【パターン別雛形あり】遺産分割協議書は自分で作れる?法務局の雛形や作成方法について解説!

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遺産分割協議書とは

遺産分割協議書は、相続人全員で話し合った結果に基づいて、被相続人の財産をどのように分けるかを取り決める書面です。当然に相続人全員の共有となる相続財産は、有効な遺言書がない場合、協議のうえで分割方法を決めなくてはなりません。遺産分割協議の内容を文書化したものが、遺産分割協議書と呼ばれる書面です。

遺産分割協議書の役割

遺産分割協議書は、各相続人が取得する財産の範囲を特定することで、2つの役割を果たします。手続上必要なときに遺産分割の内容を証明する役割と、協議の結果について後日起こり得るトラブルを防ぐ役割です。預貯金の名義変更や、不動産の相続登記(相続を原因とする所有権移転登記や不動産の名義変更とも)など、相続に伴う手続では、各所で遺産分割協議書の提出を求められます

本文はすべてワープロソフトで作成する

遺産分割協議書の本文は、すべてワープロソフトを使っての作成がおすすめです。手書きだと、文字が読みづらかったり、誤字脱字などがあると、内容が不明確になるおそれがあります。書き直しや複数部数の作成でも何かと不都合が感じることが多いと思われます。

ワープロソフトで作成して印刷した遺産分割協議書なら、間違いや過不足などにより内容に疑義が生じるリスクはほとんどありません。印刷物に署名押印するまでのあいだは、修正・加筆も容易です。複数部数の作成も簡単であり、各所で原本提出が求められる相続手続では好都合と言えます。

作成した遺産分割協議書の用途・提出先

遺産分割協議書の主な用途は、金融機関での預貯金の払い戻し、そのほか証券などの預かり物の移管、不動産の相続登記などです。預貯金の払い戻しでは、誰にどの割合で払い戻すべきか示すため、金融機関に遺産分割協議書を提出する必要があります。不動産の相続登記でも、同じ目的で法務局に遺産分割協議書を提出します。ほかに、相続税を申告するときも、各人の相続税額を計算するための参考資料として提出しなければなりません。

書面の雛形は法務局や国税庁で入手可能

相続手続で提出を求める兼ね合いで、法務局や国税庁では、遺産分割協議書の雛形が公開されています。法務局が公開する雛形は、不動産の分割について簡潔に記載できるようになっているのに対し、国税庁が公開するものは、土地・建物以外の財産も含めて縦書きで記載できるようになっています。

実際に作成する遺産分割協議書の土台として用いられることが多いのは、法務局が公開するものです。相続登記を促すため、横書きで比較的内容がわかりやすく、不動産以外にも預貯金や証券などの分割にあたって取り回しの効く文面が用いられているのが特徴です。

【法務局で公開している遺産分割協議書の例】

法務局で公開している遺産分割協議書の例_イメージ

※引用:登記申請手続のご案内 │法務局

【国税庁で公開している遺産分割協議書の例】

【国税庁で公開している遺産分割協議書の例】_イメージ

※引用:相続税の申告書の記載例│国税庁

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【雛形あり】ケース別遺産分割協議書

遺産分割協議書は、書式や雛形にこだわらず、それぞれの事例に合わせて必要な内容を盛り込む必要があります。法務局などで公開される遺産分割協議書のイメージは、単純すぎたり、反対に内容が複雑すぎたりして、利用しにくい場合があるでしょう。

ここでは難しい不動産の分割方法を中心に据えて、よくある家族構成(配偶者と子2人の計3人)で遺産分割協議書の雛形を紹介します。紹介するケースは、以下のとおりです。

  • 不動産を現物分割するケース
  • 配偶者居住権を設定するケース
  • 不動産を代償分割するケース
  • 不動産を換価分割するケース

それぞれの遺産分割協議書は、最終的に、相続登記のため法務局に提出することになります。法務局が公開する雛形は確認する限り、法定相続(民法で定められた割合で不動産を共有する方法)しかありません。ほかの分割方法を採用する場合は、以降の遺産分割協議書を参考にしてください。

不動産を現物分割するケース

土地や建物は特定の人が単独でもらい受け、不動産以外の財産はほかの人が取得するような分割方法は、ほかの不動産の分割方法と対比するときに「現物分割」と呼ばれます。

現物分割では、遺産分割協議書を「各財産を取得する人+財産の特定」を1つの単位として章立て、それぞれ明確に記載することが大切です。誰が・どの財産を取得するか以外の情報の書き方にも着目しながら、遺産分割協議書の雛形を確認してみましょう。

遺産分割協議書



被相続人  甲野太郎

 生年月日   昭和〇年〇月〇日

 死亡年月日  令和
 本籍地    〇〇〇〇〇〇 丁目
 最後の住所地  丁目



被相続人甲野太郎の遺産につき、相続人の妻甲野花子(昭和〇年〇月〇日生)、相続人の長男甲野一郎(昭和〇年〇月〇日生)、相続人の次男甲野二郎(平成〇年〇月〇日生)の全員で遺産分割協議を行った結果、以下の通り分割することに合意した。なお、相続人は上記及び末尾記載の者以外に存在しない。


1.下記の不動産は、甲野花子が取得する。

(1)土地
所  在   〇〇〇〇 丁目
地  番   
地  目   宅地
地  積   〇〇.〇〇平方メートル

(2)建物
所  在   〇〇〇〇〇〇 〇〇番地
家屋番号   
種  類   居宅
構  造   木造瓦葺2階建
床  面  積
1階部分 〇〇平方メートル
2階部分 〇〇〇〇平方メートル


2.下記の預貯金及びその一切の果実は、甲野一郎が取得する。

〇〇銀行〇〇支店
定期預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
口座名義人 甲野太郎

〇〇銀行支店
普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
口座名義人 甲野太郎


3.以下の有価証券及びその一切の果実は、甲野二郎が取得する。

〇〇株式会社
株式1000株
口座名義人 甲野太郎

〇〇株式会社
株式500株
口座名義人 甲野太郎


4.上記以外の被相続人にかかる遺産が新たに発見された場合、甲野花子が相続することに合意した。

以上の通り、相続人全員による遺産分割についての合意が成立したため、本協議書を3通作成し、各相続人が署名押印のうえそれぞれ1通ずつ所持する。


令和

相続人 甲野花子(配偶者)
住所 〇〇丁目
署名・実印

相続人 甲野一郎(長男)
住所 〇丁目
署名・実印

相続人 甲野二郎(次男)
住所 〇〇〇〇丁目
署名・実印

配偶者居住権を設定するケースの雛形

配偶者居住権とは、被相続人の妻または夫につき、相続開始時に被相続人所有の建物に無償で住み続けられるものとする権利です。不動産が遺産分割の対象になることで、上記のような高齢の遺族が住まいを失う可能性があることから、民法改正により新たに権利設定できるようになりました。

配偶者以外の人が不動産を取得するに伴い、配偶者居住権を設定しようとする場合には、遺産分割協議書にその旨を明記します。このとき、建物の表示とともに、居住権の存続期間を定めましょう。定めることのできる最長期間は「終身」で、この雛形でも最長期間を採用しています。

遺産分割協議書



被相続人   甲野太郎
 生年月日   昭和〇年〇月〇日
 死亡年月日  令和〇年〇月〇日
 本籍地    〇〇県〇〇市〇〇 〇丁目〇番
 最後の住所地 〇〇県〇〇市〇〇 〇丁目〇番〇号


被相続人甲野太郎の遺産につき、相続人の妻甲野花子(昭和〇年〇月〇日生)、相続人の長男甲野一郎(昭和〇年〇月〇日生)、相続人の次男甲野二郎(平成〇年〇月〇日生)の全員で遺産分割協議を行った結果、以下の通り分割することに合意した。なお、相続人は上記及び末尾記載の者以外に存在しない。


1.下記の不動産は、甲野一郎が取得する。

(1)土地
所  在   〇〇県〇〇市〇〇 〇丁目
地  番   〇〇番〇
地  目   宅地
地  積   〇〇.〇〇平方メートル

(2)建物
所  在   〇〇県〇〇市〇〇 〇〇番地〇
家屋番号   〇〇番〇
種  類   居宅
構  造   木造瓦葺2階建
床  面  積
1階部分 〇〇.〇〇平方メートル
2階部分 〇〇.〇〇平方メートル

(3)動産
上記(2)内にある一切の動産


2.被相続人の妻である甲野花子は、相続開始時に居住していた前項(2)の建物の配偶者居住権を取得する。その存続期間は、本遺産分割協議成立日から甲野花子の死亡時までとする。


3.下記の預貯金及びその一切の果実は、甲野花子および甲野二郎が、それぞれ2分の1ずつ取得するものとする。

〇〇銀行〇〇支店
定期預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
口座名義人 甲野太郎

〇〇銀行〇〇支店
普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
口座名義人 甲野太郎


以上の通り、相続人全員による遺産分割についての合意が成立したため、本協議書を3通作成し、各相続人が署名押印のうえそれぞれ1通ずつ所持する。


令和〇年〇月〇日

相続人 甲野花子(配偶者)
住所 〇〇県〇〇市〇丁目〇番〇号
署名・実印

相続人 甲野一郎(長男)
住所 〇〇県〇〇市〇丁目〇番〇号
署名・実印

相続人 甲野二郎(次男)
住所 〇〇県〇〇市〇丁目〇番〇号
署名・実印

不動産を代償分割するケースの雛形

代償分割とは、相続財産の一部を単独または複数の相続人が取得し、その代償として金銭などをほかの相続人に支払う方法です。「預貯金などの財産が少ない・ほとんどない」などの理由で不動産を分割対象とせざるを得ない場合に用いられます。

代償分割を行う際の遺産分割協議書では、誰がどの財産を取得し、その代償としていくら支払うかを明確に定めます。支払期限も具体的に記載しましょう。ここで紹介する雛形では、2項による預貯金の取得に関する指定を挟み、第1項・第3項・第4項で代償分割について定めています。

遺産分割協議書



被相続人   甲野太郎
 生年月日   昭和〇年〇月〇日
 死亡年月日  令和〇年〇月〇日
 本籍地    〇〇県〇〇市〇〇 〇丁目〇番
 最後の住所地 〇〇県〇〇市〇〇 〇丁目〇番〇号


被相続人甲野太郎の遺産につき、相続人の妻甲野花子(昭和〇年〇月〇日生)、相続人の長男甲野一郎(昭和〇年〇月〇日生)、相続人の次男甲野二郎(平成〇年〇月〇日生)の全員で遺産分割協議を行った結果、以下の通り分割することに合意した。なお、相続人は上記及び末尾記載の者以外に存在しない。


1.下記の不動産は、甲野花子が取得する。

(1)土地
所  在   〇〇県〇〇市〇〇 〇丁目
地  番   〇〇番〇
地  目   宅地
地  積   〇〇.〇〇平方メートル

(2)建物
所  在   〇〇県〇〇市〇〇 〇〇番地〇
家屋番号   〇〇番〇
種  類   居宅
構  造   木造瓦葺2階建
床  面  積
1階部分 〇〇.〇〇平方メートル
2階部分 〇〇.〇〇平方メートル

(3)動産
上記(2)内にある一切の動産


2.下記の預貯金及びその一切の果実は、甲野花子、甲野一郎および甲野二郎が、それぞれ3分の1ずつ取得するものとする。

〇〇銀行〇〇支店
定期預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
口座名義人 甲野太郎
 
〇〇銀行〇〇支店
普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
口座名義人 甲野太郎


3.甲野花子は、第1項に記載する不動産取得の代償として、甲野一郎に対し金〇〇万円を、甲野二郎に対し金〇〇万円を、それぞれ支払うものとする。


4.第3項にある支払い期限は、それぞれ令和〇年〇月〇日とする。


以上の通り、相続人全員による遺産分割についての合意が成立したため、本協議書を3通作成し、各相続人が署名押印のうえそれぞれ1通ずつ所持する。 


令和〇年〇月〇日

相続人 甲野花子(配偶者)
住所 〇〇県〇〇市〇丁目〇番〇号
署名・実印

相続人 甲野一郎(長男)
住所 〇〇県〇〇市〇丁目〇番〇号
署名・実印

相続人 甲野二郎(次男)
住所 〇〇県〇〇市〇丁目〇番〇号
署名・実印

不動産を換価分割するケースの雛形

換価分割とは、遺産分割の対象となる財産を売却し、その売却代金を相続人間で分配する方法です。現物分割が難しい場合や、相続人全員が現金での取得を希望する場合などに用いられます。

換価分割を行う場合の遺産分割協議書では、売却の対象となる財産と売却方法、費用の負担割合、売却代金の分配方法などを取り決めます。売却手続の代表者を定め、適正な価格での売却に努める旨なども記載しておくと良いでしょう。

遺産分割協議書



被相続人   甲野太郎
 生年月日   昭和〇年〇月〇日
 死亡年月日  令和〇年〇月〇日
 本籍地    〇〇県〇〇市〇〇 〇丁目〇番
 最後の住所地 〇〇県〇〇市〇〇 〇丁目〇番〇号


被相続人甲野太郎の遺産につき、相続人の妻甲野花子(昭和〇年〇月〇日生)、相続人の長男甲野一郎(昭和〇年〇月〇日生)、相続人の次男甲野二郎(平成〇年〇月〇日生)の全員で遺産分割協議を行った結果、以下の通り分割することに合意した。なお、相続人は上記及び末尾記載の者以外に存在しない。


1.下記の不動産は、売却し、その売買代金から売却に要する一切の費用を控除した残金を、分割の対象とする。売却にあたっては、甲野一郎が代表して手続を行うものとする。

(1)土地
所  在   〇〇県〇〇市〇〇 〇丁目
地  番   〇〇番〇
地  目   宅地
地  積   〇〇.〇〇平方メートル

(2)建物
所  在   〇〇県〇〇市〇〇 〇〇番地〇
家屋番号   〇〇番〇
種  類   居宅
構  造   木造瓦葺2階建
床  面  積
1階部分 〇〇.〇〇平方メートル
2階部分 〇〇.〇〇平方メートル


2.第1項の残金につき、甲野花子、甲野一郎および甲野二郎が、それぞれ3分の1の割合で取得する。


3.第1項の売却手続にあたり、甲野花子、甲野一郎および甲野二郎は、対象の不動産を売却し買主に引き渡すまで、これを共同で管理するものとする。その管理費用は、第2項に定める割合に従って負担する。


~預貯金そのほかの遺産の分割方法は省略~


以上の通り、相続人全員による遺産分割についての合意が成立したため、本協議書を3通作成し、各相続人が署名押印のうえそれぞれ1通ずつ所持する。 


令和〇年〇月〇日

相続人 甲野花子(配偶者)
住所 〇〇県〇〇市〇丁目〇番〇号
署名・実印

相続人 甲野一郎(長男)
住所 〇〇県〇〇市〇丁目〇番〇号
署名・実印

相続人 甲野二郎(次男)
住所 〇〇県〇〇市〇丁目〇番〇号
署名・実印

遺産分割協議書は雛形があれば自分で作れる?

遺産分割協議書は雛形があれば自分で作れる?_イメージ

遺産分割協議書の作成にあたっては、法務局や国税庁などが提供する雛形を参考にすることができます。しかし、雛形はあくまで参考例であり、そのまま使用できるケースは限られています。遺産分割協議書は、相続財産の内容や相続人間の関係性などを踏まえ、個々の事情に即した内容で作成する必要があるためです。

自力でスムーズに作成できるケースは限られる

遺産分割協議書を自力で作成することが可能なケースもありますが、それは比較的単純な事案に限られます。たとえば、以下のような場合は、雛形を参考に自力での作成が検討できるでしょう。

  • 相続人の数および相続財産の構成資産の数が少ない
  • 相続人全員の関係性が良好で、遺産分割の方針について合意ができている
  • 相続財産の評価が明確で、相続人間の取得割合に争いがない

ただし、自力での作成には時間がかかるうえ、専門的な知識が必要とされます。司法書士や弁護士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

時間がかかる・誤りがある場合のリスク

遺産分割協議書の作成を自力で行う場合、時間がかかることによる不利益を被るかもしれません。書面の作成が遅れ、預貯金の払い戻しや相続登記のスケジュールに影響すると、そのあとの生活資金の計画や土地活用の計画にも悪影響が及びます。

また、遺産分割協議書の内容に誤りや漏れがあると、後にトラブルに発展しかねません。万が一、相続人のあいだでトラブルが起きたときは、家族関係の悪化だけでなく、手続の長期化や費用負担の増大を招くでしょう。

「知識不足で時間も足りない」「正確に遺産分割協議書を作成できるか自信がない」といった場合には、専門家に依頼するのが賢明です

専門家に作成依頼した方が良い場合とは

遺産分割協議書の作成は、最初から「司法書士や弁護士などの専門家に依頼すべき」と判断できる場合が多くあります。具体的には、次のような場合です。

  • 相続人が多数いる
  • 相続人の中に行方不明者がいる
  • 相続人に未成年者や認知症の人がいる
  • 被相続人に多額の債務がある
  • 相続財産に複雑な資産(不動産、有価証券、自営業の事業など)が含まれる
  • 相続人間で遺産分割の方針について意見が対立している

相続人に未成年者や認知症の人、あるいは行方不明者がいる場合は、特別代理人や不在者財産管理人などの制度利用を検討する必要があるかもしれません。債務や複雑な財産については、税務処理も含め、家業そのほかの活動に影響しないよう、慎重に取り扱う必要があります。相続人同士の意見対立があるときも、慎重な対応が求められるでしょう。

当てはまるケースでは、無理に自分で遺産分割協議書を作成すると、後日無効になってしまう可能性が大きいと言わざるを得ません。速やかに専門家に相談するよう意識しましょう。

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遺産分割協議書を作成するときの注意点

遺産分割協議書の作成にあたっては、いくつかの重要なポイントに注意が必要です。ここでは、遺産分割協議書を作成する際の注意点について説明するとともに、よくある質問にお答えします。遺産分割協議書は、相続人全員の合意に基づく大切な書面です。内容の曖昧さは、後々のトラブルの原因になりかねません。各相続人が署名・押印することで正式な合意となる文書だからこそ、しっかりとした内容で作成したいものです。

曖昧な表現を避ける

遺産分割協議書では、曖昧な表現は避ける必要があります。遺産の特定、相続人の特定、遺産の取り分の特定については、具体的な記載を心がけましょう。たとえば「〇〇さんの所有していた不動産」という表現では、どの不動産を指すのか特定できません。登記簿謄本に基づき、「〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地の土地及び同番地に存する家屋」のように記載します。

また「〇〇さんの子ども」という表現も、法律上の子か認知した子かなど、誤解を招く可能性があります。戸籍謄本に基づき、「被相続人の長男〇〇」と記載するなどの工夫が必要です。法的効力に影響を及ぼしかねない以下のような表現も避けたいものです。

そのほかにも、次のような表現にも注意を払いましょう。

  • 預金は〇〇が相続する→預金額が特定されていない
  • 葬儀代は〇〇が負担した→葬儀代の金額が不明確
  • 遺産分割の方法は〇〇に一任する→具体的な分割内容が記載されていない

相続人全員分の署名押印を揃える

遺産分割協議書には、相続人の署名押印が必要不可欠であり、押印に関しては本人が行う必要があります。代理人による署名押印は近親者であったとしても認められません。もっとも重要なのは、相続人全員分の署名押印が揃っていなければならない点です。

相続人のなかに「連絡がとれない」などの理由で署名などに協力してくれない人がいる場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる方法があります。家庭裁判所の調停で合意に至らない場合は、家事審判や遺産分割審判の手続に移行します。話し合いでの解決が難しい場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

遺産分割協議書の作成は司法書士に相談を

遺産分割協議書は、遺産分割を円滑に進めるための重要な書類です。法務局や国税庁が提供する雛形を参考にしながら、相続人全員で話し合いを重ね、納得のいく内容で作成することが大切です。

ただし、遺産分割協議書の作成は、専門的な知識が必要とされる難しい作業でもあります。相続人が多数いる場合や、相続財産に複雑な資産が含まれる場合、相続人間で意見が対立している場合などは、自力での作成が難しいケースも少なくありません。

時間がかかったり、内容に誤りがあったりすると、後々のトラブルに発展しかねません。円滑な相続手続のためにも、司法書士などの専門家に相談し、アドバイスを受けながら進めることをおすすめします。

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記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載