【雛形あり】相続登記で上申書が必要になるケースとは?

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相続登記で上申書が必要となるケース

相続登記の上申書とは、亡くなった人について必要な添付情報が揃わないケースで、その内容および理由を法務局・登記所に伝えるための書類です。相続関係や所有者の証明に関わる次の書類につき、やむを得ない理由で取得できないときに、証明を補完するものとして自ら上申書を作成・提出します。

  • 被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
  • 被相続人の戸籍附票、住民票の除票の写し

上記情報が取得できない主な原因は、市区町村役場での文書廃棄・滅失です。過去に被災があった地域では、そのせいで滅失していることもあります。以下では、各種証明情報が取得できない可能性がある状況を挙げつつ、上申書が必要になるケースを2つ紹介します。

連続した戸籍謄本の一部が取得できない

相続登記では、法律上相続権を得る人全員について証明するため、被相続人の出生から死亡までの連続したすべての戸籍謄本が必要です。ところが、原本にあたる戸籍簿が本籍地役場で廃棄済または滅失していることを理由に、謄本請求できない場合があります。

生前に離婚歴がある場合

このケースでは、もともと次のように連続した戸籍謄本が存在するとします。

  1. 出生が記録されている戸籍
  2. 1回目の結婚(入籍)が記録されている戸籍
  3. 1回目の離婚に伴って新たに作られた戸籍
  4. 2回目の結婚(入籍)が記録されている戸籍

上記のうち3が滅失していると、1回目の離婚後から2回目の結婚までの間に子がいたとしても、戸籍謄本では把握できません。いずれにしても、相続関係の証明が不完全になり、代わりの書類を用意するまで相続登記による不動産の名義変更はできません。

連続した戸籍謄本のうち取得できない可能性が大きいのは、戸籍法改正前の様式で作成されていたもの(改製原戸籍)です。保管中に本籍地役場が被災するなどして、滅失する場合もあります。

当てはまる場合は、上申書を用意できなくても、代替となる市区町村長の証明書を取得・提出すれば登記申請できます。

稀ではありますが、何らかの理由で上記証明書の交付を受けられない場合もあるでしょう。何らかの理由で証明書が手に入らない場合は「ほかに相続人がいない旨を証明できないケース」に沿った上申書での対応が必要になります。

住所証明情報が取得できない

住所証明情報が取得できない_イメージ

相続登記を申請する際は、不正な登記を防ぐため、住所を用いて被相続人と登記名義人が同一人物である旨を証明する必要があります。被相続人の最後の住所は、住民票(除票)の写しで証明可能ですが、いつでも取得できるとは限りません。住民票が完全に電子管理されるようになる前(令和元年6月20日より以前)は、保管期限である5年を経過すると文書が廃棄されてしまうためです。

生前に住所変更登記がなく、相続登記まで時間がかかった場合

このケースでは、被相続人が次の順で登記および転居をし、相続人側で登記に着手したものと考えます。

  1. 東京都A区の住所で不動産を購入+登記(平成5年)
  2. 不動産を保有したまま同B区に転居(平成21年)
  3. 住所変更登記が完了しないまま死亡(平成25年)
  4. 相続登記に着手(令和6年)

登記簿上の住所はA区・実際に被相続人が最後にいた住所はB区です。4の手続を進めるには、最低でもA区またはB区のいずれかで住民票(除票)の写しを取得しなければなりません。しかし、どちらも住民票の完全電子化より5年以上前の記録となるため、文書の廃棄により取得できないと考えられます。

上記のように、被相続人の住所証明ができないケースが発生する原因は、多くの場合、相続開始から不動産の登記申請までに時間がかかってしまったことだと考えられます。

当てはまる場合には、必ずしも上申書を作成する必要があるとは限らず、登記済証など代替となる情報の取得・提出で登記できます。

代替となる情報がない場合は「被相続人と登記名義人の同一性が証明できないケース」に沿った上申書が必要です。

提出する上申書の書き方

相続登記で上申書の提出が必要になった場合、下記5つの記載項目が揃った文書を自分で作成しなければなりません。

上申書の記載事項 概要
提出先の管轄法務局 登記申請書の提出先に同じ
被相続人の情報 氏名・死亡年月日など
上申する内容 証明できない情報+確約事項
不動産の表示 土地・建物の登記上の表示
申述者の情報 相続人の情報

それぞれ記載すべき内容を詳しく解説すると、次の通りです。これらを踏まえた上で例文・雛形を使用することで、個別のケースに合う上申書を作成できます。

提出先の管轄法務局

法務局のイメージ画像

相続登記の上申書を提出するのは、登記申請書やそのほかの書類と同じく「不動産の所在地を管轄する法務局・登記所」です。

被相続人の情報

被相続人の情報は、最低でも氏名・死亡年月日・最後の本籍の3点が必要です。住所による登記名義人との同一性が確認できないケースでは、登記上の住所も併記する必要があります。

上申する内容

もっとも重要な「上申する内容」については、必要事項をすべて網羅した文面を自ら作成する必要があります。一般的な文章構成に従って、どんな内容を書くべきか順に挙げると、次のようになります。

  • 証明情報が添付できない旨
  • 書面により、上記について正しいことを上申する旨
  • 申述者より、権利関係について今後紛争が生じないことの確約
  • 上記3点そのほかの記載事項をもって、受理を願い出る旨

不動産の表示

相続登記の上申書に記載する不動産の表示は、登記申請書と同じく、登記簿上に記載された内容とする必要があります。あらかじめ郵送またはオンラインで登記事項証明書を取得し、これに沿って記載しましょう。

申述者の情報

上申書には申述者のものとして、相続人全員分の署名と押印が必要です。押印には実印を用いましょう。ほかに相続人がいない旨を証明できないケースでは、証明できる範囲に含まれる法定相続人について、全員分必要と考えます。

上申書の例文・雛形

上申書の例文・雛形_イメージ

以下では、相続登記の上申書がどのようなものかわかるよう、例文・雛形を紹介します。

実際の手続では「市区町村交付の書類があるため作成不要」となる場合がほとんどで、上申書を必要とするケースでは個別の判断が必要です。紹介する文面は参考程度に留め、作成前に司法書士から適宜アドバイスをもらうようおすすめします

被相続人と登記名義人の同一性が証明できないケース

住所証明情報が取得できないため、被相続人と登記名義人の同一性が証明できないケースでは、次の例文・雛形を用います。作成の際は、すでに紹介した通り、登記上の住所を忘れず記載しましょう。

【被相続人と登記名義人の同一性が証明できない場合の記載例】

上申書


〇〇地方法務局〇〇出張所 御中

被相続人 法務太郎(令和〇年〇月〇日死亡)

最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇
登記上の住所 東京都〇〇区〇〇町〇-〇

上記被相続人が保有していた下記不動産について、相続を原因とする所有権移転登記の申請をしますが、登記簿上の住所から法務太郎の死亡時に至る住所の変還を証明できる資料が存在しないため、登記簿上の所有権登記名義人法務太郎と亡法務太郎との同一性を証明することができません。しかしながら、登記簿上の所有権登記名義人法務太郎は、亡法務太郎本人に間違いありません。

本登記が受理されることによって、本件の権利関係に関して今後いかなる紛争も生じないことを確約いたします。つきましては、本書面をもって本登記申請を受理していただきたく、ここに上申いたします。

不動産の表示

土地
所在(登記事項証明書に記載されたもの)
地番(同上)
地目(同上)
地籍(同上)

建物
所在(登記事項証明書に記載されたもの)
構造(同上)
家屋番号(同上)
床面積(同上)

ほかに相続人がいない旨を証明できないケース

連続した戸籍謄本の一部が取得できないせいで、ほかに相続人がいない旨を証明できないケースでは次のような文面を用いて上申書を作成します。使用する際は、提出先の管轄法務局、被相続人の情報、不動産の表示、申述者の署名押印欄を適宜編集しましょう。

【ほかに相続人がいない場合の記載例】

上申書


〇〇地方法務局〇〇出張所 御中

被相続人 法務太郎(令和〇年〇月〇日死亡)
最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇


上記被相続人が保有していた下記不動産について、相続を原因とする所有権移転登記の申請をしますが、被相続人の相続関係を証明する情報の一部が添付できません。本書をもって、被相続人の本件申述者のみであり、ほかに法定相続人がいないことを上申いたします。

本登記が受理されることによって、本件の権利関係に関して今後いかなる紛争も生じないことを確約いたします。つきましては、本書面をもって本登記申請を受理していただきたく、ここに上申いたします。

不動産の表示

土地
所在(登記事項証明書に記載されたもの)
地番(同上)
地目(同上)
地籍(同上)

建物
所在(登記事項証明書に記載されたもの)
構造(同上)
家屋番号(同上)
床面積(同上)


申述者

相続人 法務一郎
住所 東京都〇〇区〇〇町〇-〇 実印

相続人 法務花子
住所 東京都〇〇区〇〇町〇-〇 実印

上申書を作成するときのポイント

証明情報の不足により相続登記で上申書が必要とされるケースは、市区町村が交付する代替書類で対応してもらえる可能性があります。どうしても上申書が必要になるのであれば、印鑑登録証明書の添付を忘れずに行いましょう。詳細は以下の通りです。

上申書が不要となる方法から検討する

上申書がないと相続登記できないケースは、実のところ、ほとんどありません。すでに触れましたが、最新の通達により、市区町村が交付する書類で対応できるためです。多くの場合、代替となる書類を請求してみることで、書類作成の手間が省けます。

連続した戸籍謄本がなくても、相続関係の証明ができる書類

書類の名称 取得できる場所
文書廃棄証明書 該当の戸籍を管理する役場
文書滅失証明書 同上

戸籍謄本を入手できない理由が廃棄によるものか・滅失によるものかで、取得する書類の名称および内容に違いがあります。

住所証明情報については「登記済証がなければ書類交付を申請する必要がある」とも限りません。生前、転居手続のタイミングで受け取った書類など、遺品に含まれるもの・別の相続手続にあたって取得したものを使い回せば、上申書を作成しなくても済む可能性があります。

住所証明情報がなくても、登記名義人との同一性が確認できる書類

書類の名称 取得できる場所
登記済証 被相続人が保管していた場所
転居時の住民票の写し 同上
戸籍の附票 同上
不在籍証明書・不在住証明書 登記上の住所の市区町村役場
納税証明書 同上

登記済証がない場合、ほかの書類を複数組み合わせて提出するよう求められることがあります。

上申書には印鑑登録証明書を添付する

上申書には印鑑登録証明書を添付する_イメージ

上申書には相続人全員分の実印による押印が必要と説明しましたが、あわせて印鑑登録証明書(交付時期はいつでも可)の添付も欠かせません。遺産分割協議で不動産の名義変更をするケースでは、遺産分割協議書に添付する上記証明書だけで問題ありません。

被相続人の戸籍・住所の記録が連続しない場合の対応

市区町村役場での文書廃棄または滅失により、連続した戸籍謄本を取得できなかったり、登記記録上の住所と一致する住所証明ができなかったりする場合は、相続登記の際に上申書を提出する必要がありました。

もっとも、最近では、相続登記の円滑化のため、上申書がなくても役場で交付される証明書をもって登記申請できるケースが主流となっています。いずれにしても、添付書類が揃わない場合の対応は、あらかじめ司法書士に相談すると良いでしょう。

記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

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