相続登記がスムーズになる?所有不動産記録証明制度とは

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所有不動産記録証明制度(仮称)とは

所有不動産記録証明制度(仮称)は、所有者や相続人が法務局で手続することで、同一名義の不動産をリスト化した証明書を受け取れる制度です。証明書は、土地・建物を特定できる情報を記載した登記簿に基づいて作成されます。

本制度はまだ名称も決まっておらず、令和6年2月時点では名称も仮のままです。制度が始まれば、亡くなった人の不動産の名義変更を実施するときに、所有する土地・建物を特定するのに役立ちます。

相続財産の調査を効率化するための制度

本記事で紹介する制度の目的は、相続した不動産が複数あったとしても、一括で効率よく調査・特定できるしくみを整えることです。相続人が特定しなければならない情報として、登記簿の作成時に記録される「地番」や「家屋番号」が挙げられます。これらの情報は、今後の不動産の名義変更の際に必要です。

新制度による証明書と登記事項証明書との違い

不動産の調査・特定の対象となる情報は、今の制度下でも「登記事項証明書」を請求すれば確認できます。取り寄せにあたっては、次のような条件があり、名義人ごとに持っている土地・建物をすべて特定したい場合には向きません。

登記事項証明書の問題点

  • 登記簿の管理方法に準じ、土地・建物ごとの請求になる
  • 登記された情報(地番など)が全くわからないと請求不可

※登記名義人(所有者の氏名・住所)だけでは取り寄せ不可。

新制度による証明書は、登記名義人の情報さえあれば、法務局で全国の登記簿から不動産情報を名寄せしてくれます。これにより、次のように調査向きの書類が発行されます。

所有不動産記録証明書の特徴

  • 登記名義人単位で、全国の不動産一覧が出てくる
  • 登記された情報が全くわからない場合でも請求できる

相続登記の義務化と新制度との関係

所有不動産記録証明制度は、相続登記の義務化に伴って開始が予定されています。罰則つきの義務化はまもなく開始されますが、登記までにかかる手間や時間が今のままだと、大変なプレッシャーになるでしょう。この問題に対応しようとするのが、証明制度の本来の目的です。

相続登記の義務化とは

相続登記の義務化とは、相続などによって土地・建物を得たと知ってから3年以内の名義変更手続を義務とする制度です。令和6年4月1日からスタートしており、これ以前に相続した人も、開始から3年以内に手続しなければなりません。違反すれば、10万円以下の過料が科されます。

相続した不動産を効率よく調査すべき理由

土地や建物を相続したときに効率よく調査した方が良い理由は、そのあとに控える登記申請の事前準備が複雑になるためです。調査に時間がかかると、相続登記の義務化に伴う期限に間に合わなかったり、手続せずにあきらめてしまったりするかもしれません。ここで、特に時間がかかる対応を挙げてみましょう。

有効な遺言書がないケースでの対応

遺産分割協議で「不動産を売って分割するか・売らずに公平に分割するにはどうすればいいか」をしっかり検討しなくてはなりません。判断を誤ると、売却や活用に支障をきたす恐れがあります。

登記申請の必要書類を集めるときの対応

大量の戸籍関係書類を集める手間があり、申請書をどう書くべきか確認する時間も見込まなくてはなりません。書類に不備があると、補正(修正の指示)があり、二度手間になってしまいます。

制度が始まる時期・利用対象となる人

制度が始まる時期・利用対象となる人_イメージ

所有不動産記録証明制度が開始される時期は確定していません。予定では、令和8年4月までに始まります

証明制度が開始された場合、利用対象となる登記名義人や請求できる人は、次のようになると定められています。記載の通り、第三者は請求できないしくみとなる予定で、不正請求の防止などプライバシー情報を守るための対策も講じられる予定です。

  • 対象となる登記名義人:自然人(個人)もしくは法人
  • 証明書を請求できる人:所有者や相続人、その他の一般承継人、またはそれぞれの代理人

現行制度による相続不動産調査の問題点

今の制度下では、相続した土地・建物の調査は、固定資産税の課税情報を使って行います。課税にあたって市区町村が情報管理していることから、届いている納税通知書や役場の課税台帳を見れば、一覧化された不動産情報がわかるとの考え方です。

問題は、固定資産税の課税や通知方法のしくみの関係で、確実にすべての不動産を調査できるとは限らない点です。詳しくは続けて解説しますが、現在の調査方法には次のようなデメリットがあります。

  • 最近得た不動産の情報は確認できない可能性がある
  • 共有または非課税の不動産は確認できない可能性がある
  • ほかの市区町村にある不動産は別途調査が必要
  • 未登記・未届の不動産は調査できない

固定資産税の納税通知書がある場合

固定資産税の納税通知書(または課税明細書)を受け取っていれば、その書類に不動産を特定できる情報の記載があります。確認した地番・家屋番号をもとに登記事項証明書を請求すれば、遺産分割や相続登記を進められるでしょう。

ただし、地域で所有する不動産の情報がすべて上記書類に記載されているとは限りません。下記のような注意点を踏まえて、次に解説する方法での調査が必要になる可能性があります。

最近得た不動産の情報は確認できない可能性がある

遺品やエンディングノートから見つかった納税通知書などについては、最新年度分のものとは限りません。見つかっていない最近の課税年度分で、建物の新築・土地の購入などにより、所有状況に変更があるかもしれません。

共有または非課税の不動産は確認できない可能性がある

共有する不動産の固定資産税納税通知書などは、共有の代表者だけに発送されるのが一般的です。そのため、前回の相続などで被相続人が得た共有持分については、手元になく、情報を見落としている可能性があります。ほかに、共有か否かを問わず、固定資産税が課税されない不動産は、通知が届きません。

固定資産税の課税台帳を名寄せで閲覧する場合

固定資産税の課税台帳を名寄せで閲覧する場合_イメージ

市区町村にある所有不動産をすべて確認したいのであれば、役場に行って課税台帳を閲覧させてもらうのが確実です。必要な情報を提示すれば、亡くなった所有者の情報に基づいて名寄せを行ってもらえます。

この場合にも、固定資産税の課税のしくみ上、調査漏れの可能性がなお存在します。

ほかの市区町村にある不動産は別途調査が必要

固定資産税の課税は土地・建物が所在する市区町村単位で行い、課税台帳もこれに準じて作成されます。他の地域にも不動産を所有している場合には、それぞれの市区町村役場で課税台帳を閲覧させてもらわなくてはなりません。

未登記・未届の不動産は調査できない

固定資産税の課税台帳にあるのは、毎年1月1日時点で登記簿が作成されて権利関係の登記が完了しているものか、本人が役場に届け出た不動産だけです。相続開始直前の新築物件・購入物件は、登記も届出もないこと自体が記載されません。

以上のように、固定資産税の課税情報を使った調査は、どちらの方法でも調査を完結させるのは難しいと言えます。これに対し、登記簿の名寄せを行う所有不動産記録証明制度であれば、地域・所有権の状態・課税の有無にかかわらず、基本的には所有するすべての土地・建物を調査できるものと考えられます。

相続した不動産の調査手段として使えるものごとに、不動産の状況に応じて確認可否をまとめると、下の表の通りです。

対象の不動産 納税通知書 課税台帳(名寄帳) 所有不動産記録証明制度
最近得た不動産 確認不可 確認できない可能性あり 確認可
共有不動産 確認できない可能性あり 確認可 確認可
非課税の不動産 確認可 確認可 確認可
未登記・未届の不動産 確認できない可能性あり 確認できない可能性あり 確認できない可能性あり
別の市区町村の不動産 確認可 確認可 確認可

所有不動産記録証明制度のチェックポイント

亡くなった登記名義人の情報さえあれば不動産のリストを請求できる予定の新制度は、現行制度にはない、確実かつ効率的に調査できる方法となります。相続人やそのほかの利害関係者にとってどのような影響を及ぼすかを解説します。

全国にある不動産を一括で調査できる

新しい証明制度のメリットは、全国にある不動産の情報を一括で調査できる点です。すでに、登記事項証明書は、オンラインまたは全国の法務局でも請求可能です。新制度に対応したシステムさえ整えば、課税台帳が「市区町村単位での名寄せ」であるのに対し、法務局では「全国版の名寄せ」を行えるようになります。

確実な調査のため方法の見直しは必要になる

確実な調査のため方法の見直しは必要になる_イメージ

所有不動産記録証明制度が普及すると、調査のもととなる情報に変更が生じます。固定資産税の課税情報なら「3年おきに市区町村が調査した結果」に基づくところ、新制度だと「現在の登記簿」が情報源になります。

上記を受け、下記のような不動産が調査から漏れる可能性を踏まえて、調査方法の見直しが必要になると考えられます。

祖父母世代の相続登記が完了していない不動産

祖父母から両親のいずれかへ、親から子へと受け継がれる土地・建物のなかには、祖父母世代が亡くなった時の相続登記が済んでいないものがあります。こうした不動産が存在する可能性があるときは、親の名前で調査するとともに、当時の所有者で登記事項を取り寄せる必要があります。

新築後まもなく相続が開始し、登記も届出もない建物

稀ではありますが、建てた直後に所有者が亡くなり、新築直後の所有権保存登記も市区町村への届出も済んでいない建物があります。こうした建物は、新制度でも従来の課税情報を通じた調査手法でも情報確認できないため、建築時の資料や現地情報に基づいて名義変更する必要があります。

なお、祖父母世代など前回の相続登記が完了していない不動産については、同時期に開始される予定の「所有権登記名義人の死亡情報についての符号表示制度」で調査しやすくなる見込みがあります。法務局が市区町村などから死亡情報を入手し、登記簿に死亡情報を符号で表示させる制度です。

相続登記前の不動産の調査・特定は専門家に相談を

所有不動産記録証明制度が始まれば、これまでは出来なかった「登記簿に記載されている情報の名寄せ」が可能になります。相続登記までに必要な不動産の調査・特定がスムーズに進み、いまよりも少ない負担で手続できるようになるでしょう。

新制度が始まる時期が具体的に決まっていない現在は、亡くなった人の不動産を特定するため、状況に応じた対応を検討しなければなりません。先に相続登記の義務化が始まってしまうことを踏まえて、相続開始後の調査についても、登記の専門家である司法書士への相談をおすすめします。

記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

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