空き家を相続すると税金が高くなる?特定空き家と管理不全空き家とは

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空き家を相続すると固定資産税が高くなる?

結論からいうと、空き家を相続することによって固定資産税が高くなる可能性があります。厳密にいえば、相続した空き家が「特定空き家」もしくは「管理不全空き家」に認定されると特例措置が適用されなくなり、その結果固定資産税が高くなるのです。

特定空き家の定義については、のちほど解説するので、ここではまず空き家に関係する税金や法制度について解説します。

空き家を相続したら発生する税金

空き家を相続した際に発生する税金は、固定資産税のほかにもいくつかあるので、まずはそれぞれの税金の内容について簡単に解説します。

固定資産税

所有する固定資産にかかる税金であり、個人の場合には土地や家屋に対して課税されます。固定資産税の額は、以下の式で計算します。

不動産評価額×税率(1.4%)=固定資産税

不動産評価額は、自治体から送付される納税通知書に記載されています。税率は原則1.4%ですが、自治体の条例で税率を変更することができ、1.4%と異なる税率を定めている自治体もあります。

都市計画税

都市計画税も固定資産税と同じく土地や家屋などの不動産にかかる税金であり、不動産評価額に対して税率を掛けて計算します。

不動産評価額×税率(~0.3%)=都市計画税

自治体の条例によって税率を定めることができますが、0.3%を超える税率にはできません。

相続税

空き家も財産であるため、相続によって空き家の所有権を取得した場合には相続税がかかります。相続税には基礎控除や配偶者控除・小規模宅地の特例控除など各種控除が用意されていますが、不動産など評価額が大きい財産が多い場合は、控除額を上回り相続税が課税されることが多いです。

3000万円+(600万円×法定相続人の人数)=基礎控除額

登録免許税

登録免許税は登記の際に課される税金です。空き家の所有権を取得したら登記を行う必要があるため、登録免許税が発生します。登録免許税は、以下の式で計算します。

不動産評価額×税率=登録免許税

税率は所有権の取得原因によって異なり、たとえば、相続によって空き家の所有権を取得した場合には税率は0.4%であり、贈与の場合には2%です。

住宅用地特例制度

住宅用地特例制度_イメージ

住宅用地特例制度とは、住宅の敷地として使っている土地の固定資産税の課税標準額を、軽減できる制度です。課税標準額は固定資産税を計算するうえで基礎となる金額であり、課税標準額が下がればそれにともなって固定資産税の額も下がります。

住宅用地特例制度では、対象となる宅地の敷地面積によって「小規模住宅用地の特例」と「一般住宅用地の特例」にわかれており、それぞれ以下のような減税措置が受けられます。

宅地の区分 固定資産税課税標準額
小規模住宅用地(~200㎡) 6分の1
一般住宅用地(200㎡を超える) 3分の1

このように、小規模住宅用地に該当する宅地であれば固定資産税課税標準額が最大で6分の1になるので、特例の適用を受けない場合と比べて固定資産税が大幅に下がります。

空家特措法の内容と改正について

空家特措法について、法律の内容と改正点について解説します。空家特措法の内容は固定資産税と大きく関わるので、内容をしっかりおさえておきましょう。

空家特措法とは

空家特措法とは、正式名称を「空家等対策の推進に関する特別措置法」といい、空き家問題を解決して建物の再利用や処分をするために制定された法律です。自治体はこの法律に基づいて空き家への立ち入り調査ができるようになり、調査によって問題があると見なされた空き家は「特定空家」として所有者へ助言・指導・勧告・命令を行うことができます。これらの措置の詳しい内容については、のちほど解説します。

空家特措法の改正点

空家特措法は平成27年に施行され、令和5年12月に法改正がなされました。改正の内容としては、特定空家に加えて新たに「管理不全空き家」という概念が新設されたというのがもっとも重要な点です。

管理不全空き家も特定空家と同様、助言・指導・勧告・命令をできますが、これらの措置に強制力はありません。ただし、勧告を受けると住宅用地特例を受けられなくなってしまうというデメリットがあります。

住宅用地の特例は最大で固定資産税が6分の1に減額する効果があるため、もし空き家がこの特例を受けられなくなった場合、固定資産税が6倍もあがってしまうことになります。

特定空き家と管理不全空き家

特定空き家と管理不全空き家_イメージ

特定空き家と管理不全空き家について、それぞれの定義を解説します。これらに該当すると固定資産税が高くなってしまうので、空き家を相続する前によくチェックしておきましょう。

特定空き家とは

特定空き家とは、空き家のうちでも以下の4つのうちいずれかに該当するものを指します。

  1. そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  2. 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  3. 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. そのほか周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

※参照:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン) │国土交通省

具体的にどのような空き家がこれらに該当するのか、「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」を例として、より詳しく解説します。

「著しく保安上危険となるおそれ」とは、たとえば、建築物の著しい傾斜がみられる場合などのことをいいます。これは、基礎に不同沈下があったり柱が傾斜したりしている状態のことです。

また、建築物の構造耐力上、主要な部分が損傷している場合も「著しく保安上危険となるおそれ」に該当します。これは基礎が破損または変形している、土台が腐朽・破損している、基礎と土台にずれが発生している状態などのことです。

ほかにも、擁壁が老朽化して危険となるおそれがある場合が該当します。これは、擁壁表面に水がしみ出し流出している、水抜き穴の詰まりが生じている、ひび割れが発生しているなどの状態を指します。

このように、それぞれの条件についてガイドラインに調査項目が定められており、それを参考にして特例空き家に該当するかどうかを自治体が判断します。

管理不全空き家とは

管理不全空き家は、放置すれば特定空き家になるおそれがある空き家のことであり、令和5年12月の空家特措法改正によって新設された概念です。建物が老朽化し、壁にひびが入っていたり窓が割れていたりする住宅のことを指しますが、特定空き家のように明確な定義が定められているわけではありません。国交省は、今後具体的な基準を定めていくとしています。

法改正後は、管理不全空き家も特定空き家と同じく住宅用地特例を受けられなくなります。そのため、住宅用地特例を受けていた住宅が管理不全空き家に認定されると、固定資産税の負担が大きくなってしまいます。

また、管理不全空き家の場合、所有者に対して命令はできても代執行ができないという違いがあります。代執行については、次に説明する特定空き家に認定された場合の措置として解説しています。

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特定空き家・管理不全空き家に認定されたらどうなる?

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特定空き家に認定された場合、自治体は以下の流れで措置を行います。

  • 助言・指導
  • 勧告
  • 命令・代執行

それぞれの措置の内容について、詳しく解説します。

助言・指導

助言・指導とは、たとえば、「道路にはみ出している雑草を手入れするように」といったように、所有者に対して何らかの処置が求められます。助言・指導には法的拘束力がないため、対処するかどうかは所有者の意思次第です。

勧告

助言・指導によって改善が見られなかった場合、自治体は空き家の所有者に対して勧告を行います。勧告が行われるようなケースでは、放置しておくと近隣住民に被害が出るような状況に陥っていることが考えられます。

勧告が行われた場合、住宅用地特例の適用を受けられないというペナルティがあります。もし今後も特例を利用したいのであれば、助言・指導があった時点で速やかに何らかの対処をしなければなりません。

命令・代執行

勧告によっても状況が改善されない場合、自治体から命令を受けます。命令には法律による罰則が定められており、50万円以下の過料が科されます。

さらに、所有者が命令にも従わずに状況が改善されない場合、「行政代執行」が行われます。代執行とは所有者に代わって行政が義務を履行することであり、具体的には樹木の伐採、建物の解体、ゴミの撤去などを行います。

代執行によって発生した費用は、空き家の所有者が自分で負担しなければなりません。もし費用を支払えなかった場合、土地などの財産が差し押えられることもあります。

特定空き家・管理不全空き家に認定されないために

特定空き家・管理不全空き家に認定されると、税金の負担が大きくなるだけでなく、空き家を強制的に解体されるうえに費用を請求されるリスクもあります。このような事態を避けるためにも、特定空き家・管理不全空き家に認定されないための対策方法について理解しておきましょう。

管理を続ける

空き家を持ち続けるのであれば、特定空き家に認定されることがないよう維持・管理を行う必要があります。特定空き家に該当する条件については先ほど紹介しましたが、これらに該当する要素が少しでもある場合には改善のために維持・管理を行いましょう。

庭木の手入れやごみの処分、部屋の換気などを行い、衛生的で安全な環境を保つことが空き家管理の基本です。また、もし外壁のひびや屋根の破損、柱の傾斜などがみられる場合、リフォームして補修する必要があります。

維持・管理は定期的に行う必要があるので、もし遠方に住んでいて頻繁に空き家を訪れることができない場合、空き家の管理業者に管理を委託することも検討しましょう。

解体して更地にする

空き家を管理するのが難しい場合、解体して更地にするという方法があります。解体してしまえば管理の必要はなくなるので、空き家問題に悩む必要はありません。

ただし、空き家を解体すると固定資産税の特例措置が適用されず固定資産税が高くなり、費用が6倍になってしまう可能性があるので注意してください。

空き家の売却を検討する

空き家を活用する予定がなければ、売却するのもよいでしょう。所有権を手放せば管理義務もなくなるので、あとのことは次の所有者に任せれば問題ありません。不動産は分割できないため、遺産分割協議でも揉めごとの原因になりやすいのですが、売却して現金化しておけば遺産分割も円滑に進められます。

売却手段としては、「不動産会社の仲介で買い手を探す」「不動産会社に買い取ってもらう」「空き家バンクを活用する」という方法があります。売却を検討する場合には複数の選択肢を持ち、それぞれ実際に試してみることをおすすめします。

空き家の相続でお困りなら司法書士にご相談を

空き家を相続した場合、維持・管理を怠ると特定空き家に認定され、住宅用地特例が受けられなくなる可能性があります。そうなると固定資産税が最大で6倍まで上がる可能性があるので、空き家を相続する場合にはこの点に注意してください。

令和5年12月の法改正により、管理不全空き家という概念も新設され、これまでよりも住宅用地特例の適用が受けられなくなる範囲も広がりました。今後はより一層空き家対策に力を入れなければなりません。

なお、空き家を相続した場合、相続登記の手続も必須です。もし相続登記にまで手が回らないという場合には、司法書士に依頼して手続をすべて任せるのが安心です。

記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載

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