相続登記における原本還付のメリットと利用方法

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相続登記の原本還付とは?

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相続登記の原本還付とは、登記完了により不動産の名義変更が済んだ際に、申請時に提出した戸籍謄本(原本)などを返却してもらえる制度です。原則上は返却されず法務局・登記所が預かったままとなりますが、原本還付の請求に必要な手続を踏めば、登記申請した相続人などの手元に戻ってくるのです。

まずは、相続登記をするにはどんな書類が必要なのか、提出する書類のうち還付対象となるのはどれなのか、基本を押さえましょう。

相続登記で必要な書類

相続登記で不動産の名義変更を完了させようとするなら、申請書類として戸籍関係書類・住民票の写し・印鑑登録証明書などの原本が必要です。これらの原本は、あらかじめ自分たちで作成したり、市区町村役場で交付手数料を支払って交付してもらう必要があります。登記申請時の基本的な提出書類をまとめると、次の通りです。

■登記原因証明情報

  • 登記申請書
  • 遺言書または遺産分割協議書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、改製原戸籍など
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 相続人全員分の戸籍謄本

■相続人や受遺者の住所などを確認するための資料

  • 相続人全員分の印鑑登録証明書(遺産分割協議をした場合)
  • 各関係者の住民票の写し

上記のほかに、登録免許税(登記申請の手数料にあたる税)の計算のため、固定資産評価証明書も用意します。

登記完了時に原本還付の対象となる書類

相続登記で提出した書類の多くは、原本還付の対象となります。紹介した基本的な提出書類のうち、必要な手続を踏むことで還付(返却)されるのは、下記の書類です。

  • 遺言書、遺産分割協議書
  • 戸籍関係書類(被相続人、相続人共に還付可)
  • 住民票(同上)
  • 印鑑登録証明書
  • 固定資産評価証明書(提出した場合)

相続登記における原本還付のメリット

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相続登記における原本返還のメリットは、亡くなった人の財産を承継するための別の手続で再利用できる点から考えることができます。同様の書類を必要とするほかの手続として、預金口座の残高を払戻してもらうためのものや、証券会社で行う株式・債券の移管などが挙げられます。これを踏まえた上で戸籍謄本などの原本返還から得られる恩恵を挙げると、次の3つとなります。

相続手続の費用を節約できる

相続登記で原本還付してもらう第一のメリットとして、相続手続全体にかかる費用を節約できる点が挙げられます。返却されたものを次の手続で再利用することで、少なくとも個別の手続のどれか1回分はまるまる費用がかからない計算になるのです。

参考までに、各種書類の交付手数料を挙げると、戸籍関係書類は1通あたり450円から750円程度、住民票は1通あたり200~300円程度です。個別の手続につき関係者全員分を集めるとなると、親族関係がそれほど複雑でなくても、毎度数千円程度かかります。

書類管理や都度請求の手間が省ける

相続登記で原本還付してもらう第二のメリットとして、費用と共に、書類管理や交付請求の手間も省ける点が挙げられます。用意した書類について不足・紛失する可能性があるところ、万が一のことがあっても、相続登記で返還される書類があれば、これを使い回せば済みます。

仕事や家事で普段から忙しくしている人は、相続が発生すると「費用よりも時間や効率のほうが心配」「必要な書類や連絡に手が回らない」と頭を抱えがちです。このようなストレスを少しでも減らすため、相続登記の際は忘れず原本を返還してもらいたいところです。

重要な個人情報や合意文書を預けたままにする不安がない

相続登記で原本還付してもらう第三のメリットとして、戸籍関係書類などの「本来なら本人が管理すべき個人情報」を確実に手元に戻してもらえる点が挙げられます。

本籍地や親族関係が記載された公的書類となると、提出先が行政機関であっても、返してもらえない点に不安を感じる人もいるでしょう。相続人を代表する家族などに書類を預けて登記申請するケースでは「有資格者でない以上、書類の取扱いについて確実なことは言えない」と不安に思うこともあるかもしれません。このようにプライバシーを重視する人にとっても、原本返還はメリットが大きいと言えます。

また、遺言書や遺産分割協議書は、遺産の取り分について決定した事項が記載される重要な文書です。これらの原本がないと、後から遺産分割の割合について異議を唱える人が出るなど、トラブルの懸念があります。そのため、相続手続が完了しても、原本保管は続けるべきだと言えます。

原本還付の方法

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相続登記で原本還付してもらうには、登記申請時に還付請求のための書類を追加で提出する必要があります。しかし、登記申請書以外に所定の様式の書類を作る必要はありません。提出した各種原本を返却してもらう条件は、以下で説明するように、コピーや図面の添付だけです。

原本還付のための特別な請求手続は不要

相続登記での原本還付にあたって、たとえば「原本還付請求書」の作成といったような、特別な手続は不要です。返還してほしい原本に代わり、法務局側で手続の記録として保管しておける書類を用意するだけで済みます。請求書面ではなくで原本還付に対応できる旨は、不動産登記規則で定めがあり、地域や事例にかかわらず同じように対応してもらえます。

戸籍関係書類は相続関係説明図があれば還付される

相続登記の際に提出する戸籍関係書類を原本還付で返してもらうには、相続関係説明図を作成・提出が必要です。相続関係説明図とは、相続人や被相続人の情報および関係を家系図のような形式にしたものです。自分で作成しますが、決まった書式はありません。

戸籍関係書類以外の原本はコピー提出で還付される

相続登記の際に提出する印鑑登録証明書および住民票を原本還付で返してもらうには、原本に加えてコピーを提出する必要があります。遺言書、遺産分割協議書、固定資産評価証明書も同様です。提出時はただコピーをとるだけでなく、原本の代わりに保管してもらえるように処理しなければならない点に注意しましょう。

原本還付請求書類の準備方法

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相続登記における原本還付の請求のための書類は、一定の方法で作成しなければなりません。戸籍関係書類については、相続関係説明図を作成し、これを提出する必要があります。また、印鑑登録証明書や住民票のコピーを提出する際には、これらの書類が原本と相違ないことを明記し、署名押印するよう求められます。

【作例あり】相続関係説明図の作成方法

戸籍関係書類を還付してもらうための相続関係説明図は、親子・きょうだいなどの相続関係がわかるよう、各人の情報を線で繋いで表記します。記載ルールの基本は下記の通りです。

  • 表題は「相続関係説明図」として、被相続人の氏名を記載
  • 図面内の被相続人については、氏名・最後の住所・死亡日を記載
  • 図面内の相続人については、住所・出生を記載

図面内には、誰が・どの方法で不動産の権利を取得したか記載する必要もあります。遺産分割協議なら「分割」、法律で定められた割合による共有での相続(法定相続)なら「相続」と権利取得者の欄に書き入れましょう。下記は相続関係説明図の作例です。

【相続関係説明図の作例】

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※引用:登記申請手続のご案内(遺産分割協議編)│法務省

印鑑登録証明書・住民票のコピーに施すべき処理

原本還付のため提出する印鑑登録証明書や住民票のコピーは、そのまま提出せず「原本のコピーであること」がわかるようにして、1通が複数枚に及ぶ場合はばらけないようにしなければなりません。具体的には、次のような対応が必要です。

■原本である旨の記載+署名押印

印鑑登録証明書および住民票のコピーをとったら、そのコピーに対して「原本に相違ありません」と記載し、登記申請書に用いた印鑑を使って署名押印しましょう。原本の枚数に応じてコピーが複数枚に及ぶ場合は、1枚目に記載および署名押印を施します。

■原本の枚数に応じてコピーが複数枚に及ぶ場合

原本が2枚以上あるためコピーも複数枚になる場合は、登記申請書に用いた印鑑を使い、書類のつなぎ目に押印(契印)し、ホチキス止めをします。先にホチキスで止め、一枚目から順に端を折ってつなぎ目に押印していく方法が効率的です。

還付された原本の受け取り方法

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相続登記で原本還付が認められた場合の受け取り方法は、郵送もしくは窓口のいずれかが選べます。状況に応じて、都合の良い方法を選ぶと良いでしょう。司法書士などに依頼した場合は、委任状に還付された原本の受取権限を明記することで、代わりに受領してもらえます。

郵送での還付(返却)

原本還付の方法として利便性が高いのは、相続登記の申請を行った人宛に郵送で返却してもらう方法です。法務局の窓口に足を運ぶ必要がなく、手間がありません。遺産分割協議で不動産の権利を変更するケースでは、相続人の代表者に登記を任せ、そのために必要な委任状に「原本還付の権限の委任」も記載して代表者宛に郵送返却してもらうのが効率的です。

窓口での還付(返却)

相続登記における原本還付にあたって「不在にしていることが多い」「同居人が勝手に開けてしまうのは避けたい」などの事情があれば、申請した法務局・登記所の窓口に行って受け取る方法もあります。窓口に向かうため時間を作る必要はありますが、重要な個人情報をなるべく他人の目に触れさせない点で安心です。

司法書士などに登記を依頼した場合

司法書士や弁護士に相続登記を依頼した場合は、原本還付の請求から受け取りまで一貫して任せられるのが一般的です。還付された各種原本は、しっかりプライバシーを守れるよう、依頼主の希望に沿った方法で渡してもらえます。依頼先に還付された原本がある間は厳重に管理され、依頼した人にとって都合のいいタイミングで受け取れる点で、利便性が高いと言えます。

気を付けるべきポイント

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相続登記の原本還付は、書類が手元に戻るまでに日数がかかったり、郵送を利用する場合は切手代なども必要になります。また、希望しても還付してもらえない書類がある点にも注意が必要です。なお、相続手続全体を通して収集負担が大きい戸籍関係書類については、登記申請の前に「法定相続情報証明制度」を利用する手があります。

原本還付に関して誤解が多い点や、相続手続全体の効率化に役立つ情報をまとめると、次のようになります。

原本還付には日数がかかる

相続登記における原本還付は登記完了後となるのが原則です。郵送返却を希望したケースだと、不動産の権利者を証明する情報が記載された「登記識別情報通知書」と同じタイミングで、あるいは通知書に同封して送付されてくるのが一般的です。

仮に窓口で書類を渡してその場で「還付に対応できる」と判断されたとしても、その場ですぐ返却してもらえるわけではない点に注意しましょう。

相続登記専用の書類は還付不可

原本で提出する書類のうち「相続登記のためだけに作成されたもの」に関しては、還付の対象になりません。還付できない書類も不動産登記規則で定めがあり、下記が当てはまります。別の手続で同様の書類が必要になったときは、あらためて作り直す必要がある点に注意しましょう。

  • 委任状(司法書士や親族に登記代行してもらう場合の必要書類)
  • 相続関係説明図(戸籍関係書類に添えて作成・提出するもの)

郵送による原本還付は返送用の封筒+切手が必要

原本還付を郵送で希望する場合は、登記申請書類に郵便切手を貼り付けた返送用封筒を添付する必要があります。切手代が必要になるため、不動産の所在地を管轄する法務局・登記所から距離のある場所に居住する人は、余分に費用がかかる点を考慮したいところです。返送用封筒を用意するときは、忘れず「原本還付書類の返却を希望する」などと記載しておきましょう。

相続手続は法定相続情報証明制度を利用すると効率的

相続登記で必要な戸籍関係書類(原本)は、あらかじめ「法定相続情報証明制度」を利用することで、謄本で証明できる相続関係を短くまとめた別の書類で代用できます。

法定相続情報証明制度とは、法務局を受付窓口として、相続登記とは別に用意されている制度です。自分で作成した法定相続情報一覧図と共に、戸籍関係書類を提出することで、一覧図に認証文を付したものを何通でも必要なだけ交付してもらえます。交付された認証文付きの法定相続情報一覧図には、戸籍関係書類と同様に相続関係を証明する効力があり、相続登記だけでなく、金融機関などで行うほかの手続でも使えます

下記で紹介するのは、制度利用にあたって提出する、自作の法定相続情報一覧図の例です。法務局では、制度利用にあたっての一覧図の作成方法が紹介されています。

【法定相続人が配偶者及び子である場合の例】

法定相続人が配偶者及び子である場合の例_イメージ

※引用:主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例│法務局

上記制度を利用すれば、戸籍関係書類の原本提出や還付請求自体が不要です。相続手続の全体を通して、戸籍謄本の交付手数料や請求する手間が、制度利用時の1回分だけで済むのが利点です。

相続登記の原本還付は利用を忘れずに

相続登記の申請で必要な戸籍関係書類・住民票・印鑑登録証明書などの書類は、相続関係説明図や原本のコピーを添えることで還付(返却)してもらえます。上記書類の交付には一定の手数料がかかる上、預貯金の払戻しなどほかの手続で繰り返し必要になるため、原本還付の請求のためのコピー提出や相続関係説明図の提出は、忘れずに行いましょう

不動産の相続登記は、亡くなった人の財産を受け継ぐ手続のごく一部です。遺産の状況などに合わせて各機関で申し込みや連絡事項が必要となる点を踏まえ、相続手続の全体を見通して効率的に進めましょう。なるべく費用や手間を抑えるため、相続開始後の流れについては、早めに司法書士などに相談することをおすすめします。

記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

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