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長期間相続登記等がされていないことの通知とは
「長期間相続登記等がされていないことの通知」とは、登記名義人が亡くなったあと長期間にわたって相続登記されずに放置されている土地の法定相続人に対し、相続登記を行うよう促す通知です。本通知は、各地域の法務局から送付されます。そのため、通知に記載された内容は正式なものであり、詐欺などが疑われるような信憑性の低いものではないためご安心ください。
通知には長期間にわたり相続登記等がされていない旨の記載のほか、土地を特定する情報や登記上の所有者などが記載されています。
通知が送付されるようになった背景
通知が送付されるようになった背景には、所有者不明土地の増加という社会問題が背後にあります。これまで相続登記は義務ではなかったため、土地の所有権の登記名義人が亡くなったあとに相続登記の手続がされない「所有者不明土地」が増加しました。このような所有者不明土地は、周辺の環境悪化や民間取引・公共事業の阻害を招く原因となり、対策が必要とされています。
そこで、全国の法務局が不動産登記簿の情報をもとに長期間相続登記が行われていない土地を調査し、その土地の所有者の法定相続人を探索しました。そして、その探索結果を所有権の登記に付記し、相続人宛てに通知を送付することとなったのです。
登記簿に付記される内容
登記簿の所有権の登記に付記されるのは、作業の対象土地であることを表す「長期間相続登記等未了である旨」のほか、整理番号としての「法定相続人情報の作成番号」です。法定相続人情報の作成番号があると、相続登記の必要書類が少なく済むため手続の負担が軽減されるというメリットがあります。これについてはのちほど詳しく解説します。
通知が届いたらどうすればよい?放置するとどうなる?
通知が届いたらどうすべきか、もし何もせずに放置しておくとどうなるのかなどについて解説します。相続登記は令和6年4月1日から義務化されることが決定しているので、その点も見据えて具体的な対策を知っておきましょう。
通知が届いたときにすべきこと
通知が届いたら、相続登記の手続を行う必要があります。法定相続人の探索結果が所有権の登記に付記されると説明しましたが、これだけでは所有権の移転登記が行われたことにはならないので、自分で相続登記手続をしなければなりません。相続登記が完了すると、「長期間相続登記等未了である旨」と「法定相続人情報の作成番号」の付記登記は職権で抹消されます。
相続登記手続には基本的に遺産分割協議書が必要なので、遺産分割協議がまだ成立していない場合には先に遺産分割協議を成立させましょう。
法務局が調査した法定相続人情報には相続人の氏名と住所が記載されており、法定相続人情報は全国の法務局の窓口、または郵送にて無料で提供を受けられます。この法定相続人情報を活用することで、相続人全員と連絡を取って遺産分割協議を円滑に始めることが可能です。
相続登記せずに放置しておくとどうなる?
通知自体に強制力はないので、通知を無視したとしても法律上の罰則があるわけではありません。ただし、令和6年4月1日からは相続登記が義務化されたため、通知の有無にかかわらず相続登記の手続を行う必要があります。
具体的には、不動産を取得した相続人は所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならず、正当な理由なく申請義務に違反した場合には10万円以下の過料が科されます。相続登記の猶予期間は「通知が届いてから3年以内」ではなく、「相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」なので、この点は注意しましょう。
ほかにも相続登記を放置したままで複数回相続が発生すると、相続人調査や必要となる手続にかかるコストが増え、自分が亡くなったあとの後世にまで負担をかけることになります。また、相続登記が済んでいない不動産は権利関係が確定していないため、すぐに処分できません。
このように、相続登記せずに放置しておくとさまざまな弊害があるので、通知によって相続登記が未登記であることを知ったときは、できるだけ早めに手続を行うことをおすすめします。
通知が届いたあとに相続登記をする方法
通知が届いたら相続登記を行う必要がありますが、手続は通常の相続登記と基本的に変わりません。ここでは通知が届いた場合の相続登記の手続の流れについて、簡単に解説します。
申請人と管轄の確認
相続登記の申請人は、相続による名義変更によって不動産の所有者となった相続人です。不動産の所在地によって管轄の法務局が決められており、管轄を間違えると申請を受け付けてもらえないので注意してください。管轄は登記事項証明書に記載されているため、事前に確認したうえで申請を行いましょう。
登記申請書の作成
登記申請書は、相続登記の際に自分で作成して提出する書類です。登記の目的や登記の移転原因、課税価格、登録免許税、不動産の表示などの項目を記入したうえで申請を行います。
必要書類
相続登記の際に必要となる書類は、以下のとおりです。
- 遺産分割協議書
- 相続人の印鑑登録証明書
- 不動産相続人の住民票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 亡くなった方の住民票(除票)
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本
- 相続関係説明図
一般的な相続登記の必要書類は上記のとおりですが、次に説明するように通知がきている場合は一部の書類の提出を省略できるため、手続の手間が少なくて済みます。
通知がきている場合は必要書類を省略できる
通知に記載されている「法定相続人情報の作成番号」を提示することで、戸籍謄本や住民票に代えることができるとされています。これは、「長期間相続登記等未了である旨」や「法定相続人情報の作成番号」が登記に付記された時点で、相続人の調査が済んでいるためです。
複数の相続が関係する場合、戸籍謄本だけでも膨大な通数になることがあるので、戸籍謄本の収集を省略できると大幅に労力・費用が軽減されます。
注意点・知っておきたいこと
長期間相続登記等がされていないことの通知に関する注意点について、まとめました。相続登記の手続をするうえでも参考になるので、こちらの内容も理解しておきましょう。
通知が来るのは相続人の1人だけ
通知は法定相続人のなかから任意の1名に対して送付されるので、法定相続人であっても自分宛てに通知が届くとは限りません。通知が送付される相続人は、固定資産課税台帳上の納税義務者や土地の居住者などをもとにして決められます。
また逆に、もし自分宛てに通知がきたとしても、ほかの相続人は相続登記が未登記であることを知らない可能性があります。そのため、自分宛てに通知が来た場合にはまず相続登記をしなければならないことを相続人間で共有したうえで、遺産分割協議を進める必要があります。
相続放棄を済ませていても通知が届くことがある
相続放棄をしたことは戸籍や登記簿に反映されるわけではないので、相続放棄をしたとしても通知が届く場合があります。この場合、すでに相続放棄を済ませているのであれば相続登記をする必要はないので、電話などで通知の送り元である法務局にその旨を伝えましょう。法務局が連絡に基づいて相続放棄の事実を確認し、法定相続人情報を変更します。
また、相続放棄には相続を知った日から3か月以内という期限がありますが、期限内であれば通知が来たあとに相続放棄することも可能です。相続財産のなかに借金があるなどの理由により、相続してもかえってマイナスの財産が増えてしまう場合などは、通知がきたあとに相続放棄を検討してもよいでしょう。
法定相続人情報はほかの相続手続で使用できない
法定相続人情報を取得しても、ほかの相続手続で使用することはできません。法定相続人情報はあくまで相続登記の手続に使用する情報であり、ほかの手続で戸籍謄本や住民票が必要となった場合に代用できるものではないので、この点は注意してください。
通知がきた際の相続登記は司法書士にご相談を
「長期間相続登記等がされていないことの通知」を無視したとしても、法律上の罰則があるわけではありません。ただし相続登記が義務であることには変わりないので、通知を受けたら相続登記の手続を進める必要があります。
通知を受けた場合、全国の法務局で法定相続人情報を取得できます。法定相続人情報には法定相続人が一覧で表示されているため、遺産分割協議をスムーズにはじめられます。また、相続登記の際に必要となる書類も少なくなるので、通常の相続登記に比べて手続の負担は軽く済むでしょう。
通知を受けて相続登記をする場合、自分で相続登記の手続を行うこともできますが、確実かつスムーズに手続を行うには司法書士に依頼するのがおすすめです。司法書士であれば通知や相続登記に関して熟知しており、それぞれの状況に合わせて臨機応変に対応できるので、不安なことがあればぜひ一度司法書士へご相談ください。