数次相続が発生したときの相続登記の方法

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数次相続とは

数次相続は、前回の相続手続がまだ終了していない状態で相続人が亡くなり、次の代の相続人が前回の相続による遺産の承継をしなければならない状態を指します。典型的な例として、両親が共に高齢で父が亡くなった後、すぐに母も亡くなってしまうケースが考えられます。

数次相続が起こると、特に不動産が含まれている場合、その名義変更に必要な登記申請が複雑になります。不動産登記の原則において、基本的には以前の相続登記を行なわないと、今回の相続の登記ができないのです。上記のケースでの相続登記は「数次相続登記」と呼ばれます。

不動産の数次相続登記が必要なケース

不動産の数次相続登記が必要なケース_イメージ

不動産の数次相続登記が必要なケースは、大まかにたとえるなら、前回の登記名義人と今回の被相続人(亡くなった人)が、親族同士ではあるものの別人である場合が該当します。よくあるパターンは、以下のように「前の世代で相続登記がなかった」ケースです。

【例1】亡くなった親の不動産を相続登記しようと思い、登記申請のため登記事項証明書を取り寄せて確認してみると、登記名義人が随分前に亡くなった祖父のままになっていた。

上記ケースでは、本来なら祖父が亡くなったときに相続登記しておくべきでした。実際には、登記申請義務がなく不動産の使用にも問題なかったことから、親の代で登記申請を失念してしまっていたと考えられます。結果的に「祖父から子へ、子から孫へ」と2回に渡る所有権移転について登記申請しなければなりません。

数次相続登記が必要なケースはさまざまで、判断に迷う場合もあります。下の設例のように、両親と子といった近い親族間での不動産承継でも、数次相続登記が必要になる場合があります。

【例2】父親が亡くなり、両親が住んでいた家は母親が単独で所有することが決まっていたが、以前から重い持病のあった母親が登記申請を終える前に亡くなってしまい、残された子が家を受け継ぐことになった。

上記ケースでは、母子で決めた「母が自宅を単独で承継する」という内容を実現するための相続登記が実現していれば、子が母から自分へと登記名義人を変える手続で済んだはずです。実際には、母の急死により「父から母へ、母から子へ」と2回に渡る所有権移転について登記申請する必要があります。親世代が共に高齢化すると、このような例も有り得ます。

代襲相続と数次相続の違い

数次相続と混同しやすいケースに「代襲相続」がありますが、代襲相続は通常の相続のパターンのひとつに過ぎません。数次相続は2回以上に渡って相続が発生し、その都度遺産をもらう権利が発生する場合を指します。一方、代襲相続は本来相続権のある人がすでに死亡しているなどで、1回の相続で世代を飛び越えて遺産をもらう権利が発生する場合を指します。

親・子・孫の3世代の関係で考えた場合、数次相続と代襲相続の違いは次のとおりです。

【数次相続】祖父が最初に亡くなり、次に父が亡くなる場合

遺産を受け継ぐ権利が発生する回数は「祖父→父(亡祖父の子)→孫(今回の被相続人である父の子)」で2回とします。もし、父の相続手続が未了のままであれば、孫が祖父から不動産などを相続するため、父の分と合わせて2回分の手続(数次相続の手続)が必要です。

【代襲相続】父が最初に亡くなり、その後祖父が亡くなる場合

法律上、父が亡くなったら、その子(孫)は亡くなった親の権利を受け継いでいます。祖父が亡くなった時点で、遺産を受け継ぐ権利が発生する回数は「祖父→孫」で1回とし、通常の手続で祖父の不動産などの名義変更が可能です。

相続登記における中間省略とは

家や土地・建物について数次相続が発生する場合、発生した相続と同じ回数分の登記申請をするのが原則です。不動産の登記情報には「権利変動の過程を正確に反映しなければならない」というルールがあるためです。相続が2回以上立て続けに発生するなら、それぞれの相続に対して登記申請を行うのが本来のあり方です。

とはいえ、上記のようなルールを厳格に課してしまうと、数次相続の当事者の負担は、状況に応じて増える可能性があります。そこで、一定のケースでは中間の相続に関する所有権移転登記を省略できる「中間省略登記」が認められています

数次相続で中間省略登記が認められる条件

不動産の数次相続で中間省略登記が認められる条件は下記のいずれかです。どちらか片方に当てはまれば、1回の登記申請で今回の相続人の名義にすることが可能です。

  • 条件1:裁判で中間省略登記を命ずる判決があった
  • 条件2:数次相続の場合に、その中間の相続が単独相続だった

条件1は、売買や贈与などによって2回以上の権利移転が発生する場合に適用されます。数次相続の登記では、条件2に当てはまるかを判断することになります。

中間省略登記が認められるケース

「中間の相続が単独相続である」という条件に則って中間省略登記が認められるケースは、2パターンに別れます。中間の相続人がもともと1人しかいなかったパターンと、中間の遺産分割協議で単独での承継について合意できていたパターンです。設例を見てみましょう。

【設例1】中間の相続人がもともと1人しかいなかった

  1. 祖父Aが亡くなり、祖母Bが相続した(相続登記済)
  2. 祖母Bが亡くなり、一人っ子のCが相続した(登記未了)
  3. 子Cが亡くなり、その配偶者Dと孫E・Fで相続することになった

上記の設例では、祖母が登記名義人である不動産について、中間の相続である②で子Cが唯一の相続人となります。不動産について遺言による贈与がなければ、Cが単独で承継しています。あとは③の段階で孫D・E・Fで遺産分割協議して不動産を受け継ぐ人を決めれば、②の登記申請は省略して構いません。

【設例2】中間の遺産分割協議で単独承継の合意はできていた

  1. 祖父Aが亡くなり、祖母Bが相続した(相続登記済)
  2. ABの子であるCとDが協議し、Cの単独承継が決まった(登記未了)
  3. 子Cが亡くなり、その配偶者Dと孫E・Fで相続することになった

上記の設例では、中間の相続である②でCとDで計2人の相続人がいるものの、遺産分割協議でCが単独で不動産を承継すると合意しています。あとは同じく、D・E・Fの間で協議して不動産の承継について合意できれば、②の登記は省略できます。

中間省略登記が認められないケース

中間省略登記が認められないケースの多くは、最終の相続で共同相続人が亡くなってしまったパターンです。その他には中間で相続人が2人以上居るにもかかわらず、不動産を受け継ぐ人が決まっていなかったパターンもあります。

【設例1】今回の遺産分割協議の前に相続人が亡くなった

  1. 祖父Aが亡くなり、祖母Bが相続した(相続登記済)
  2. 祖母Bが亡くなり、一人っ子のCが相続した(登記未了)
  3. 子Cが亡くなり、その配偶者Dと孫Eで相続することになった
  4. D・Eの遺産分割協議が済む前に、Dが亡くなり、Eだけが遺された

上記の設例では、③の段階であれば中間の②が単独承継のため中間省略登記が可能です。問題は④の段階で相続人が2人であるにもかかわらず、Dが亡くなったことで遺産分割協議が不可能になり、中間の③が事実上単独承継とは言えなくなった点です。この場合には、①のBから③のD・Eまでの中間省略登記と、④によるDからEへの持分全部移転登記が必要です。

【設例2】中間の遺産分割協議が未了のまま親族と疎遠になる

  1. 祖父Aが亡くなり、祖母Bが相続した(相続登記済)
  2. 祖母Bが亡くなり、子であるCとDが相続権を得た
  3. 祖母Bの自宅は、遺産分割協議未了のままCが住んでいる
  4. 立て続けに子Cが亡くなり、その配偶者Eと孫Fで相続することになった(CとDはきょうだいだが、C一家共々長らく連絡を取っていない)

上記の設例では、中間の②でC・D間の遺産分割協議が必要であり、そこでCの単独承継で合意できれば、あとはE・F間の協議で合意した内容に沿って中間省略登記が可能です。

問題はDと疎遠になっている状況です。Dと連絡が取れても不動産の分割を提案されたり、Dが亡くなっていてDの相続人(配偶者や子)と協議するとなると、それだけでも大変です。

中間の相続が単独承継となるパターンにはいろいろある

中間の相続が単独承継になる、つまり中間省略登記が可能になるケースは、何も「唯一の相続人であった場合」や「遺産分割協議で単独承継の合意ができた場合」に限りません。次のようなケースも該当します。

  • 共同相続人が相続放棄したことで、結果的に単独承継することになった
  • 共同相続人に特別受益(※)があり、結果的に単独承継することになった
  • 共同相続人から相続分の譲渡があった

※婚姻、養子縁組または生計の資本としての贈与を指します。当てはまる贈与があった相続人は、贈与の価額を「あらかじめ遺産としてもらったもの」と考え、取り分を減らされる可能性があります。

数次相続の登記手続の流れ・方法

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数次相続の登記の流れは、1回で済む場合と2回以上必要な場合で変わります。共通するのは、相続関係を示すための書類をすべて揃え、必要な申請書・相続関係図を作成してから、登録免許税の納付と合わせて法務局に申請しなければならない点です。

設例を挙げてそれぞれ解説しますが、ここで紹介するパターンに当てはまらないケースは多数です。あくまでも参考程度と考えて下さい。

登記申請が1回で済む場合の手順

登記申請が1回で済む場合の手順は比較的シンプルです。苦慮するのはこれまでの被相続人全員分の、それもすべての戸籍謄本を集めなくてはならない点です。下記の設例を使い、どんな手続をするのか見てみましょう。

  1. 祖父Aが亡くなり、祖母Bが相続した(相続登記済)
  2. 祖母Bが亡くなり、一人っ子のCが相続した(登記未了)
  3. 子Cが亡くなり、その配偶者Dと孫E・Fで相続することになった
  4. D・E・Fの遺産分割協議の結果、今も居住するDが義祖母Bの家をもらうことになった

必要書類を集める

設例で登記申請のために必要な書類は、原則として以下の一式です。

  • Bの出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  • Cの出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  • D・E・Fのそれぞれの戸籍謄本、住民票の写し
  • BおよびCの住民票除票または戸籍附票
  • D・E・Fの印鑑登録証明書、住民票の写し・本人確認書類(免許証など)、遺産分割協議書

BからDへの中間省略登記を行う

所有権移転登記のための登記申請書を取得し、BからFまでの相続関係図を作成します。司法書士に依頼する場合は、委任状も必要です。

相続関係図や委任状、登記申請書が揃ったら、上記の添付書類と合わせて法務局に提出します。

登録免許税の納付

登記申請の際は、登記する不動産の固定資産税評価額の0.4%にあたる登録免許税がかかります。土地については、令和7年3月31日まで免税されます。

登記申請が2回以上に渡る場合の手順

登記申請が2回以上に渡る場合、登記の順番や、それぞれの登記の目的を権利移転の状況と照らし合わせて考える必要があります。下記の設例を使い、どんな手続をするのか見てみましょう。

  • 祖父Aが亡くなり、祖母Bが相続した(相続登記済)
  • 祖母Bが亡くなり、一人っ子のCが相続した(登記未了)
  • 子Cが亡くなり、その配偶者Dと孫Eで相続することになった
  • D・Eの遺産分割協議が済む前に、Dが亡くなり、Eだけが遺された

必要書類を集める

設例で登記申請のために必要な書類は、原則として以下の一式です。

  • Bの出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  • Cの出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  • Dの出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  • Eの印鑑登録証明書、住民票の写し・本人確認書類(免許証など)住民票除票または戸籍附票

BからCへの相続登記を行う

所有権移転登記のための登記申請書を作成し、BからCへの相続登記を行います。Cに至るまでの相続関係図、司法書士に依頼する場合は委任状を揃えて添付書類と共に提出し、いったんはCを登記名義人とします。

DからEへの持分全部移転登記を行う

DとEは遺産分割協議前のため、不動産を共有している状態です。そこで、Dが亡くなった以上は、その共有持分をEに移転させなければなりません。登記の目的は「Dの持分全部移転登記」とし、同じように登記申請します。

登録免許税の納付

登記申請の際は、1回目と2回目でそれぞれ登録免許税がかかります。1回目は固定資産税評価額の0.4%、2回目はDの持分の割合に合わせて上記金額の2分の1の税を納める必要があります。

数次相続の注意点

数次相続で注意したいのは、遺産分割協議書・相続関係説明図の書き方です。当事者の立場を曖昧な表記にすると、不動産の権利がどう移転しているのかわからず、訂正を求められて二度手間になってしまうかもしれません。他には高額資産を承継する点を踏まえて、相続税の申告義務と使える控除も理解しておきたいところです。

遺産分割協議書の書き方

数次相続の登記を実現させるには、有効な遺産分割協議書を作成しなければなりません。通常の相続登記と違って注意しなければならないのは、当事者について「誰が被相続人で、誰が誰の相続人なのか」をはっきり書く必要がある点です。

例として、祖父A・Aの子である父Bが相次いで亡くなり、孫のC・DがAの家や土地を貰い受ける場合を考えてみましょう。すると、当事者の関係は次のようになります。

  • A:被相続人
  • B:Aの相続人兼被相続人
  • C:Bの相続人
  • D:Bの相続人

上記の関係を遺産分割協議の文例に落とし込むと、次のようになります。

【遺産分割協議書の文例】

遺産分割協議書

被相続人 A(昭和〇年〇月〇日生まれ)
死亡日 令和4年12月20日
本籍地 〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇
最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇

Aの相続人兼被相続人 B(昭和〇年〇月〇日生まれ)
死亡日 令和5年9月10日
本籍地 〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇
最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇

Bの相続人 C(昭和〇年〇月〇日生まれ)
本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇

Bの相続人 D(昭和〇年〇月〇日生まれ)
本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇


 

1. 相続人Cは、相続人Bが相続した下記不動産を相続する。
(土地及び建物の情報/省略)

2. 相続人Dは、次の遺産を相続する。
(預貯金その他の情報/省略)

上記の通り、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため、
本書2通を作成し、署名押印の上、各1通宛所持する。

令和〇年〇月〇日


C (実印)
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇

D (実印)
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇

相続関係説明図の書き方

数次相続の登記申請書に必要な相続関係説明図では、死亡日を明らかにして、出来れば遺産分割協議書と同じく当事者の関係をはっきり記載しておくのが適切です。法務局の公式サイトでは、数次相続の場合の説明図の書き方の例が紹介されています。

【相続関係説明図例】

相続関係説明図例_イメージ

※引用:相続登記ガイドブック│法務局

相続税の申告・納付義務

不動産の登記申請とは別に、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に相続税申告が必要です。数次相続のケースでは、申告義務のある人がすでに亡くなっていることが問題です。結論として、相続税の申告・納付義務を負うのは最終的に相続する人です。

加えて、相続税の基礎控除額にも注意しましょう。相続税の申告・納付については、遺産の価額が「3000万円+600万円×法定相続人の数」であれば必要ありません。問題になるのは「法定相続人の数」の部分です。数次相続では、最終の相続での法定相続人の数ではなく、最初の相続の時点での法定相続人の数で基礎控除額を計算します。

たとえば、父Aと母Bが立て続けに亡くなり、唯一の子Cが最終の相続人となったケースだと、Aが亡くなった時点の法定相続人であるBとCが基礎控除額の計算に含まれます。その結果、不動産含む遺産の価額が3000万円+600万円×2=4200万円以内であれば、相続税の申告・納付義務はありません。

相次相続控除の利用

相次相続控除の利用_イメージ

不動産の数次相続登記が必要となるケースでは「1回目の相続から2回目の相続までの期間が短く、それゆえに登記がややこしくなった」という場合が多く見られます。当てはまる場合、税制面では「相次相続控除」と呼ばれる優遇が受けられる可能性があります。

相次相続控除は、前回から今回に至る相続発生の間隔が10年以内である場合に適用できます。適用によって前回の相続で課税される相続税額につき、1年のうち10%の割合で今回の相続までの年数分減らした額を、今回の相続税額から控除できます

数次相続登記のやり方は司法書士の個別判断が必要

数次相続の不動産登記は、親族関係と最終の相続までの状況に応じてやり方が変わります。中間の相続が単独承継であれば、登記の省略が認められて1回の申請で済む場合がありますが、自分で判断するのは非常に難しいと言わざるを得ません。

令和6年4月には相続登記の義務化があります。登記申請の判断に時間をかけるわけにはいきません。「立て続けに相続が起きた」「登記簿を確認したら以前亡くなった親族の名義だった」といったケースは、すぐに司法書士に相談して個別に判断してもらうのが良いでしょう。

記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載

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