所有権更正登記の方法や必要書類・費用などを解説

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所有権更正登記とは

まずは所有権更正登記とは何かということについて、具体的な定義やよくあるケース、そして更正登記をしない場合のデメリットなどについて解説します。

所有権更正登記はどのような手続か

所有権更正登記とは、錯誤などによって実態と登記記録の間に不一致がある場合、それを解消するために行われる登記を指します。

更正登記が認められるのは登記の一部に誤りがある場合に限られ、登記事項の全部が誤っている場合には更正ではなく抹消登記の申請をしなければなりません。登記の一部に誤りがあるというのは、具体的には更正の前後で登記の同一性がある場合のことをいいます。

つまり、更正の前後を通じて同一の登記名義人が含まれている必要があり、名義人がすべて異なっている場合には更正の限度を超え、更正登記はできないことになっています。

種類・よくあるケース

どのような場合に所有権更正登記が必要となるか、以下の4つのケースを紹介します。

  1. 単独所有から共有への変更

  2. 共有から単独所有への変更
  3. 持分割合の追加
  4. 登記名義人の追加

なお、上記は所有権更正登記が可能なケースですが、これらとは異なり持分全部が誤っているケースもあります。

たとえば、前所有者AからBが不動産を購入したのに、C名義の登記がなされてしまったというようなケースです。この場合は変更の前後で同一の登記名義人が存在しないので、登記の同一性が認められず更正登記ができません。そのため、「真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記」という手続を行う必要があります。

この真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記については、のちほど解説します。

単独所有から共有への変更

共有名義の登記をしなければならないところ、誤って単独名義の登記がなされてしまったケースです。たとえば、前所有者AからBとCが持分2分の1ずつの共有持分で不動産を購入したところ、誤ってBの単独名義で登記されてしまったというような場合です。この場合、更正の前後で当事者Bが存在することから登記に同一性があるといえ、更正登記が可能です。

共有から単独所有への変更

1と逆のパターンで、単独名義の登記をしなければならないところ、共有名義の登記がなされてしまったというケースです。

持分割合の追加

持分割合の追加_イメージ

持分割合が誤っているというケースです。たとえば、前所有者AからBとCが持分2分の1ずつの共有持分で不動産を購入したところ、Bの持分を3分の2、Cの持分を3分の1で登記してしまったという場合です。共有で家などを購入する際に、自己資金の負担割合の計算を間違えるとこのようなことが起こります。

登記名義人の追加

登記の変更によって登記名義人が増加したというケースです。前所有者AからBとCとDが持分3分の1ずつの共有持分で不動産を購入したところ、誤ってAとBで2分の1ずつ持分登記をしてしまったというケースです。

放置するデメリット・しないとどうなる

登記に誤りがあるまま放置しておくと、税金を余計に支払ったり控除額が減額してしまったりするリスクがあるので、これらのデメリットについて具体的に解説します。

贈与税が多くかかる

実際の持ち分よりも多い持分が登記されていた場合、共有者間で財産の移動があったものとみなされ、差額が贈与税の課税対象となる可能性があります。

たとえば、Aの持分4分の3、Bの持分4分の1で5000万円の住宅を購入したところ、誤って2分の1ずつで登記してしまったとします。この場合、Bは持分の差額である4分の1をAから贈与されたものとみなされ、贈与税が課税されてしまうことがあるのです。

これを避けるために、所有権更正登記は「税申告の前」にしておくのがおすすめです。贈与税は毎年2~3月中旬までが期限なので、それまでに更正登記をして正確な持分割合に訂正すれば、贈与税で損することを避けられます。

住宅ローン控除の額が低くなる

住宅ローン控除の対象となる額の上限は持分に相当する額と決まっており、登記に持分の誤りがあると住宅ローン控除が低くなる可能性もあります。

先ほどの例で、5000万円すべてを住宅ローンで購入したとすると、Aの住宅ローン控除の対象となるのは本来5000万円の4分の3である3750万円です。しかし、誤って登記をしたことで5000万円の2分の1である2500万円しか住宅ローン控除の対象にならなくなってしまい、結果的に控除を受けられる金額が減ってしまうのです。

住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税枠が減少する

父母や祖父母から家を買うための資金援助として贈与を受けたとき、一定の要件を満たすと贈与税が非課税となる特例がありますが、誤った登記を放置しておくと特例の非課税枠が減少します。持分を誤って少なく登記してしまうと、その持分に対する購入額のみが特例の対象となるため、本来非課税となるはずの額よりも少なくなってしまうのです。

たとえば、500万円の家を買うのに父母から300万円の資金援助を受けた場合、500万円のうち200万円分しか持分登記をしていなかった場合、本来300万円全額に特例が適用されるところ200万円までしか特例が適用されなくなります。

手続方法・必要書類

手続方法・必要書類_イメージ

所有権更正登記の手続をする際は、必要書類を用意して法務局に申請します。必要書類については、基本的なものから特定の条件下で必要となる書類までいくつかの種類があるので、それぞれ解説します。

基本的な必要書類

まずどのようなケースでも必要となる書類として、以下の2種類があります。

  • 登記申請書
  • 登記原因証明情報

登記申請書は相続登記の際に作成して提出する書類です。様式と記載例が法務局公式サイトからダウンロードできるので、申請に際して事前に作成しておきます。登記識別情報とは、数字やアルファベットの組合せからなる12桁の符号であり、登記名義人に通知が送付されます。

登記義務者・登記権利者ごとに必要な書類

基本的な必要書類に加え、登記義務者(登記によって持分が増加する人)と登記権利者(登記によって持分が減少する人)ごとに、それぞれ必要な書類があります。

登記義務者

  • 認印
  • 本人確認資料

登記権利者

  • 実印
  • 印鑑登録証明書
  • 登記識別情報
  • 本人確認資料

特定の条件下で必要になる書類

特定の条件下で必要になる書類もあります。たとえば、登記記録上で住所変更する場合は住民票または戸籍の附票、氏名変更時は戸籍謄本と住民票または戸籍の附票が必要になります。さらに、司法書士などの代理人が申請を行う場合には委任状を作成します。

そのほか、持分が減少する者の持分のみに抵当権を設定した場合、抵当権者の承諾書が求められます。承諾書が必要なケースに関しては、のちほど詳しく説明します。

なお、更正登記の手続は自分で行うことも可能ですが、司法書士に依頼することでより確実に行えます。上記のように必要な書類は状況によって異なり、自分で状況に合わせて書類を収集するのは手間がかかりますが、司法書士に依頼すれば手間なくスムーズに手続を進められます。

手続に手間取り、更正登記をしないまま税申告を行うと、先ほど説明したとおり贈与税が本来よりも多く課税されるといったリスクもあるので、自分で手続するのが難しいと感じたら司法書士への依頼を検討しましょう。

費用について

所有権更正登記にかかる主な費用としては、登録免許税と司法書士報酬があります。このうち、登録免許税は以下の式で計算します。

登録免許税=1000×不動産の数

たとえば、土地と建物の持分をそれぞれ更正した場合、登録免許税は1000×2=2000円となります。

司法書士報酬は3~5万円程度がおおよその相場ですが、こちらは依頼する司法書士によって幅があるので一概には言えません。司法書士に依頼する際は、事前に費用について確認しておきましょう。

所有権更正登記の注意点

所有権更正登記を行ううえでは、手続上の注意点があります。正しい手続を行えるように、以下の注意点についても把握しておきましょう。

所有者以外の協力や承諾が必要な場合がある

ケースによっては所有者以外の協力や承諾が必要な場合があります。たとえば、以下のようなケースでは所有者以外の協力や承諾を得なければなりません。

  • 新たに所有者が加わる場合
  • 抵当権がある場合の所有者変更を伴う場合

新たに所有者が加わる場合とは、更正前に登記されている所有者以外の人が所有者となるようなケースであり、たとえば「単独所有から共有へ変更する」、「登記名義人を追加する」といった事例が該当します。このケースでは、申請の際は前所有者と共同で手続をしなければなりません。

また、抵当権が設定されている不動産について所有権更正登記を行う場合、更正前後で所有者が変わると抵当権の範囲も変わる可能性があります。たとえば、AとBの共有名義をAの単独登記に変更する場合、Bの持分に対して効力がある抵当権の範囲が変わるので、抵当権者の承諾が必要です。

なお、所有権更正登記をしたら、これと同時に登記されている抵当権の変更登記も必要です。なぜなら、所有権更正登記をすることでBの持分に対して及んでいた抵当権の効力が消滅するため、あらためて不動産全部に抵当権を設定しなければならないからです。

関係者と連携が難しい場合は真正な登記名義の回復をする

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権利関係者の協力や承諾が得られない場合、真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記をすることも可能です。真正な登記名義の回復とは、不動産の名義人が本来の権利者以外の人になっている場合に、本来の権利者の名義へ移転登記することです。

登記名義人が変動して新たに所有者が加わったり、抵当権の範囲が変わったりした場合、抵当権者の承諾が必要であると説明しました。しかし、実際には協力や承諾が得られないケースもよくあります。なぜなら、更正登記に協力しても抵当権者にとってメリットはないうえに、更正登記は手続が煩雑で手間がかかるためです。

また、仮に抵当権者からの承諾が得られたとしても、登記名義人に変動がある場合は前所有者の協力も得なければなりません。前所有者と共同申請する際は権利書、実印、印鑑登録証明書、登記原因証明情報などが必要であり、これらのことを踏まえて考えると更正登記のハードルはかなり高いといえます。

そこで、真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記を行えば、所有者以外の協力や承諾を得ることなく登記を変更することができます。ただし、本来であれば従前の登記を抹消して真の登記にし直すべきところ、例外的に登記の回復を認めた制度であるため、要件がそれなりに厳しいということにも留意してください。

登記申請直後なら「登記の補正」で訂正できる場合がある

印鑑の押し忘れや単純な記入漏れ、誤字・脱字など、軽微な誤りで即日訂正可能なものであれば、登記の補正が可能です。補正だけなら料金もかかりません。申請後に法務局から連絡がきて不備を指摘された場合、補正によって申請を受理してもらえる可能性があります。

所有権更正登記の手続は司法書士にお任せ

所有権更正登記は実態と登記記録の不一致を解消する手続であり、更正の前後を通じて同一の登記名義人が含まれていれば、手続を行うことが可能です。所有権更正登記をするうえでは、所有者以外の協力や承諾が必要な場合がありますが、実際には協力が得られない場合も多く、手続のハードルが高いというのが実情です。

しかし、所有権更正登記を行わずに放置しておくと、贈与税が課税されたり住宅ローン控除が減少したりする可能性があるため、登記の誤りに気づいたら放置しておくことはおすすめしません。

所有権更正登記は、司法書士に依頼することが可能です。もし手続を自分でするのが難しいと感じたら、司法書士に依頼して速やかに正しい登記へ変更しましょう。

記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

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