相続登記の費用はいくら?司法書士報酬の相場や節約ポイントを解説

相続登記の費用はいくら?申請費や司法書士報酬の相場_イメージ

相続登記とは

相続登記とは、亡くなった方の土地や建物を、新しい所有者である相続人に名義を移すための手続です。相続における不動産の名義変更と言えば相続登記のことを指しており、新しい所有者が不動産の権利を主張するために欠かせません。加えて、これまでは相続登記しなくても特にペナルティがなかったところ、令和6年4月1日以降の登記申請の義務化により事情が変わります。

心配なのは相続登記の申請にかかる費用ですが、不動産の価格と比較すればそう大きくはありません。トータルの費用と相続登記の必要性から確認してみましょう。

相続登記の実費はトータルで数万円程度

相続登記の実費でもっとも大きいのは登録免許税ですが、相続する不動産の価額によっては、数千円程度で済みます。ただし、戸籍謄本の収集など交付請求の手数料が追加でかかる点に注意しましょう。トータルで考えると、空き家や住民の少ない地域の土地なら2万円から3万円程度、それ以外の需要のある不動産ならプラス数万円程度かかります。

相続登記の必要性とは?令和6年4月からの義務化について

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相続登記を行わないと、不動産の売却やリフォーム、賃貸借契約などの際に支障が出る可能性があります。工事を依頼するときや、不動産会社に依頼して売却や賃貸契約を進めるときは、依頼者=登記名義人であることが前提です。相続登記をせず亡くなった人が登記名義人のままだと、不動産の権利に基づいて行う手続全般に支障をきたします。

気を付けたいのは、令和6年4月1日以降の相続登記の義務化です。制度が始まると、正当な理由なく3年以内に登記を申請しない場合、ペナルティとして10万円以下の過料が科されます

上記法改正は、令和5年以前に相続した不動産にも適用されるため、現時点で不動産を相続した人もなるべく早めに登記申請しなければなりません。

相続登記で発生する書類費用と登録免許税

家や土地の相続登記で発生する費用には、最低限かかるものとして「申請書類の取得費用」と「登録免許税」があります。

申請書類の取得費用

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相続登記の申請書は無料で配布されていますが、添付書類の取得には1通ごとに交付手数料がかかります。申請書類の取得費用に大きく関わるのは、住民票と戸籍謄本の枚数です。法定相続人の数や、被相続人の戸籍情報の変遷(生まれた年や婚姻歴)によって必要な枚数が変わり、枚数が増えればトータルの費用もかさむと考えて差し支えありません。

下の表は、市区町村役場の窓口で各書類を請求する際の交付手数料です。

書類名称 1通あたりの交付手数料
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) 450円
除籍謄抄本 750円
改正原戸籍謄抄本 750円
戸籍附票の写し 300円
住民票の写し 200円~300円(自治体により異なる)
印鑑登録証明書 200円~300円(自治体により異なる)
固定資産評価証明書 200~400円

必要書類の取得にあたり、かかるのは交付手数料だけではありません。窓口請求なら市区町村役場までの交通費、郵送請求であれば郵便切手代(返送切手代込み)が別途かかります。それぞれの金額は、登記申請する人の住まいと請求先の市区町村の距離に応じて変化します。

登録免許税

相続登記にかかる登録免許税の税率は、取得した不動産の固定資産税評価額の0.4%です。この税率は、遺言に従って不動産を取得する場合と、遺産分割協議に基づいて取得する場合のどちらにも適用されます。

一方で、法定相続人以外の人が遺言で不動産を取得する場合、税率は0.4%ではなく2%に引き上げられます。

【例1】遺産分割協議で不動産を取得し、その評価額が1000万円の場合
1000万円 × 0.4% = 4万円

【例2】遺言で相続権のない親族が不動産を取得し、その評価額が1000万円の場合
1000万円 × 2% = 20万円

上記の相続登記の登録免許税は原則上のものであり、令和7年3月31日まで以下の免税措置が適用されます。期間内に不動産の相続登記をするなら、基本的に土地分の登録免許税はかからないと考えて差し支えありません。

土地の登録免許税の免税措置

相続した土地の登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)は、一律で免税されます。

土地を取得した人が相続登記しなかった場合の免税措置

父母が相次いで亡くなり、父が所有していた土地を子が相続するケースでは、母の分の登録免許税はかかりません。

相続した土地の価額が100万円以下の場合の免税措置

法定相続人が土地を取得した場合に限り、その土地の価額が100万円以下なら登録免許税はかかりません。共有で相続した場合は、共有持分の価額が100万円以下なら適用されます。

司法書士報酬としてかかる費用

司法書士報酬_イメージ

登記申請を司法書士に代行してもらう場合には、上記費用に加え、司法書士報酬が発生します。

相続登記を司法書士に依頼した場合、報酬額はおおむね3万円から12万円程度が目安です。法定相続人が3人以内で特殊な事情がなく、相続登記を必要とする不動産が実家の建物や敷地に限られる場合なら、5万円から6万円程度で収まるでしょう。

上記の報酬額は相続登記を完了させるまでの手間や、依頼する範囲に応じて変動することがあります。依頼する土地・建物の所在地による変動はなく、全国どこでも司法書士報酬の目安は同一と考えて差し支えありません。

平成30年に行われた日本司法書士連合会のアンケートによると、報酬額の一例は以下のとおりです。

  • 低額者10%の平均:2万7000円から3万6000円
  • 高額者10%の平均:7万円から12万円
  • 全体の平均:5万円から7万円

※参照:報酬アンケート結果│日本司法書士連合会

なお、司法書士報酬が高額化するケースとして、複数の不動産の登記を一括で依頼したり、遺産分割協議書の作成からワンストップで依頼したりする場合が考えられます。また、法定相続人の数が多かったり、被相続人が高齢で戸籍法改正前の戸籍(改正原戸籍)を取り寄せる必要があったりする場合も、手間がかかるため報酬額が高額化することがあります。

さらに、特殊なケースとして、不動産の名義が祖父母以上の代のままになっている場合が挙げられます。この場合「数次相続登記」が必要になり、個別の判断と複雑な手続を要するため、司法書士報酬が高額化する可能性があります。

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相続登記費用のシミュレーション

不動産の相続登記のために実際にいくら必要なのか、内訳だけではイメージしにくいと考えられます。そこで、いくつかの設例から最低限かかる費用(司法書士報酬を除く部分)を計算してみましょう。

なお、設例の登録免許税は免税措置を考慮していません。それぞれ登録免許税のウェイトが大きくなっていますが、実際には土地について免税措置があるため、もっと安くなると考えて良いでしょう。なお、以下は一例です。似たような状況でも書類と費用が異なる場合がありますので、あくまでも参考程度と考えてください。

評価額2000万円の自宅を配偶者名義で登記申請する場合

最初の設例は、配偶者と子2人が相続人となり、評価額2000万円の自宅を被相続人と同居していた配偶者名義で登記するケースです。費用内訳を計算しながら合計額を算出すると、次のようになります。

必要書類 費用
戸籍謄本の交付手数料(被相続人分) 450円×1通=450円
戸籍謄本の交付手数料(相続人分) 450円×3通=1350円
住民票の写しなどの交付手数料 300円×4通=1200円
印鑑登録証明書の交付手数料 300円×3通=900円
登録免許税 2000万円×0.4%=8万円
合計 8万3900円

評価額3000万円の自宅を同居する母子で共有する場合

今回の設例は、配偶者と子1人が相続人となり、評価額3000万円の自宅を同居する母子で共有するものとして登記するケースです。費用内訳を計算しながら合計額を算出すると、次のようになります。

必要書類 費用
戸籍謄本の交付手数料(被相続人分) 450円×1通=450円
戸籍謄本の交付手数料(相続人分) 450円×2通=900円
住民票の写しなどの交付手数料 300円×3通=900円
印鑑登録証明書の交付手数料 300円×2通=600円
登録免許税 3000万円×0.4%=12万円
合計 12万2850円

評価額4000万円の賃貸不動産を親族がもらい受ける場合

今回の設例は、被相続人の法定相続人が父母だけであるところ、公正証書遺言できょうだいの1人が賃貸不動産の贈与を受け、登記するケースです。これまでの設例と異なり、相続関係を示すための戸籍謄本が不要になる代わりに、登録免許税の税率が上がります。

必要書類 費用
戸籍謄本の交付手数料(被相続人分) 450円×1通=450円
戸籍謄本の交付手数料(相続人分) 0円
住民票の写しなどの交付手数料 300円×1通=300円(受遺者分)
印鑑登録証明書の交付手数料 300円×1通=300円(受遺者分)
登録免許税 4000万円×2%=80万円
合計 80万1050円

相続登記の費用を安く抑えるポイント

相続登記の費用には、節約できる部分とそうでない部分があります。申請書類の取得費用や登録免許税は抑えることができないものの、司法書士報酬には節約の余地があります。

なるべく安く相続登記を済ませるため、次のような手続の進め方を考えていくと良いでしょう。

登記申請の前段階まで自分でやってみる

登記申請の前段階まで自分でやってみる_イメージ

家族が亡くなると、不動産の相続登記を始めるまでの間に、遺産分割協議やそれに基づく預金の払戻し手続などが必要です。相続登記が始められるのは、最低でも有効な遺言書がある状態か、もしくは遺産分割協議書がある状態からです。

上記をすべて司法書士に依頼すると、遺産分割協議書の作成など、それぞれの手続に報酬がかかります。可能な限り自分で相続手続をやれば、登記申請の代行のための司法書士報酬だけで済みます。

なお、自分でできないと感じる部分や疑問点については、司法書士に相談してアドバイスを得るのがベターです。上記の際には相談料がかかりますが、報酬に比べて低額であり、手続のわからない点がクリアになるため、費用対効果は大きいと言えます。司法書士によっては無料相談サービスを実施しており、些細なことでも気兼ねなく質問できる可能性があります。

登記申請の難易度が高い不動産だけ司法書士に依頼する

相続登記の費用を節約する方法として、登記申請の難易度が高い場合だけ司法書士に依頼する方法があります。例として、自宅以外に広大な土地や古い建物を相続した場合や、数次登記が必要な不動産がある場合が挙げられます。他には、法定相続人がそれぞれ離れた場所に住んでいて、トラブルはないものの一緒に対応していくのが難しいなどがあります。

心当たりがある場合は司法書士に相談することで、どの部分が個別の判断を要するのか、どの部分で手間がかかりそうか教えてもらえます。アドバイスを基に依頼する範囲や内容を決めても良いでしょう。

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相続登記の費用で注意したいポイント

相続登記の費用を払う人

相続登記の費用については、特定の人が負担しなければならないという決まりはありません。このため、相続人同士で話し合い、費用の負担方法を決めることが一般的です。通常は、不動産を引き継ぐ相続人がその費用を負担するケース傾向にありますが、相続状況に応じて相続人全員で費用を分担することもありますし、特定の相続人が全額を負担することもあります。いずれのケースにせよ、相続人同士でしっかりとコミュニケーションを取り、双方納得のいく形で合意することが重要です。

自分で相続登記した場合の費用はいくら?

相続登記を司法書士へ依頼した場合の報酬目安はおおよそ3~12万円程度です。そのため、自分で手続を行えば、必要書類の取得費用と登録免許税のみで済みます。しかし、自分で手続を進めようと思うと、不慣れな申請に時間を要してしまう傾向が多く、申請が長期化する場合もあります。自身のスケジュールとあわせて司法書士へ依頼することも視野にいれておくことをおすすめします。

相続登記を専門家へ依頼する判断基準

専門家へ依頼する場合はどういった状況になったら、依頼することを視野に入れたらよいかの一例をご紹介します。

複数の相続人がいる場合

相続人が複数いる場合は遺産分割協議が必要です。この遺産分割協議をまとめる際、各相続人の意見調整を行うことになりますが、全員が協力的とも限らないので全員分の意見をまとめるのに労力と時間がかかる可能性があります。

相続や権利関係が複雑な場合

被相続人に再婚歴があったり認知した子がいる、相続する不動産が共有名義であるなどが判明すると、相続手続を行う処理が通常の手続と比べて増える傾向にあります。こういった相続状況を正確に把握し、手続を進めるには専門的な知識が必要な場面が出てくるでしょう。

相続する不動産が遠方にある場合

遠方の相続手続は時間がかかる傾向にあります。手続自体は郵送でも行うことが可能ですが、手続内容に誤りがあった場合は都度郵送でのやり取りとなるため、長期化になりやすいでしょう。最低限のやり取りで手続を済ませる場合は、専門家である司法書士へ依頼した方が確実です。

相続登記の費用が心配なら司法書士に見積り依頼を

相続登記の最低費用は、登録免許税として原則上は固定資産税評価額の0.4%、これに戸籍謄本や住民票の取得費用として数千円程度を加えた額になります。司法書士に登記申請を依頼するなら、プラス5万円程度が相場です。

不動産を相続する人の中には「自分でできないけど司法書士報酬の高額化が心配」「そもそも費用をかけてまで名義変更する必要のある土地・建物なのか」と不安に思う人もいるのではないでしょうか。心配であれば登記申請をやるかどうかを問わず、登記にかかる実費や相続する家・土地の取扱いについて、司法書士に尋ねてみるのも良いでしょう。

記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載

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