相続登記をしないで不動産を売却する方法とは?売却までの手続を解説

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相続した不動産を売却するケースとは?

相続した不動産に関して、相続する際にすでに売却を視野に入れるケースも少なくありません。特に、相続後の維持管理や活用方法に課題を感じる場合、売却を選択肢の一つとして考えることが多くなります。まずは相続不動産の売却を検討することが一般的な主なケースについて紹介していきます。

不動産を相続したけれど利用する予定がないケース

不動産を相続したものの、遠方に住んでいるために利用できないというケースがあります。相続では遺産分割協議によって誰がどの相続財産を譲り受けるかを決めますが、資産価値が低く利用しにくい不動産の場合、誰も相続したがらないことも少なくありません。そのような不動産を相続した場合、結局うまく活用できずに放置されることがあるのです。

不動産は所有しているだけでも固定資産税がかかり、維持・管理のための手間や費用がかかるので、利用する予定がない不動産は売却されることもよくあります。

不動産を相続して換価分割による遺産分割を行うケース

資産価値の高い不動産を相続する場合、誰がその不動産を相続するかで揉めることもありますが、そういった場合は換価分割を行うことで解決できます。換価分割とは、不動産を売却して得た売却代金を相続人間で分配する遺産分割方法です。

不動産相続で折り合いがつかないとき、相続人間で不動産を共有するという手段もありますが、不動産の共有は管理や処分がしづらいのであまりおすすめされていません。共有の不動産はほかの共有者の同意がなければ賃貸や売却もできないため、結局不動産を活用できずに無駄になってしまうことがよくあります。

そのような事態を防ぐ手段として、換価分割は有効な不動産の分割方法であるといえるでしょう。

清算型遺贈が行われるケース

清算型遺贈とは、不動産を売却した代金を遺言で指定した相手に遺贈することです。たとえば、「不動産を売却し、売却した代金から諸経費を控除した残額を甲・乙に2分の1ずつ遺贈する」といった遺言があった場合、これは清算型遺贈にあたります。

自分の財産を譲り渡したい相手がいるものの、大きな資産が不動産しかなかった場合、ほかの相続人から不満が出る可能性があります。そういったときに清算型遺贈を活用すれば、ほかの相続人にも配慮した公平な分配を実現できるのです。

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相続登記を行っていない不動産は売却できる?

結論からお伝えすると、相続した不動産を売却するためには、まず相続登記を行い、相続人名義に変更する必要があります。なぜなら、民法177条により、不動産に関する権利は登記されていなければ第三者に対して主張できないからです。被相続人の名義のままでは、相続人がその不動産の所有者であることを証明できず、売却もできません。

不動産の登記は実態に即したものにする必要があり、被相続人から直接買主へ所有権移転登記を行うことは認められていません。したがって、相続した不動産を売却するには、必ず相続登記を先に行う必要があります。

他の相続人が売却をしてしまうリスク

不動産の売却を検討する際、相続人の中で誰かが自分の法定相続分に基づく共有持分を勝手に売却してしまうリスクがあります。

特に、共有持分を安く買い取る業者がいるため、他の相続人に対して不当な価格で売却を迫るケースもあります。このような事態を避けるためには、相続不動産を共有名義ではなく単独名義にするか、共有名義の場合は全員の合意のもとで売却を行う方向性を事前に相談しておくことが重要です。

早めに相続登記しておくことが大事

相続登記の手続には時間がかかる場合もあるので、早めに手続をしておくことが大事です。

たとえば、相続登記には戸籍関係の書類が必要ですが、戸籍を読むのに慣れていないとどこからどの戸籍を取り寄せればよいか判断に迷うことがあります。また、相続人が多い場合、戸籍謄本を取得するだけでも数か月かかってしまうことがあるでしょう。

また、相続登記は令和6年4月1日から義務化されました。義務化後は不動産を取得した相続人は3年以内に相続登記の申請をしなければならず、正当な理由なく申請を怠ると10万円以下の過料が科されるので、期限内に必ず手続をしておく必要があります。

もし相続登記の手続を自分で進めるのが難しい場合、司法書士に依頼して手続を任せるのもおすすめです。

不動産を売却するまでの流れ

相続した不動産を売却するまでの流れは、以下のとおりです。

  • 遺言書の有無を確認・遺産分割協議
  • 相続登記
  • 仲介業者へ依頼
  • 売買契約の締結

それぞれの内容について、以下で具体的に解説します。

遺言書の有無を確認・遺産分割協議

不動産相続が発生したら、まずは遺言書の有無を確認しましょう。遺言書があればその内容に従って不動産の相続人が決定します。遺言書は必ず家庭裁判所のもとで検認をしたうえで開封・確認をする必要があるので、遺言書を見つけても勝手に開封しないよう注意してください。

遺言書がなかった場合、相続人全員の遺産分割協議によって不動産の相続人を決定します。不動産を誰が相続するかが決まったら遺産分割協議書を作成し、その結果を協議書に記します。遺産分割協議の主な流れは以下のとおりです。

遺産分割協議の流れ

  • 法定相続人と相続分の確認
  • 財産目録の作成
  • 遺産分割協議
  • 遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書の記載内容

  • 被相続人の最後の住所・氏名・死亡日
  • 相続人全員が協議した内容に合意している旨
  • 具体的な相続財産の分割内容
  • 相続人全員の住所・氏名・押印(実印)

財産目録は、すべての相続財産をまとめた一覧表です。作成は必須ではありませんが、スムーズな相続手続には重要な書類となります。目録をもとに財産の分割を決定し、協議内容を遺産分割協議書に記載します。相続人全員が署名・押印し、印鑑証明書を添付すれば手続が完了します。

遺産分割協議書の形式は自由で、手書きでもパソコンでも作成可能ですが、ひな形は法務局から入手できます。また、相続税の申告・納税は、相続開始から10か月以内に行う必要があるため、早めに協議を進めることが大切です。

もし遺産分割協議では不動産の相続人を決められない場合、調停や審判を行うことも可能です。

相続登記

遺言書や遺産分割協議によって不動産を相続する人が決まったら、相続登記手続によって名義変更をします。相続登記を行う際は、必要書類を集めて登記申請書とともに法務局へ提出します。

申請が終わると基本的には1週間程度で手続が完了しますが、書類に不備や不足があると補正や再提出が必要になり、手続に要する時間が長くなるので注意しましょう。相続登記は必要書類や手続が複雑なケースもあるため、不安がある場合には司法書士などの専門家に依頼するのもおすすめです。

以下は、遺産分割協議書による相続登記で必要になる主な書類一覧です。

  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑登録証明書
  • 不動産の固定資産評価証明書
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産を取得する相続人の住民票または戸籍の附票
  • 不動産の固定資産評価証明書
  • 相続関係説明図

上記に加えて、登録免許税が必要になります。その費用は「不動産評価額×0.4%」で求めることができます。なお、相続人が相続登記を行う前に亡くなった、不動産の評価額が100万円以下である、というケースの場合、登録免許税が令和7年3月31日まで免税されます

不動産仲介業者へ依頼

仲介業者に依頼して売却手続を進めます。依頼すれば、広告や自社のネットワークを活用して幅広い販売活動をしてもらえます。もし依頼をしない場合、契約後にトラブルが発生した場合などは自分で対処しなければなりません。このようなデメリットを考慮すると、不動産を取り扱う経験がある場合などを除き、基本的には不動産仲介会社に依頼するのが無難でしょう。

依頼後は、不動産会社との間で媒介契約を結び、売却が成立したら不動産会社に報酬を支払います。売却活動は不動産会社主導で進めることになります。売り出し価格を決め、買主を募集し、申し込みを受けた中から購入者を決定します。

売買契約の締結

買主が決定したら、不動産会社が買主の住宅ローン審査などを行い、売主と買主が条件に合意したうえで売買契約を締結します。契約書を取り交わすと契約書の内容に従って売主・買主双方が履行義務を負い、トラブルが生じた場合は契約書の内容に基づいて紛争を処理します。そのため、契約書を作成したらその内容を十分に理解しておくことが重要です。

契約時には、不動産会社から買主に対して重要事項説明があり、説明が終わると売主・買主双方が合意のうえで署名・捺印を行います。そして、売買契約が成立した時点で売主には物件の所有権を移転する義務が、買主には代金を支払う義務がそれぞれ生じます。

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相続した不動産を早く売却するためのポイント

相続した不動産を早く売却するためのポイント_イメージ

相続した不動産を早く売却するためには、相続登記を完了させることが必要不可欠です。どんなに急いでも、登記が完了しなければ売却することはできません。そこで、少しでも早く不動産を売却したい方に向けて、手続の進め方や注意すべきポイントを以下で解説します。効率的に進めるために、これらの点を押さえておきましょう。

売却予定の不動産を優先して遺産分割協議を行う

遺産分割協議では、すべての相続財産について話し合うのが一般的ですが、不動産に関する協議だけを優先して進めることも可能です。遺産分割協議は複数回に分けて行うことができ、不動産のみを記載した遺産分割協議書も法務局で有効とされます。特に、相続財産が多く分割方法で揉めている場合は、不動産に関する協議を先に進めることで、売却までの時間を短縮できます。

相続登記の手続を司法書士へ依頼する

相続登記をスムーズに進めるためには、司法書士に依頼するのが最適です。相続登記の手続は相続人自身でも行えますが、登記申請書なの作成には時間と手間がかかります。さらに、書類に不備があった場合、登記官の指示に従って補正(修正)する必要があります。

一方で、司法書士に依頼すれば、手続に不備が少なくなり、短期間で受理される可能性が高まります。また、司法書士は相続登記だけでなく、その他の相続手続全体を迅速に進めることができます。相続登記が完了しない限り不動産の売却はできないため、自身の手続に不安がある場合は早めに司法書士へ依頼して、売却までの時間を短縮することが重要です。

相続登記前でも売却の依頼をすることは可能

相続登記をしなければ不動産を売却できないことは前述のとおりですが、相続登記未了の状態でも仲介業者に対して売却を依頼することは可能です。不動産を売却する場合、基本的には仲介業者に依頼することになるので、相続登記手続の進行と同時に仲介業者への依頼も進めるとよいでしょう。

このような場合、買主が見つかってから契約が完了するまでの間に相続登記を済ませれば問題はありません。ただし、手続に手間取って契約までに相続登記が終わらない場合もあるので、注意が必要です。

不動産を売却する場合の注意点

相続した不動産を売却する場合の注意点として、以下の3点を紹介します。思わぬトラブルにあわないように、これらの注意点も頭に入れておきましょう。

代表相続人は信頼できる相続人を選ぶ

相続した不動産を売却する方法として、相続人の中から代表相続人を選んで名義変更をし、そのあとで売却するという方法があります。このように代表相続人を選ぶ際は、できるだけ信頼できる相続人を選んで名義変更を行いましょう。

相続登記や不動産の売却手続は、登記名義人となる相続人が中心となって行う必要がありますが、これらの手続には手間と労力がかかります。そのため仕事の都合などで動きにくい相続人を名義人にしてしまうと、売却までに時間がかかってしまう可能性があります。

もし手続を途中で放棄されてしまうと売却ができなくなってしまうので、そのようなことにならないために、代表相続人には信頼できて比較的時間の余裕がある人を選ぶことが重要です。

不動産売却にかかる税金は相続人全員で支払う

不動産を相続して売却する際は、登録免許税、印紙税、譲渡所得課税などの税金がかかりますが、これらの税金は相続人全員で負担します。

登録免許税・印紙税は相続登記の際に支払うため、金額の合計を相続人の持分割合に応じて負担するなどの方法をとるとよいでしょう。譲渡所得税は、それぞれの相続人が自身で確定申告を行うことで納税します。

不動産の売却には相続人全員の同意が必要

共有名義の不動産を売却する際は、共有者全員から売却する旨と売却価格についての同意が必要です。売却すること自体には同意が得られても、売却価格について折り合いがつかないというケースもあります。

また、売却価格については購入者との交渉もあるので、相続人間で最低売却価格を決めておくと、購入希望者から値引き要請があったときもスムーズに意思決定できます。

司法書士に依頼して確実かつスムーズな相続登記を

相続した不動産を売却する際は、相続登記手続をすることで名義変更を完了しておく必要があります。相続登記の申請が義務化されたので、できるだけ早めに手続を済ませておくことをおすすめします。

相続登記手続の必要書類の収集・作成は、慣れていないと手間がかかるうえに、不備や不足によって申請が通らない場合もあります。もし手続に不安な点があれば、司法書士に手続の代行を依頼するのがおすすめです。

相続登記を専門とする司法書士であれば、スムーズかつ確実に相続登記手続を済ませることができます。

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記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載