不動産の名義変更の手続方法と流れ・必要書類を紹介

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不動産の名義変更とは

不動産の名義変更とは、土地や建物の所有者が変わるときに法務局で行う「所有権移転登記」の申請手続です。手続が完了すると、法務局で管理する登記簿上の名義人(登記名義人)が最新のものとなります。以後、不動産を譲り受けた人は、登記簿に記載された情報の証明書である「登記事項証明書」を取得・提示することで、入居者や購入希望者などに対して所有権を主張できるようになります。

名義変更が必要になるケース

不動産の名義変更が必要なのは、どのような理由であれ、土地や建物の所有者が変わるケース全般に及びます。具体的に挙げると、次のようなケースです。

  • 所有者が死亡した(相続・遺贈)
  • 不動産を無償で譲り受けた(贈与)
  • 不動産の売買取引をした(売買)
  • 離婚に伴い、自宅などの財産を分け合った(財産分与)

親族間で所有者が変わる場合でも名義変更は必要

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注意したいのは、自宅や空き家を親族間で譲り合うケースでも、不動産の名義変更にあたる所有権移転登記は必要になる点です。たとえば、親子や夫婦間で自宅の所有者を変えようとする場合でも、有償なら贈与、相応の対価を払うなら売買として扱い、名義変更手続を進めなければなりません。

なお、元の所有者が亡くなった場合の不動産の名義変更は、一般に「相続登記」と呼ばれます。相続登記は今後義務化され、相続開始および不動産の取得を知った日から3年以内に行わなければ、過料が科されます。

不動産の名義変更の方法

不動産の名義変更(所有権移転登記)の手続では、登記申請書のほかに所有権の変更が生じた原因などを証明する書類を集め、管轄の法務局に提出しなければなりません。提出した書類には審査があり、登記が完了すると通知書発行や書類の原本還付などがあります。

名義変更手続は誰がやるのか

登記申請は、登記義務者と登記権利者が共同で行うのが原則です。登記義務者は元の所有者、登記権利者は新しい所有者と考えて差し支えありません。

実際の登記申請では、どちらか一方が委任状を預かった上で代表して手続するか、司法書士などの専門家に任せるのが一般的です。

例:売買した土地・建物の名義変更を買主が行う場合

このケースでは、元の所有者である売主が登記義務者、新しい所有者である買主が登記権利者となります。本来は共同申請ですが、今回は買主が行うため売主の署名押印のある委任状を用意する必要があります。

なお、相続で不動産の名義変更が必要になるケースでは、所有権を得た相続人あるいは受遺者らで手続しなければなりません。不動産を共有で相続し、自分たちで名義変更しようとする場合なら、相続人の代表者を決めた上で連名の委任状を預けて手続してもらいます。

名義変更手続の3つの方法

不動産の名義変更には、郵送申請、窓口申請、オンライン申請の3つの申請方法があります。どの方法を選択しても、提出する書類に違いはありません。郵送の場合は専用の封筒で申請書類を送付し、オンライン申請では専用ソフトと電子署名を用いてインターネットで送付します。

注意したいのは、オンライン申請でも、電子文書化されていない書類は別途郵送または窓口で提出する必要がある点です。相続で不動産をもらい受けるケースでは、電子文書として交付されないものに戸籍関係書類があり、オンライン申請とは別に紙の書類を提出しなければなりません。

手続の流れ

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不動産の名義変更(所有権移転登記)の手続は、おおむね次の4ステップで進みます。実際の手続では、必要書類を集める段階の負担がもっとも大きくなりがちです。

1.必要書類を用意する

不動産の名義変更にあたっては、登記申請書を作成するための書類と、登記申請書に添付する書類が必要です。うち、登記申請書を作成するための書類とは、下記の2つの書類を指します。提出を求められるとは限りませんが、不動産を特定できる情報(所在・地番など)を正確に確認し、手数料にあたる「登録免許税」を計算するために欠かせません。

登記申請書を作成するための書類
  • 登記事項証明書(法務局で取得)
  • 固定資産評価証明書(市区町村役場で取得)

登記申請書に添付する書類は、不動産の所有権が移った理由(相続や売買など)にかかわらず、次の一式となります。書類の具体的な内容は、所有権が移った理由や状況に応じて変化します(詳しくは後述します)

登記申請書に添付する書類
  • 登記原因証明情報
  • 登記申請者の住所が確認できる書類
  • 印鑑登録証明書(登記減証明情報に押印した印鑑に関するもの)
  • 委任状(必要に応じて)

2.登記申請書を作成する

不動産の名義変更のため提出する登記申請書は、一定の内容を記入して自分で作成する必要があります。記載項目は下記全般に及びます。

【登記申請書の記載項目】

登記申請書の記載項目 記載内容
登記の目的 売買、贈与、相続など
登記の原因 「所有権移転」と記載
登記義務者の氏名および住所 売主、贈与者などの情報(※1)
登記権利者の氏名および住所 買主、受贈者などの情報(※2)
添付情報 添付する書類の情報
登記申請の日付 申請日の日付(※3)
登記申請者の氏名および住所 手続する人の情報
課税価格 登録免許税の金額(※4)

※1:相続の場合、亡くなった人(被相続人)の氏名および最後の住所を記載します。
※2:相続の場合、遺言・遺産分割・遺贈などで不動産を取得した人の情報を記載します。
※3:登記申請日は名義変更の完了日ではない点に要注意です。
※4:固定資産評価証明書に記載のある評価額に、所定の税率を掛けて計算します。

3.管轄の法務局で登記申請する

不動産の名義変更の申請先は、土地や建物の所在地を管轄する法務局・登記所です。全国どこの法務局でも手続ができるわけではない点に注意しましょう。

各地を管轄する法務局・登記所は、下記から確認できます。

4.登記完了後に届く各種書類を受け取る

不動産の名義変更は、登記申請書類を提出するだけで済むわけではありません。提出書類の審査を経て登記完了となったあと、新しい所有者に下記書類あるいはPDFファイルが届いた段階で手続完了となります。

  • 登記完了証
  • 登記識別情報通知書(申請時に希望した場合のみ届く)
  • 提出した添付書類の原本(同上)

登記識別情報通知書は、今後その不動産の売却や贈与を行う際、所有者であることを証明するための重要な情報(12桁の符号)が記載されている書類です。漏えい防止のため符号の目隠しシールを剥がさず、そのまま大切に保管しましょう。

ケース別必要書類(相続・贈与・売却・離婚時)

ケース別必要書類(相続・贈与・売却・離婚時)_イメージ

不動産の名義変更(所有権移転登記)をするための書類は、所有者の変更が生じた理由によって大きく異なります。特に違いが出るのは、登記原因証明情報にあたる書類です。ケース別に、どんな書類が必要になるのか確認してみましょう。

相続したときの必要書類

不動産を相続で取得したときの基本的な必要書類は、登記申請書のほかに下記の1から6までとなります。うち、1から3までの書類が登記原因証明情報(相続や遺産分割・遺贈があったことを証明する情報)です。

  1. 遺言書または遺産分割協議書
  2. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、改製原戸籍など
  3. 相続人全員分の戸籍謄本
  4. 相続人および受遺者の住民票
  5. 相続人全員分の印鑑登録証明書(遺産分割した場合)
  6. 相続人および受遺者による連名の委任状(司法書士に依頼する場合)

贈与を受けたときの必要書類

不動産を贈与で取得したときの基本的な必要書類は、登記申請書のほかに下記の1から4までとなります。うち、1が登記原因証明情報にあたり、親子・夫婦といった近親者間での贈与であっても、名義変更のため作成する必要があります。

  1. 贈与契約書(実印を使用)
  2. 受贈者の住民票
  3. 贈与者および受贈者の印鑑登録証明書
  4. 贈与者および受贈者による連名の委任状(司法書士に依頼する場合)

売買したときの必要書類

不動産を売買したときの基本的な必要書類は、登記申請書のほかに下記の1から4までとなります。うち、1が登記原因証明情報となり、不動産会社の売買仲介や買取などを利用する場合には、利用した会社を通して作成されているのが一般的です。

  1. 売買契約書(実印を使用)
  2. 買主の住民票
  3. 売主および買主の印鑑登録証明書
  4. 売主および買主による連名の委任状(司法書士に依頼する場合)

離婚時に財産分与があったときの必要書類

離婚に伴う財産分与で不動産を譲った・譲られたときの基本的な必要書類は、登記申請書のほかに下記の1から4までとなります。裁判所を通さずに離婚した場合は、不動産に限らず、夫婦共有の財産の一切についての離婚協議書を作成し、その原本を自宅の名義変更などに用います。

  1. 不動産の財産分与について記載のある離婚協議書、調停調書など
  2. 不動産をもらい受ける側の住民票
  3. 不動産を譲る側の印鑑登録証明書(離婚協議書を実印で作成した場合)
  4. 元夫婦による連名の委任状(司法書士に依頼する場合)

なお、離婚に伴って不動産を譲る側に氏名・住所の変更があれば、その変更登記を先に済ませなければなりません。変更登記にあたっては、氏名なら離婚成立後の戸籍謄本、住所なら転居後の住民票の写しが必要です。

手続にかかる費用

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不動産の名義変更(所有権移転登記)には、添付書類の交付手数料をはじめとする最低費用がかかり、司法書士などに依頼するつもりなら報酬も必要です。手続の方法だけでなく、出費にも十分注意を払いましょう。

名義変更手続にかかる費用の内訳

不動産の名義変更のためかかる費用の内訳は、大まかに下記の5つとなります。手続を進めるには、費用がいくらかかるのか極力正確に計算し、その額を負担する人や負担割合もあらかじめ決めておかなくてはなりません。

  • 戸籍謄本の交付手数料(相続の場合)
  • 住民票の写し・印鑑登録証明書の交付手数料
  • その他の雑費(電話代、交通費など)
  • 登録免許税の納付に使用する収入印紙代
  • 司法書士報酬(依頼する場合)

自分で手続する場合と司法書士へ依頼した場合の費用

不動産の名義変更を自分でやろうとする場合、全体でどのくらいの費用を見込めば良いのでしょうか。結論として、相続だと数万円程度、売買・贈与・財産分与の場合は不動産の固定資産評価額に応じて10万円単位になると考えられます。相続は登録免許税が安い代わりに戸籍関係書類の収集費用がかさみ、それ以外の場合だと登録免許税が高額化します。

司法書士に依頼する場合、不動産1個あたり3万円~12万円程度の報酬が発生します。なお、名義変更しようとする不動産の個数や手続の難易度によっては、報酬に加算がある場合もあります。

よくある質問

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不動産の名義変更(所有権移転登記)のため必要な書類、手続、費用などは、個別に判断しなければなりません。実際のところ、不動産の名義変更は何度も必要とする手続ではなく、最初の一歩である「誰が申請するのか」を含めて判断に迷いがちです。そのなかでも、よくある質問は以下の3つです。

不動産の名義変更は自力でできる?

不動産の名義変更は、売主や買主、相続人などといった当事者が自分で行える手続です。もっとも、なるべく司法書士などの専門家に任せた方が、迅速かつ確実で、時間および費用の節約になる場合も多々あります。

専門家に任せる理由として多いのは「必要書類の調査や交付請求を行う時間がない」「持病・障がいや体力低下のせいで自力での対応が難しい」などといった、手続する人の事情によるものです。手続自体が難しく、司法書士などの専門家だからこそ適切に進められるケースとしては、次のようなものがあります。

  • 前回の名義変更が終わらないまま、立て続けに相続が起きた
  • 不動産を相続したが、相続人の数が多く、書類収集の手間がかかりすぎる
  • 中古の不動産を譲り受けたが、調査してみると建物が未登記だった
  • 離婚や家庭内不和の影響で、共同申請の相手方との連絡に心理的抵抗がある

不動産の名義変更にかかる時間は?

不動産の名義変更にかかる時間は、登記申請(書類提出)から登記完了まで、約2週間以内が目安です。申請時に知らされる「補正日」が登記完了予定日にあたり、書類不備などの事情がなければ予定通りとなるのが普通です。

時間がかかりがちなのは、登記申請のための準備段階です。相続で土地や建物をもらい受けるケースだと、戸籍関係書類や必要な住民票の写しのボリュームが増え、着手から登記申請の完了まで1か月から2か月ほどかかると見込まれます。売買や贈与、離婚に伴う財産分与でも、共同申請の相手方の対応速度次第で、相当時間がかかってしまう可能性は捨てきれません。

不動産の名義変更後にかかる税金とは?

不動産の名義変更後にかかる税金とは?_イメージ

不動産の名義変更後は、亡くなった人から取得するケースでは相続税、それ以外の場合だと贈与税もしくは譲渡所得税がかかります。所有し続けることで、毎年固定資産税も発生するでしょう。

もっとも、ある程度まとまった額の税金がかかるからといって、名義変更しないまま放置するのはおすすめできません。登記名義人となって所有権を主張できる状態でないと、売却やリフォームを経て手放すこともままならず、入居者やそのほかの占有者、隣人との間でトラブルが起きる恐れもあります。

不動産の名義変更は司法書士への依頼が安心

不動産の名義変更(所有権移転登記)が必要になるのは、相続・贈与・売買・離婚に伴う財産分与といった「所有者の変更があるケース全般」です。名義変更を完了させるには、上記の登記原因を証明する情報などを添付し、登記申請書を法務局へ提出しなければなりません。必要書類や費用も登記原因によって変化します。

手続のための時間がない場合、不動産の名義変更を正確かつ迅速に行ってほしい場合は、司法書士などの専門家に代行を依頼すると安心です。なるべく自力で名義変更を完了させたい場合でも、書類不備などによる二度手間や費用の増加を避けるため、あらかじめ司法書士の無料相談を利用しておくと良いでしょう。

記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載

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