相続登記しないで滅失登記をして費用や手続負担を軽減する方法

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滅失登記とは

滅失登記とは国に登録された登記簿を閉鎖する手続です。建物を取り壊した際に滅失登記を行いますが、滅失登記をしないと現実に建物が取り壊されていたとしても、登記簿上は建物が現存したままになります。つまり、建物滅失登記が行われない限り現実と登記簿が一致しない状況になるのです。

不動産登記法には以下のように記されています。

建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

※引用:不動産登記法 | e-Gov法令検索

法律の条文からもわかるとおり、滅失登記は義務なので、建物を取り壊した際には必ず手続をしなければなりません。

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相続登記せずに滅失登記の申請をすることは可能

相続登記を申請しなくても、建物の滅失登記を申請できます。

相続登記とは、登記簿上の不動産名義を亡くなった方から相続人に移す手続です。令和6年4月1日より相続登記は義務化されたので、本来であれば相続によって不動産の所有権を取得したら相続登記を行わなければなりません。しかし、相続登記をする前に建物を取り壊す場合、相続登記は省略して滅失登記を申請できます。

建物の取り壊しは相続人単独ではできない

滅失登記は相続人単独で行うことができますが、それは建物がすでに取り壊されている場合であり、相続人の1人が独断で建物を取り壊せるわけではないので注意してください。

遺産分割協議や遺言によって相続人が1人に決まった場合を除き、相続発生後に建物を取り壊すには相続人全員の同意が必要です。そのため、相続人が単独で建物を取り壊すことはできません。

滅失登記の義務は相続によって引き継がれる

相続発生前に建物が取り壊されているにもかかわらず、滅失登記が済んでいなかった場合、滅失登記の義務は相続人に引き継がれます。その場合、相続人が代わりに滅失登記の手続をする必要があります。

ただし、滅失登記をする時点ではすでに建物が取り壊されているはずなので、建物の相続登記をする必要はありません。

土地の相続登記は省略できない

亡くなった人が建物と土地を所有していた場合、建物が取り壊されたら建物の相続登記をする必要はありませんが、土地の相続登記はしなければいけません。建物を取り壊して更地にした場合でも、忘れずに土地の相続登記をしましょう。

滅失登記は誰ができる?

滅失登記は相続人が単独で行えます。たとえ相続人が複数人いたとしても、ほかの相続人の同意なく相続人1人で申請できます。これは、すでに建物は取り壊されているので滅失登記を申請しても、ほかの相続人に不利益がないからです。

滅失登記の手続を行う際は、自分で手続を行う以外にも土地家屋調査士に依頼して行うことができます。不動産登記といえば司法書士の専門分野であると思われがちですが、司法書士が専門とするのは登記のなかでも権利に関する登記であり、滅失登記は不動産の表示に関する登記なので土地家屋調査士の専門分野です。

この点は誤解しがちですが、きちんと理解しておくことで専門家への依頼を検討する際、スムーズに手続ができます。

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滅失登記を自分で申請するときの必要書類

滅失登記を自分で申請する場合、以下の書類を用意する必要があります。

  • 解体した建物を証明する各種書類
  • 建物滅失証明書
  • 解体業者を証明する書類
  • 建物滅失登記申請書
  • 相続を証明する書類

それぞれどのような内容の書類であり、どうやって入手すればよいのかについて解説します。

解体した建物を証明する各種書類

解体した建物を証明する書類としては、以下のようなものがあります。

  • 登記事項証明書
  • 公図
  • 建物図面

まずはこれらの書類が手元にあるかどうかを確認し、もし手元になければ新たに取得する必要があります。これらは法務局で取得可能なので、建物の所在地を管轄する法務局へ申請しましょう。

建物滅失証明書

建物滅失証明書は、解体を行った業者が建物が取り壊されたことを証明する書類であり、「建物取壊証明書」「取り壊し証明書」などと呼ばれることもあります。解体工事完了時に発行する業者もありますが、やり方は業者によって異なるため事前に確認しておくとよいでしょう。

建物滅失証明書を紛失した場合や、未発行のまま解体から時間が経過した場合、解体業者に発行を依頼しても対応してもらえない可能性があります。その場合、建物滅失証明書の雛形を作って解体業者に送り、署名・押印をしてもらいましょう。

解体業者の資格証明書

解体業者が資格を有した正規の業者であることを証明するために、代表者事項証明書もしくは履歴事項証明書が必要です。解体業者と解体した建物の管轄法務局が異なる場合、法人代表者の印鑑登録証明書(法人でない場合には個人の印鑑登録証明書)も必要です。

建物滅失登記申請書

滅失登記をする際は、指定の書式で申請書を提出する必要があります。申請書の雛形は法務局公式サイトからダウンロードしましょう。

申請人の名前や建物の表示部分は、登記事項証明書に記載されているとおり正確に記入する必要があります。添付書類と記載内容が一致しない場合、申請書を受理してもらえない可能性があります。氏名のあとに認印の欄があるので、忘れずに押印しましょう。

所有者の住所が登記事項証明書に記載されている内容と実際の住所で異なっている場合、住所変更の経緯を証明できる住民票や戸籍の附票を添付する必要があります。

相続を証明する書類

登記簿上の所有者が死亡し、相続人として建物滅失登記手続をする場合には、以下のような相続を証明するための書類が必要です。

  • 所有者が死亡したことが記載された戸籍
  • 申請する人が所有者の相続人であることが確認できる戸籍
  • 登記簿に記載されている所有者の住所と、所有者の本籍の繋がりを確認できる戸籍の附票など(本籍が記載されているもの)
  • 相続人の住民票、または戸籍の附票

必要書類を揃えたあとの手続

必要書類を揃えたら法務局へ提出し、登記完了証の発行を待ちます。必要書類を揃えたあとの手続に関しても、一連の流れを確認しておきましょう。

滅失登記の必要書類を法務局へ提出

必要書類を揃えたら、建物の管轄法務局に書類を提出しましょう。法務局の窓口まで出向いて提出すれば、書類に不備があった場合でもその場で修正して再提出できます。その際、訂正用の印鑑があると便利です。

必要書類は郵送で提出することもできます。万が一、郵送事故などが起こる場合に備え、簡易書留など記録が残る郵送方法を選ぶと安心です。もし書類の提出後に不備があった場合、あとから窓口へ行って訂正するか郵送で再提出することになります。

窓口でチェックしてもらうことで不備に早く気付くことができ、不明点はその場で職員に教えてもらうこともできるので、手続に慣れていない場合には窓口で提出する方法がおすすめです。なお、法務局の住所や電話番号については下記をご参照ください。

登記完了証を受け取り滅失登記完了

申請が受理されて問題なく滅失登記が完了すると、申請から1~2週間後に法務局で登記完了証が発行されます。登記完了証が発行されたら、手続は完了です。

手続完了までの期間は法務局によっても異なりますが、登記完了の連絡がない場合には申請した法務局に問い合わせて確認することもできます。

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滅失登記の申請でよくある質問

滅失登記について、よくある質問をまとめました。

  • 費用はいくらかかる?
  • 建物に抵当権が付いていたらどうする?
  • 滅失登記をしないとどうなる?

これらの疑問について上から順に解説します。これから滅失登記の手続をしようと考えている方は、参考にしてください。

費用はいくらかかる?

滅失登記を自分でする場合、登記事項証明書や図面などの手数料や郵送にかかる費用が1000円程度かかります。自分で申請する場合、これらの実費以外の費用はかかりません。

一方、土地家屋調査士に依頼した場合、4~6万円程度の費用がかかります。これは書類を集めたり手続を代行したりする手数料です。土地家屋調査士に依頼すれば、自分で手続をする手間が省けます。

解体業者から土地家屋調査士を紹介されることがありますが、この場合相場より高額になる可能性もあるでしょう。土地家屋調査士に依頼する際は必ず見積りをとり、費用の内訳を自分の目で確認することをおすすめします。

※参照:業務報酬統計資料 | 日調連について | 日本土地家屋調査士会連合会

建物に抵当権が付いていたらどうする?

建物に抵当権が設定されている場合には、必ず建物を取り壊す前に抵当権者へ連絡しておきましょう。抵当権が設定されていることに気づかず建物を取り壊しをしてしまうこともあるので、亡くなった人が不動産を所有していた場合、必ず取り壊しの前に登記簿を確認するようにしてください。

抵当権者に断りなく建物を取り壊すと、契約違反で損害賠償請求される可能性があります。ローンの担保が必要な場合などに、金融機関が抵当権を設定することはよくありますが、建物を取り壊すと抵当権も法律上消滅してしまい、担保としての機能を果たせなくなるためです。

滅失登記をしないとどうなる?

滅失登記は法律上の義務であり、建物が取り壊された日から1か月以内に滅失登記をしなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。もっとも、滅失登記をしなかったことで過料が科されたという事例は確認されておらず、現実的には過料が科される可能性は低いでしょう。

また、滅失登記を怠ると、建物が現存しない場合でも固定資産税が課税され続けることが考えられます。固定資産税は市区町村が作成する固定資産課税台帳をもとにして課税されますが、滅失登記を申請しないと課税台帳上、建物は残ったままになるため、固定資産税が課税されてしまうのです。

相続登記の手続は司法書士への依頼がおすすめ

滅失登記は法律に定められた義務なので、基本的には建物を取り壊した際に必ずしなければならない手続です。相続した建物を取り壊したときは、滅失登記を行なえば相続登記をしなくても問題ありません。

本記事を読めば、自分で滅失登記の手続ができます。しかし、必要書類の準備や申請書の作成など慣れていないと時間がかかり、補正が必要となる場合も多いので、土地家屋調査士に依頼するのもよいでしょう。

そのほか相続登記の手続をはじめ、不動産登記は司法書士に依頼できる業務も多いので、滅失登記以外でも不動産登記に関してお悩みがあれば、司法書士へ依頼するのがおすすめです。

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記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載