合筆登記とは?合筆できるケースや手続の流れ、かかる費用、注意点などを解説

合筆登記のメリットや手続の流れなどを解説_サムネイル

合筆とは?

合筆とは、複数の土地を1つの土地にまとめる手続のことで、土地の有効活用や管理の効率化を目的として行われます。合筆の手続を行うには、対象となる土地の所有者の同意が必要です。また、合筆後の土地は同一の所有者に帰属する必要があります。

どのような場合に合筆が行われるか

合筆が行われる主な状況には、以下のようなものがあります。

  • 複数の土地の管理を効率化したいとき
  • 土地の形状を改善し、利用価値を高めたいとき
  • 不動産取引を円滑に進めたいとき

たとえば、固定資産税の納付や維持管理の手間を減らして効率化するために、隣接する複数の小さな土地を1つにまとめることがあります。特に相続で複数の土地を取得した際に、管理の簡素化を目的として合筆が行われることがよくあります。

また、使いにくい形状の複数の土地をまとめることで、より使いやすい土地にすることができます。これにより、建築や開発の可能性が広がり、土地の有効活用につながります。さらに、複数の小さな土地を1つにまとめて売却することで、買主にとっても魅力的な物件となり、不動産取引が円滑に進むようになる効果もあります。

合筆では登記が必須

合筆登記とは、隣接する複数の土地を法律上1つの土地として統合するための公的手続です。合筆登記は土地を管轄する法務局に申請します。

登記が完了すると新しい地番が割り当てられ、もとの地番は消滅します。また、登記簿上で合筆前の土地の記録が閉鎖され、新しい土地の記録が作成されます。不動産登記簿の表題部には、合筆後の土地の面積や形状が記載されます。

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合筆ができないケース

不動産登記法第41条は、以下の場合に合筆の登記ができないと定めています。

一 相互に接続していない土地の合筆の登記
二 地目又は地番区域が相互に異なる土地の合筆の登記
三 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる土地の合筆の登記
四 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地の合筆の登記
五 所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆の登記
六 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地(権利に関する登記であって、合筆後の土地の登記記録に登記することができるものとして法務省令で定めるものがある土地を除く。)の合筆の登記

※引用:不動産登記法第41条│e-Gov法令検索

各条件について具体的に解説していきます。

相互に接続していない土地の合筆の登記

合筆する土地は、必ず相互に「線」で接していることが条件となります。具体的には離れた場所にある土地や、「点」でしか接していない土地同士は合筆の対象にはなりません。このため、合筆を検討する際には、各土地の境界の位置関係を正確に確認することが重要です。

地目又は地番区域が相互に異なる土地の合筆の登記

地目とは、登記記録に記載されている土地の用途を示す分類のことです。たとえば、住宅が建っている土地の地目は「宅地」、農作物を栽培している土地の地目は「畑」となります。土地を合筆するためには、地目が同一であることが必要条件です。異なる地目を持つ土地は合筆することができません。

さらに、地番区域が異なる土地も合筆の対象外となり、これらを1つにまとめることはできません。同様に「丁目」で地番を分けている場合も、異なる丁目にまたがる土地は合筆することができません。

表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる土地の合筆の登記

複数の土地を合筆するには、すべての土地の所有者が同一であることが前提条件となります。他人の土地を自分の土地と一緒にすることは当然ながら許されていません。

登記は「表題部」と「権利部」の2つに分かれており、それぞれで所有者の取り扱いが異なります。土地を合筆する際には、表題部所有者がすべて同一であるか、または所有権の登記名義人がすべて同一であることが必要です。この条件を満たしていなければ、合筆することはできません。

表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地の合筆の登記

土地が共有である場合、合筆するためには、すべての土地で共有者の持分が同一でなければならず、土地ごとに持分が異なる場合は、合筆は認められません。

たとえば、AとBが共有する甲土地と乙土地があるとします。この場合、合筆できるのは甲土地、乙土地ともに5対5で所有している場合に限られており、合筆する際には共有者の持分がすべて一致していることが条件となります。合筆を検討する際には、各土地の持分状況を正確に確認し、必要な条件を満たしているかどうかを慎重に確認することが重要です。

所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆の登記

先に述べた「表題部所有者」と「所有権の登記名義人」について、合筆を行うためには、これらが異なる状態であると認められません。

具体的には、一方の土地が所有権の登記を持たず(表題部所有者のみ)、もう一方の土地が所有権の登記がある(所有権の登記名義人が記載されている)場合、これらの土地は合筆することができません。たとえ両方の土地が同一人物によって所有されていたとしても、登記記録上の記載が一致している必要があるため、登記の種類が異なると合筆は認められません。

所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地

権利部が記載されている土地において、所有権以外の権利に関する登記が存在する場合、原則としてその土地の合筆はできません。

たとえば、一方の土地にのみ抵当権が設定されている場合や、異なる土地にそれぞれ別々の抵当権が設定されている場合、これらの土地は合筆することができません。抵当権などの権利が設定されていると、土地の所有権に関する登記だけでなく、その権利の内容も一致していなければ合筆が認められないためです。

土地を合筆するメリット

土地を合筆するメリット_イメージ

土地の合筆にはさまざなメリットがあり、土地所有者個人だけでなく地域社会全体にも恩恵をもたらす可能性があります。以下で合筆による主要な3つのメリットを詳しく解説していきます。

効率的な土地利用ができる

合筆により、小さな区画や不整形な土地を1つの大きな区画に統合することができます。そうすることで、使いづらかった土地や死角となっていたスペースを有効活用でき、効率的な土地利用が可能となります。

たとえば、農地の場合には大型機械の導入がしやすくなり、作業効率の向上が望めるでしょう。また、都市部であればより大規模な建築物の建設も可能になります。合筆によって土地の形状を整えることで無駄なスペースを減らし、土地全体の利用価値を高めることができるのです。

管理コストの削減になる

複数の小さな土地を個別に管理するよりも、合筆後の1つの大きな土地を管理する方が少ないコストで済みます。境界の管理や維持にかかる費用が減少し、税務申告をはじめとした手続も簡素化されるため、事務作業の負担軽減も望めるでしょう。

土地の一元管理によって全体の状況把握が容易になり、効率的な運営が可能になるので、短期的なコストの負担はあっても長期的には大きなコスト削減につながります。

土地の価値が向上する

大規模な土地は開発の可能性が広がり、合筆によって土地が大きくなることで価値が向上することが期待されます。特に都市部では、大きな区画が希少であるため、合筆により生まれた広い土地は高い価値を持つ傾向があります。また、形状が整うことで利便性も向上し、土地利用の効率が高まるため、地域全体の価値向上にも寄与する可能性があります。合筆は土地の価値を高めるだけでなく、地域にもプラスの影響を与えるでしょう。

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合筆登記の手続の流れや必要書類・費用

合筆登記の手続では、事前確認から登記完了証の受領までいくつかのステップがあります。また、手続を進めるにあたって特定の書類が必要となり、さまざまな費用が発生します。以下では、合筆登記の手続の流れ、必要な書類、そして関連する費用について詳しく解説します。

手続の流れ・必要書類

合筆登記は以下の手順で行われます。

  • 事前確認
  • 必要書類の準備
  • 合筆登記申請書の作成
  • 登記所への申請
  • 登記完了証の受領

事前確認では合筆可能か、制限がないかなどを確認します。先ほど説明したとおり、同一所有者の隣接地であることや、抵当権などの制限がないことなどが条件となります。合筆登記を申請する際は、以下の必要書類を用意します。

  • 登記済証
  • 印鑑登録証明書
  • 住民票
  • 委任状(土地家屋調査士に依頼する場合)

必要書類を準備したら、合筆登記申請書を作成します。法務局指定の様式に従い、合筆する土地の情報や所有者の詳細を記入します。作成した申請書に必要書類を添えて、管轄の法務局(登記所)に申請します。審査後問題がなければ合筆登記が完了し、登記完了証を受領したら手続はすべて完了です。

費用

合筆登記に関わる主要な費用項目について、その概要と具体的な金額を説明します。また、各費用の詳細や適用条件についても触れます。下記は一覧表になりますが

登録免許税

登録免許税の税額は、合筆後の土地一筆につき1000円です。この金額は法定で決まっており、合筆する土地の数や面積にかかわらず一律で適用されます。つまり、複数の土地を1つの土地に合筆する場合でも最終的に一筆の土地になるため、登録免許税は変わらず1000円になるということです。

登録免許税は合筆登記の申請時に納付する必要があり、登記申請書に収入印紙を貼付する形で支払いを行います。

専門家へ依頼する場合の報酬

合筆登記は専門家に依頼できますが、その場合には専門家へ支払う報酬が発生します。一般的には二筆以上の土地を一筆にする場合に5~6万円程度かかりますが、合筆登記をする土地の特定が困難な場合や登記官の現地調査がある場合などは、費用が高くなる傾向があります。

合筆登記は「表示に関する登記」に分類されるため、司法書士の業務範囲外であり、土地家屋調査士でなければ代理申請ができません。もっとも、合筆登記と合わせて権利に関する登記が必要な場合、土地家屋調査士と司法書士が連携して登記手続を行うこともあります。

公図・地積測量図などの書類取得費用および手数料

公図と地積測量図は、合筆登記において土地の正確な位置、形状、境界を特定するために必要な場合があります。公図や地積測量図があると合筆される土地の範囲が明確になり、登記後の混乱や争いを防げます。以下は書類取得などの手数料一覧です。

登記申請手数料

  • 窓口申請:土地1筆につき600円
  • オンライン申請:500円

公図・地積測量図

  • 土地1筆につき各500円程度

印鑑登録証明書の発行手数料

  • 窓口申請:450円
  • オンライン申請:410円

手続は自分できる?

土地の地積測量図や登録免許税の支払いなどを、すべて自分で合筆登記を行うことは可能です。ただし、合筆を考えている土地に対してできるか否かの判断は、専門家でないと非常に難しいです。手続に関する内容をすべて網羅しているという場合を除き、土地家屋調査士や司法書士などに相談することをおすすめします。

合筆登記の注意点

合筆登記は適切に行えば土地の管理や活用に大きなメリットをもたらす一方で、不適切な合筆はさまざまな問題を引き起こす可能性があります。合筆登記を検討する際に特に注意すべき重要なポイントを紹介するので、これらの点に留意し、スムーズで効果的な合筆登記を実現しましょう。

合筆可能か事前確認を徹底する

合筆登記を行う前に、合筆登記ができないケースに該当しないかを十分に確認することが重要です。土地の接続状況、地目、所有権の状況、既存の権利設定などを詳細にチェックしましょう。事前に法務局で登記簿を確認したり、専門家に相談したりすることで、思わぬトラブルを防ぐことができます。

費用対効果を慎重に検討する

合筆登記にはさまざまな費用がかかります。登録免許税、専門家への報酬、必要書類の取得費用などを総合的に考慮し、合筆によるメリットがこれらの費用を上回るかどうかを慎重に判断しましょう。固定資産税の軽減や管理の効率化、土地の有効活用による収益増などのメリットを具体的に試算し、長期的な視点で費用対効果を検討することが大切です。

共有者全員の同意が必要

合筆登記は一部の共有者だけでは申請できないので、すべての共有者の同意を得ることが不可欠です。共有者間で合意形成を図り、全員の協力を得られるかを確認しましょう。特に共有者が多数いる場合や、共有者間で意見の相違がある場合、合意形成に時間がかかることがあります。早い段階から共有者全員と連絡を取り、合筆の目的や手続について十分に説明して理解を得ることが重要です。

複雑な登記手続は専門家に相談しましょう

合筆登記は複数の土地を1つにまとめる手続であり、土地の管理効率化や有効活用につながります。合筆によって固定資産税の納付や維持管理の手間が減少し、大規模な土地利用が可能になることで価値向上の可能性も高まるといったメリットがあります。しかし、合筆には法的制限があり、すべての土地が対象となるわけではありません。また、登録免許税や専門家への報酬など、一定の費用も発生します。

合筆を行うか否かの判断や手続の複雑さを考慮すると、独自に進めるのは困難です。そのため、土地家屋調査士や司法書士といった専門家に相談し、登記手続を依頼することをおすすめします。専門家の助言を得ることで、スムーズな手続と適切な土地活用が実現できます。

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記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載