土地の分筆登記の手続や必要書類など解説

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土地の分筆登記とは

分筆とは、1つの土地を複数の土地に分割して分けることです。土地は一筆、二筆と数え1つの土地を分けることから「分筆」と呼ばれます。分筆された土地は新たな地番で登記されることになりますが、このように分筆した土地を登記することを分筆登記といいます。なお、分筆とは逆にに複数の土地を1つのまとめることを「合筆」と言います。

分筆登記を行う場合、土地の境界が確定していることが前提条件となり、確定していなければまず境界確定を行う必要があります。分筆登記を行う理由はさまざまですが、たとえば以下のような場合に分筆登記を行います。

  • 土地の一部を売却する
  • 遺産分割協議で土地を分けることが決まった
  • 遺言書に分筆する旨が書かれていた
  • 土地を担保にして融資を受ける
  • 節税する

相続した不動産の分配や土地の一部を売却して現金化する際に、分筆登記が行われる場合があります。また、遺産分割協議で土地を分けることが決まった、相続での揉め事を避けるために遺言で分筆する旨が定められていた、といったケースでも分筆登記を行います。

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土地の分筆登記を行うメリット・デメリット

土地の分筆登記を行うメリット・デメリットについて解説します。分筆登記すべきかどうかを検討するうえではどちらも重要なので、しっかり押さえておきましょう。

分筆登記のメリット

分筆登記のメリットとしては、以下の3点が挙げられます。

  • 権利関係を分けて登記ができる
  • 地目別に登記ができるようにある
  • 税金が安くなる場合がある

権利関係を分けて登記ができる

一筆の土地を複数の所有者が登記することはできませんが、土地を分筆することでそれぞれ単独所有できるようになります。

複数の相続人が一筆の土地を共有名義で相続すると、名義人全員の合意がなければ売却や建物の建築ができません。そのため土地の活用がうまくできず、相続した不動産が放置されてしまうような事例もあります。

あらかじめ分筆登記をして権利関係を分けておくことで、そのような事態を避けることができます。

地目別に登記ができる

地目とは土地の用途に応じた登記上の区分のことです。登記簿には「宅地」「山林」「畑」などの地目が記載されており、地目ごとに土地の利用が制限されます。

たとえば、地目が「田」「畑」である場合、農地法によって売却や農地以外の用途で活用できず、居住用の建物を建築することもできません。これらの土地に建物を建てるためには農業委員会に届け出をして転用の許可を得る必要があります。

このような場合、土地を分筆して地目を変更すれば利用したい用途で土地を利用できます。たとえば、畑の一部に住宅を建築したいとき、一部の土地だけを宅地に変更して残りの土地をそのまま畑として使うことが可能です。

税金が安くなる

税金が安くなる_イメージ

土地を分筆することで、税金が下がる場合もあります。たとえば、大通りに面している土地は評価額が高いため、通りに面していない部分を分筆登記することで評価額が下がります

評価額が高い土地ほど固定資産税、相続税、贈与税といった税金も高くなるので、分筆登記によって評価額を下げれば税金の負担も抑えることができます。

もっとも、不動産評価額はさまざまな要素によって決まるので、分筆登記によって逆に税金が高くなってしまう可能性もあります。

分筆登記のデメリット

分筆登記には、以下のようなデメリットもあります。

  • 売却が難しくなる
  • 税負担が高くなる
  • 希望通りの建物を建てられなくなる

メリットだけではなくデメリットも理解し、分筆するべきかどうかを検討しましょう。

売却が難しくなる

分筆によって利便性が低い土地になると、売却が難しくなります。

建物を建てる土地には「接道義務」があり、一定の長さ以上道路に接している必要があります。この接道義務を満たす状態で土地を分筆しようとすると、利便性が低い形状の土地になってしまうことがあるのです。

また、分筆によって地域の需要に見合わない面積になってしまうこともあり、こういった場合も売却は難しくなるでしょう。

税負担が高くなる

分筆登記によって税負担を下がる一方で、ケースによっては逆に税金が高くなる可能性もあります。たとえば、宅地を分筆した結果、その土地が「住宅用地の軽減措置特例」が適用されなくなり、固定資産税が増額するなどが挙げられます。

希望通りの建物を建てられなくなる

土地を分筆することで建物が建築制限にかかり、希望通りの建物を建築できない可能性があります。

土地上に建築できる建物の大きさには、建ぺい率や容積率による制限があるので、土地の面積いっぱいに建物を建築することはできません。そのため、分筆によって土地が狭くなってしまうと、分筆前であれば建てられた建物でも分筆後には建てられないという事態が起こり得ます。

分筆後に住宅の建築や増改築などを考えている場合、事前にハウスメーカーなどに相談しておくことが重要です。

手続の流れや必要書類

分筆登記の手続の流れと、必要書類・かかる費用について解説します。

手続の流れ

境界が未確定の土地を分筆登記する際の手続の流れを解説します。土地家屋調査士に依頼する場合でも、手続の流れを理解していた方が話がスムーズにできるので、一通り覚えておくとよいでしょう。

なお、相続した土地を分筆したうえで相続登記する場合、下記の流れと合わせて相続登記の手続も行う必要があります。そのため、土地家屋調査士と連携してスムーズに対応できる司法書士に依頼して、それぞれ手続を進めるのがおすすめです。

土地家屋調査士に依頼

登記申請は自分で行うこともできますが、分筆登記には測量や図面の作成などが必要なので、土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。分筆登記は表題部に関する登記であり、土地家屋調査士の専門分野なので、ほか士業には代理ができません。

資料収集

測量する土地の境界や道路境界などの資料に関し、法務局、都道府県、市区町村などで公的な資料をもとに調査します。ここで使用する資料は、現地で測量する際に境界を特定するための資料としても使用します。

境界確定測量と筆界確認書の作成

確定測量とは、隣接土地所有者とともに立ち合いをして筆界を確認し、筆界について承諾した旨の書類を取り交わす筆界の確定測量業務です。境界確定測量を実施したら新たに筆界確認書を作成し、隣接地の所有者からも境界を認める旨の署名・押印をもらいます。そのため、境界確定測量には隣地所有者の協力が必要であり、事前に説明したうえで協力を依頼しなければなりません。

境界標の設置

境界確認に基づいて、新たな境界標を設置します。境界標は、コンクリート杭・金属標・鋲などの種類があり、土地の状況に合わせて設置します。

たとえば、ブロックなどの構造物によってコンクリート杭が設置できない土地であれば、金属標をブロックの上から貼り付けるといったように、現場に合わせて最適な方法で接地を行います。

土地分筆登記を申請

分筆する土地を管轄する法務局・出張所へ分筆登記を申請します。申請の仕方は以下の3種類があります。

  • 法務局へ持参
  • 郵送
  • オンライン

書類の受け取り

申請内容に不備が無ければ申請から1週間~2週間程度で、分筆登記が完了します。法務局で土地の登記記録の全部事項証明書、地図・公図、地積測量図を取得して分筆が完了します。

必要書類

分筆登記には以下の書類が必要です。

  • 登記申請書:登記申請者の氏名や住所、登記の目的や登録免許税などを記載
  • 地形図:公図に分筆された境界線が入っている書類
  • 地積測量図:土地の面積や形状などが記載されている書類
  • 境界確定書:隣地との土地の境界を証明する書類
  • 登記申請委任状:登記手続を専門家などに委任したことを記した書類(本人が申請する場合は不要)

登記申請書は法務局で登記手続を行うのに必要な書類であり、登記申請委任状は土地家屋調査士へ代理申請を行う場合に必要な書類です。

手続きにかかる日数

分筆登記にかかる日数は、土地の境界が確定しているか否かによって異なります。境界が確定していない場合は境界確定測量に日数がかかり、分筆登記の完了までに約2~3か月程度かかります。一方、土地の境界確定がすでに済んでおり、境界確定図にも問題がなければ、10日程度で分筆登記の手続が完了します。

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土地の分筆登記にかかる費用の相場

土地の分筆登記には主に以下のような費用がかかります。

登録免許税

土地の分筆登記を行う際は、一筆1000円の登録免許税がかかります。登録免許税は分筆登記後の筆数に応じて発生し、たとえば分筆登記後の土地が二筆であれば2000円、三筆であれば3000円です。

土地家屋調査士への報酬

土地家屋調査士へ支払う費用は、境界が確定している場合で約10万円です。一方、境界が確定していない場合は土地の面積によって金額が変動します。200㎡前後の土地で約80万~100万円程度、500㎡以上の土地の場合は100万円以上かかることもあります。以下は各手続における土地家屋調査士の相場になります。

必要な費用

  • 分筆登記申請の依頼料:5~10万円程度
  • 測量:10万円~
  • 境界標設置:10万円程度

状況に応じて必要な費用

  • 筆界確認書:10万円~
  • 官民境界確定図:10万円~

土地の分筆登記を行う際の注意点

土地の分筆登記を行う際の注意点を紹介します。ここまで解説してきた内容を踏まえたうえで注意点についても理解し、最適な形で分筆登記を行いましょう。

土地の分筆登記は自分で行えるか?

分筆登記は申請にあたって特別な条件がないため、自分で申請することが可能です。しかし、手続に必要な境界確定測量や地積測量図の作成などが求められるため、自分で行うには専門的な知識が必要になります。一般的には土地家屋調査士に依頼することがベターと言えるでしょう。

建築基準法の接道義務がある

土地都市計画区域に指定されている地域では、土地上に建物がある場合に幅4m以上の道路に2m以上接していなければならないことが、建築基準法で定められています。対象となる道路や接する道路の幅などは法律や条例で細かく定められており、地域によっても取り扱いが異なります。

建物を建築するうえではこのような建築基準法の制限があるので、分筆登記するうえでは法律や条例による制約を必ず確認し、目的に即した利用が可能であることを確認することが重要です。

市場ニーズに見合った形に分筆する

分筆することによって土地の大きさや形状が変化すると、建物の新築やリフォームがしづらくなることがあるうえ、税金の額にも影響します。分筆によって土地の価値が変化することを理解したうえで市場ニーズに見合った形に分筆し、使用用途に応じて適切に取り扱うことが重要です。

分筆後の利便性をよく考え、接地義務など法律上の制限も踏まえたうえで、建築士や不動産会社などとも相談しながら検討するのがおすすめです。

土地家屋調査士と司法書士は業務領域が異なる

土地家屋調査士と司法書士はどちらも登記を扱う士業ですが、土地家屋調査士が不動産の「表示」に関する登記を扱うのに対し、司法書士は「権利」に関する登記を扱うという点で両者は異なります。しかし、相続する土地を分筆した場合、分筆登記と相続登記を両方行うことになるため、登記を進める際は土地家屋調査士との連携が可能な司法書士に依頼すると、より円滑な手続になるでしょう。

登記の手続は土地家屋調査士・司法書士にご相談を

相続や土地活用するうえで分筆は有用ですが、分筆の仕方によっては税金が高くなったり活用方法が限定されたりするリスクもあります。また、分筆登記手続は複雑で手間がかかり、自分で行うのは難しい場合もあるので、土地家屋調査士に相談することも検討しましょう。

そして、不動産を相続したら相続登記も必要ですが、相続登記の手続は司法書士に依頼することで手間なくスムーズに行えます。

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記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載