相続登記をしないことで起きる問題

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相続登記をしないことで起きる問題

相続登記をしないままでいた場合に発生する問題には厄介なものが非常に多いです。
トラブルにならないために、相続登記を申請しないデメリットについて解説していきます。

不動産の売却・担保の設定ができない

不動産の売却・担保の設定ができない_イメージ

相続登記をしなかった場合、不動産の持ち主(名義)は被相続人、亡くなった人のままになります。名義が他人である場合は不動産の売却や、担保へ設定ができません。

「現時点で売却する気がないから放っておいても大丈夫」と思う人もいるでしょう。しかし、将来売却をしようと思ったときに、誰がどの財産をどのくらい持っているかが複雑になっている可能性があります。

また、売却するために相続登記を申請しようと思っても、必要書類を集めるのが困難なこともあるでしょう。

自分自身は売却しようと思わなくても、次の世代のお子さんは財産の売却を考えているかもしれません。相続登記を早めにしておくことで、次世代の人がスムーズに手続をできるようにしましょう。

権利関係が複雑化する

相続登記をしないと、権利関係が複雑になります。登記をしないままだと、代が進むごとに相続人の数が増えてしまうためです。

登記をしないままだと、名義は亡くなった人のままです。この場合、財産は相続人全員で共有している状態となります。

さらに、亡くなった人の子も全員亡くなり、登記をまだそのままにして、その次の代の人も亡くなり…ということが続けば続くほど、相続をする権利を主張できる人はどんどん増えていくのです。

【権利関係複雑化の例】

権利関係複雑化の例

登記をしないままだと、財産は相続人全員の共有状態なので、権利関係がとても複雑になっていきます。

相続人が増えれば増えるほど、登記を誰にするかで揉めやすくなるうえ、必要な書類を集める手間も増えるでしょう。

相続でのトラブルを避けるためにも、早めに相続登記をすることが大切です。

認知症などで遺産分割が困難に

相続登記をしないままにしておくと、相続人が歳を取り、認知症になってしまう可能性が高くなってしまいます。

【認知症高齢者の将来推計】

認知症高齢者の将来推計

※参照:「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 九州大学 二宮教授)による速報値

認知症になって相続人としての判断能力がないとみなされた場合、遺産分割協議には成年後見人をつけないと参加できなくなります。相続人が元気(=判断能力がある)なうちに、相続登記をしておくことが大切なのです。

相続人の債権者による差し押さえの可能性も

相続人の債権者による差し押さえの可能性も_イメージ

借金をしている人が相続人の中にいる場合も注意しなければいけません。お金を貸している人(債権者)は、相続人の代わりに登記をし、不動産の差し押さえができるのです。債権者が債権を守るためです。(「代位登記」といいます。)

もし相続登記をしていない場合、財産は相続人全員で共有の状態なので、債権者が登記できます。借金がある相続人が完済しない間は、財産の名義を移せません。

登記に必要な書類が入手困難に

登記に必要な書類が入手困難に_イメージ

相続登記の申請には、さまざまな必要書類があります。たとえば、亡くなった方の住民票(除票)や戸籍の附票が必要となります。

これらの住民票や戸籍謄本といった書類は役所で取得できますが、保存期限が存在します。

もし期限を過ぎてしまった場合、相続登記をしようしても書類が取得できないのです。

たとえば、戸籍が除籍や原戸籍の場合、附票の保存期間は5年しかありません。

期限が過ぎてしまった書類は取得できないため、代替となる書類を取得したり、法務局に相談したりするなどの煩雑な手続が必要となるのです。こうした場合の相続登記は特に難易度が高く、自力で実施するのはとても大変です。期限が過ぎてしまうまえに、早めに相続登記を申請することをおすすめします。

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相続登記の3つのパターン

相続登記は、以下の3つがよくあるケースです。

  • 遺言書の指定で相続する
  • 法定相続分に従って相続する
  • 遺産分割協議をして各人の相続分を決定する

上記3つのパターンについて、それぞれ解説していきます。

遺言書の内容で相続する

相続の際は、遺言書の有無を最初にチェックします。遺言書があるなら、その内容に沿って相続人が相続をするのが原則です。ただし、遺言書に絶対に従わなければいけないわけではありません。

誰が、どのくらい遺産を相続するかを話し合って決める「遺産分割協議」をして、取り分を決める場合もあります。協議の内容に全員が同意すれば、その割合で相続ができます。

法定相続分どおりに相続する

法律で決められた相続人ごとの遺産をもらえる割合を「法定相続分」と言います。

具体的には、下記の表の相続人の順となります。

【法定相続人の順位】

順位 法定相続人
常に相続人 被相続人の配偶者
第一順位 被相続人の子
(子がすでに死亡している場合は孫)
第二順位 被相続人の親
(親がすでに死亡している場合は祖父母)
第三順位 被相続人のきょうだい
(きょうだいがすでに死亡している場合は甥・姪)

また相続の割合については下記のように決められています。

【法定相続人別の法定相続分】

相続人 法定相続割合
配偶者のみの場合 財産すべて
配偶者と子が相続人の場合 配偶者1/2、子全員で1/2
配偶者と被相続人の
親・祖父母が相続人の場合
配偶者2/3、親または祖父母(全員で)1/3
配偶者ときょうだいが相続人の場合 配偶者3/4、きょうだい(全員で)1/4

法定相続分は上記のように「誰が、どれだけ相続するか」が決まっているため、遺産分割協議をせずに手続を進められます。

ただ、もしひとつの土地に複数の名義人が登録されている場合は注意が必要です。

もし、不動産や土地を売却しようとした場合、名義人全員の同意が必要となるためです。人数が多かったり、名義人同士が不仲な場合は手間がかかってしまう可能性があります。

また、相続がまた発生した場合(数次相続)となったとき、手続が複雑になることにも気を付けましょう。

こうしたリスクを踏まえると、法定相続分での相続は避けた方がよいでしょう。

遺産分割協議で相続分を決める

先述の通り、法定相続分での相続は、あまりおすすめできる手法とは言えません。もし遺言書がないのであれば、「遺産分割協議」でそれぞれの相続分を決定するといいでしょう。

相続登記をしないと発生するリスク

「まだ先のことだから」と言って、相続登記を先延ばしにすると、さまざまなリスクが発生します。

相続登記をせず放置すると、以下のようなデメリットが生まれることに触れてきました。

  • 必要書類の準備ができなくなる
  • 不動産の売却・担保の設定ができない
  • 相続人が認知症などになって遺産分割協議がスムーズに進まなくなる
  • 相続人が多くなって議論がまとまらない
  • 不動産の所有権を失うリスクがある

上記のように多くのデメリットがあります。相続登記を早期に実施することで、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

ただ、相続登記を自力でやろうとすると、多くの時間と手間がかかります。相続登記の手順は複雑なうえ、さまざまな書類が必要となります。一般の人にとっては負担が大きいでしょう。

相続登記はできるだけ早いうちに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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相続登記を司法書士に頼むメリット

相続登記は自力でもできますが、時間と手間が非常にかかります。司法書士などの専門家に任せることをおすすめします。相続登記を司法書士に任せるメリットを解説していきます。

  • 戸籍情報などの書類をスムーズに集められる
  • 相続関係を正確に把握できる
  • 「争族」になるのを避けられる

戸籍情報などの書類をスムーズに集められる

戸籍情報などの書類をスムーズに集められる_イメージ

相続関係を確認する場合、基本的には亡くなった方(被相続人)の生まれてから亡くなるまでの戸籍をすべて収集する必要があります。

たとえば、本籍地と住所が違う場合や、転籍を複数している場合は、それぞれ別々の市区町村から戸籍を集めなければいけないのです。

複数の市区町村から戸籍を集めるのは非常に煩雑です。自力ですべてやろうとするのは時間と手間が非常にかかります。

専門家である司法書士に任せることで、スムーズに手続を進められるでしょう。

相続関係を正確に把握できる

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相続登記の手続を進めていく際、ほとんどの場合は「遺産分割協議」を実施します。遺産分割協議とは、亡くなった方の財産をどう分けるか、話し合って決めることです。遺産分割協議は相続人全員で実施しなければいけません。このため、相続人に該当するかどうかをしっかり調べることが大切なのです。

「誰が相続人かは把握している」と思っていても、実際に戸籍を見ると把握できていないケースは散見されます。甥や姪と養子縁組していたり、亡くなった方に認知した子がいたりなど、誰が相続人なのか判別しづらい場合もあるでしょう。

専門家である司法書士なら、こうした複雑な場合でも相続関係を明確に把握することができます。

「争族」になるのを避けられる

「争族」になるのを避けられる_イメージ

相続は、財産を誰にどう分けるかを決めること。このため、相続人だけで遺産分割の仕方を議論しても、各人の権利を主張しあい、収拾がつかなくなってしまう可能性があります。

そこで司法書士という第三者が入ることで、相続人それぞれの感情にも配慮しながら、納得する結論を導き出すことができます。相続人全員が納得のいくように手続を進めていきます。

記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載