土地の登記漏れがあった場合の対処や防止方法を解説

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登記漏れになりやすい不動産とは?

被相続人が所有するすべての不動産は、相続登記が必要です。しかしながら、時には見落とされて登記されない不動産もあります。登記漏れの不動産はあとから見つかると手続の負担が増えてしまうので、原因を知ることで漏れを防げるようにしましょう。登記漏れをしてしまいがちな不動産の例としては、以下のようなものがあります。

  • 前面道路部分
  • 敷地内にある建物が建っていない部分の土地
  • マンションの付属建物(物置、車庫、小屋など)
  • 敷地権登記がされていないマンションの敷地部分

これらについて、具体的にどのような特徴の不動産であるかを解説します。

なお、共有名義の不動産で別の共有者が管理しているような場合、相続しても遺産分割協議の際に失念して登記漏れしてしまうことがあるので、この点も注意してください。

前面道路部分

戸建ての建物に接した前面道路は、公道ではなく私道である場合があります。このような場合、私道全部の所有権を持っているかあるいは近隣と共有しているケースがありますが、道路部分は自分に所有権があるという認識がなく、登記が漏れていることがあるのです。

前面道路部分は、法務局で発行される公図をみると誰が所有者であるかを確認できます。所有者が都道府県・市町村などであれば公道ということなので、登記する必要はありません。一方、所有者が個人や民間企業などの場合、持分について登記が必要です。

敷地内にある建物が建っていない部分の土地

敷地内にある建物が建っていない部分の土地についても、登記が漏れることがあります。たとえば、遺産分割によって自分の土地になったと思っていたところ、実際には名義が被相続人のままになっていたというようなケースです。

マンションの付属建物(物置、車庫、小屋など)

付属建物は建物の従物であるとされており、建物が登記されれば附属建物が未登記でも登記の対抗力が及ぶため、登記手続がなされないままになっているケースがあります。

敷地権登記によって建物と土地が一体になっていても、附属建物について家屋番号を特定して登記簿謄本を取ろうとすると、その附属建物にも持分があったことが発覚することがあるのです。

敷地権登記がされていないマンションの敷地部分ほか

古いマンションのなかには敷地権登記がされておらず、建物の所有者が土地を共有している場合がありますが、敷地となる土地の筆数が多いと登記が漏れてしまうことがあります。

これと同じように、用水路や墓地・分譲地のごみ置き場なども共有しているケースがあり、そのような場合でも持分の登記漏れが生じやすいといえます。

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登記漏れを防ぐための確認方法

登記漏れを防ぐための方法がいくつかあるので、紹介します。

納税通知書を確認する

固定資産の税納税通知書には課税標準額、税率、税額、納期限のほか、所有不動産の情報が記載されています。ただし、非課税となる不動産は記載されていないので、固定資産税納税通知書のみでは情報として足りない場合があるので注意しましょう。

また、共有名義の納税通知書は共有者の1人にしか送付されないので、自分以外の人に届いている場合には内容を把握できません。納税通知書がどこに送付されたのかが不明であり、確認方法もわからない場合、司法書士に依頼して対応を任せるのがおすすめです。

権利書(登記識別情報通知)で確認する

権利書は正式名称を「登記済権利証」といい、登記官による「登記済」の押印によって不動産の権利者であることを証明する書類です。権利書は登記が終わったときに法務局から申請人に対して交付されます。

登記識別情報は、数字やアルファベットの組合せからなる12桁の符号で構成される情報ですが、送られてくる登記識別情報通知に私道部分を含めたすべての物件情報が記載されており、登記に関する確認にも役立ちます。

名寄帳で確認する

名寄帳とは、土地や家屋の情報を市区町村がまとめた一覧表のことです。名寄帳と似たものに固定資産課税台帳があり、どちらも不動産に関する情報が記載されているという点では共通していますが、固定資産課税台帳が一棟一筆ごとに記載されているのに対して名寄帳は所有者別にまとめられているという違いがあります。

名寄帳は、所有する不動産が所在する市区町村の役所で発行できます。複数の不動産を別の市区町村で所有している場合、それぞれの市区町村役場に請求しなければなりません。発行方法は自治体ごとに違うので、発行する際は管轄の役所に手続方法を確認しておきましょう。

名寄帳には未登記や非課税の不動産に関する情報も一覧となって記載されています。ただし、名寄帳は市区町村ごとに管理されているため、管理している自治体のものを確認しなければなりません。

漏れがあった場合の対処法

相続登記の手続において漏れがあった場合の対処法は、その原因によって異なります。以下では登記原因に分けて解説します。

遺産分割協議による登記

遺産分割協議書に基づいて登記を行った場合、まずは登記漏れの不動産に関する内容が記載されているかどうかを確認します。記載があれば、その内容に従って再度相続登記手続を行います。もっとも、当該不動産に関する明確な記載がなかったとしても、「その他の遺産があった場合、相続人〇〇がすべて取得する」といったような記載があれば、その記載に従って相続登記することも可能です。

もし、遺産分割協議書に当該不動産の記載がなく、その他遺産の取り決めについて触れていない場合は遺産分割協議書を改めて作り直す必要があります。

法定相続分での登記

相続財産のなかに複数の不動産があり、登記漏れがあった不動産以外については法定相続分の割合に応じて登記していた場合、登記漏れがあった不動産についても法定相続分に応じて登記するのが一般的です。

不動産を売却することも視野に入れると、持分の割合が法定相続分と同じ方が分配する金額を計算しやすいからです。

遺言による登記

遺産分割協議書による登記の場合と同じく、遺言書に登記漏れの不動産に関する記載があるかどうかによって手続が異なります。

遺言書に当該不動産に関する明確な記載がない場合も、「この遺言書に記載がない不動産は、相続人〇〇がすべて取得する」といったような記載があれば、それに従って登記が可能です。このような記載もない場合、遺産分割協議によって当該不動産の相続について話し合い、遺産分割協議書を作成しなければなりません。

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漏れがあった場合の注意点

登記漏れがあった際の注意点について解説します。手続を行う前に、一度チェックしておきましょう。

「未登記」の土地・建物について

相続登記はこれまで義務ではなかったため、現状では未登記の土地・建物が存在します。相続登記には手間と費用がかかる反面、これまでであれば登記せずとも罰則がなかったので、登記しないまま不動産が承継されることも少なくありませんでした。しかし、令和6年4月1日から相続登記が義務化されるため、今後は土地や建物を未登記のままにしておくことはできません。

ほかにも、未登記のままでは売却が難しい、住宅ローンを組めない、二重譲渡などがあっても第三者に対して所有権を主張できないといった問題点もあるので、未登記の土地や建物を相続したらできるだけ早く相続登記することをおすすめします。未登記のままでも固定資産税が課税されるので、そのまま放置しておいてもメリットはありません。

なお、三井住友トラスト・資産の未来研究所が行った2022年の調査によると、持ち家を自身で購入した人3947人のうち、住宅ローン利用経験者は約8割(78.6%)にのぼるという結果が出ています。このことから多くの人にとって持ち家の購入には住宅ローンが必要なので、今後は未登記の土地・建物も減っていくことが予想されます。

参照:令和の“住まい”と住宅ローン事情(2022年5月)|三井住友信託銀行 三井住友トラスト・資産のミライ研究所

未登記建物・土地を登記しなかった場合の罰則

相続登記の義務化に伴い、不動産を取得した相続人は3年以内に相続登記の申請をしなければならず、正当な理由なくこれを怠った場合には10万円以下の過料が科されます。また、未登記建物の所有権を取得したら表題登記をすることが義務付けられており、これを怠った場合も法律上10万円以下の過料が科されます。

要らない土地の放棄は可能?

自分にとって土地が不要であれば、ほかの相続人に譲ったり売却して換価分割(売却によって得た金額を相続人間で分配する分割方法)したりする手段もありますが、土地を放棄する方法もあります。

その方法の1つは、相続放棄です。相続放棄とは、相続人が被相続人の権利義務の承継を拒否する意思表示のことです。相続放棄すると相続人としての地位を失うため、相続財産の所有権を取得することはなくなります。相続財産の内容を把握したうえで相続放棄すべきかどうかをよく検討しましょう。

相続放棄のほかにも、「相続土地国庫帰属制度」という制度を使って土地を放棄することが可能です。土地の所有権を手放し国庫に帰属させる制度ですが、相続放棄と異なる点は、必要な財産だけ相続して不要な土地を手放すことができるという点です。

ただし、相続土地国庫帰属制度を利用するには10年分の土地管理費用相当額の負担金を納めなければなりません。

司法書士へ依頼して円滑な相続登記を

相続登記に漏れがあった場合、登記原因ごとに対処法があります。遺産分割協議書や遺言書がある場合、そこに登記漏れの不動産に関する内容が記載されていればその内容通りに登記を行い、記載がなければ新たに遺産分割協議書を作成して登記を行います。

相続登記が一部漏れていたというケースは少なくありませんが、そのほとんどは相続人が自分で相続登記を行った結果、漏れが出てしまうケースです。このようなミスをなくし、適切に登記を行うには、司法書士に依頼して相続登記を行うのがおすすめです。

令和6年4月1日から相続登記は義務化されたため、未登記の土地・建物を相続したら相続登記を行わなければなりません。未登記のままでは売却が難しい、住宅ローンを組めないなどさまざまな問題点があるので、相続したらできるだけ早く相続登記を行いましょう。

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記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載