相場は、2000万円程度の物件を相続すると仮定するなら、実費のみで10万円以内に納まるのが一般的です。費用を安く済ませる上で大切なのは、手続全体の見通しを立てた上での、効率よく進められるような工夫です。補正や書類送付に伴う郵便料金の無駄をなくし、法定相続情報証明制度の利用を通じて相続手続全体のコストを削減する方法などが考えられます。

ほかには、不動産の分割方法自体を見直す手があるかもしれません。登録免許税が安くなる上に子世代による管理がしやすくなるメリットもある「配偶者居住権の設定」で登記を進める考え方もあります。いずれにしても、早い段階で司法書士などの専門家の無料相談をすれば、相続登記の費用を抑えつつ時間も節約するための解決案が得られるでしょう。

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記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載