相続放棄の相談先はどこがいい?4つの選択肢と相談前の準備とは

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相続放棄を無料で相談できる4つの窓口

相続放棄を検討する場合、最初の一歩として無料相談を活用するのが賢明です。主な無料相談窓口としては、司法書士・弁護士・税理士などの専門家、法テラス、市区町村の相談窓口、家庭裁判所の4つがあります。窓口ごとに特徴があり、状況や緊急度に合わせて選ぶと良いでしょう。

司法書士・弁護士・税理士などの専門家

相続放棄の相談先としてもっとも一般的なのが、司法書士や弁護士です。30分または1時間単位で相談料がかかることがありますが、初回相談は無料であることが増えています。

専門家が設ける相談窓口は、その場で適切な助言をもらえる可能性が高いのが特徴です。相続放棄における個別の手続支援は最終的に専門家が担うことになるため、急ぎの場合や、短いステップで的確なアドバイスがほしいときには、最適な相談窓口といえるでしょう。

法テラス

法テラス(日本司法支援センター)は、法律問題に直面した市民を支援するため、法律に基づいて設立された機関です。一定の収入・資産要件を満たす人であれば、法テラスのお問い合わせセンターから司法書士や弁護士を紹介してもらい、紹介先で無料相談に対応してもらえます。

この方法による相談が適しているのは、「良い相談先の探し方がわからない」「報酬を払うためのお金がない」といった事情がある場合です。特に費用面では、相談から依頼に至った場合、民事法律扶助による立替制度を利用できる場合があります

市区町村の相談窓口

各地域の自治体では、相続に関する無料相談窓口を設けていることがあります。担当する相談員は司法書士・弁護士などの専門家などであり、司法書士や弁護士の事務所や法テラスを通じた相談と遜色ない回答が得られる可能性もあります。

もっとも、相談実施日や予約方法、相談対応できる範囲などは自治体によって異なります。そのため、居住する地域の市区町村役場などに事前に確認をとらなくてはなりません。また、基本的な相談は可能でも、具体的な手続支援までは受けられないケースが多い点には注意が必要です。

家庭裁判所

相続放棄や亡くなった人に関する手続は家庭裁判所の管轄となり、同裁判所では事前相談を受け付けているのが一般的です。利用にあたっては要予約となる場合が多いですが、費用はかかりません。

家庭裁判所の相談窓口を利用するときに注意したいのは、手続の実施に関する案内のみ受けられる点です。相続放棄すべきかどうかの判断や、トラブル防止を見据えたほかの相続人との調整、書類収集以外の事前準備、手続の代行などについては対応してもらえません。

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相続放棄の相談先となる専門家の特徴

相続放棄の相談・依頼先としては、司法書士、弁護士、税理士の3つの専門家が代表的です。それぞれの専門家には得意分野や対応できる業務範囲に違いがあり、相談内容や状況によって最適な相談先は異なります。

司法書士の業務内容・得意分野

司法書士は不動産登記や商業登記、そのほかの法的手続のエキスパートであり、相続手続や登記手続の代行で力を発揮します。相続放棄申述書の作成や必要書類の収集など、実務的な支援を得意としています。特に、相続財産に土地や建物が含まれている場合は、不動産登記の専門家でもある司法書士のサポートが有効です。

弁護士の業務内容・得意分野

弁護士は法律問題全般に対応できる資格職であり、訴訟代理権があることで、紛争があるケースを得意とします。相続人間でトラブルが発生している場合や、債権者からの督促への対応が必要な場合など、法的な紛争解決のサポートが求められるケースでは、弁護士への相談が有効です。

特に、裁判所への書類提出まで代行してもらいたい場合は、司法書士ではなく弁護士に依頼することで、より適切な対応が可能となります。

税理士の業務内容・得意分野

税理士は相続税や準確定申告のスペシャリストです。相続放棄を検討する際に、相続税や固定資産税などの税金面での影響を確認したい場合に相談するのが効果的です。特に、相続財産に事業用資産が含まれている場合や、相続税の申告が必要になりそうな場合は、税理士のアドバイスが重要になります。ただし、税理士は相続放棄の手続そのものに対しては業務を請け負ってはいない点に注意しましょう。

相談前にやっておきたい準備

相談前にやっておきたい準備_イメージ

相続放棄などについて有識者にアドバイスをもらうときは、あらかじめ「今抱えている問題と質問事項」をきちんと整理しておきましょう。当日のやりとりをきちんと決めておくことで、時間内に的確なアドバイスがもらえる可能性を最大化できます。最低限やっておきたい準備としては、以下の3点が挙げられます。

相続人や相続財産の状況を整理する

相続放棄に関する問題を解決したいときは、相続人および相続する財産の状況を相手と共有する必要があります。相談当日を迎えるまでのあいだ、できる範囲で以下のような調査と調査結果の整理を実施しましょう。なお、相続放棄の手続は3か月以内に行う必要があるため、相続放棄を視野に入れている場合は早めの行動を心掛けましょう。

相続人の調査

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集して親族関係を把握し、法律で定められた相続に関するルール(法定相続)と照らし合わせ、相続権を有する人を特定します。放棄を検討する必要のある人を正確に把握するためです。

相続財産の調査

銀行口座の残高証明書、不動産の権利証、固定資産税に関する資料(納税通知書や市区町村で閲覧できる課税台帳など)を集め、財産の全容を把握します。相続放棄の可能性があるケースでは、金銭貸借契約書や個人信用情報機関の開示情報を利用した「マイナスの財産=債務」の調査が重要です。これらの調査で得た情報は、相続放棄すべきか否かを判断するときの重要な材料です。

困りごと(相続放棄したい理由)をメモする

相続放棄を検討する理由は人それぞれです。もっとも多いのは「被相続人が残した借金を承継したくない」といったものですが、相続財産の管理が困難だったり、ほかの相続人とのトラブルを避けたかったりする場合もあるでしょう。

相談するときは、なぜ相続放棄を検討しているのか、その背景も含めて説明できるようメモを準備しておきましょう。ここで言う「背景」としては、亡くなった人や、そのほかの親族との関係性、現時点で把握している財産状況の概要などが挙げられます。

手続を依頼する場合の費用・期間を確認する

相続放棄の手続そのものに関する相談をしたいときは、代行を依頼する場合の費用や期間について質問しておくと良いでしょう。依頼する範囲を判断したり、今後のスケジュールを決めたりするときの指針となります。

手続を依頼するときの費用は、各専門家ごとに異なるため、気になる場合は確認しておくと良いでしょう。手続期間については、書類準備から申述、受理まで通常1か月から2か月程度を見込む必要があります。また、裁判所からの照会への回答が必要になるケースもあり、その場合は追加の期間と費用が発生する可能性があります。前述のとおり相続放棄の手続には期限があるため、この期限を意識したスケジュールを組むようにしましょう。

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相続放棄の注意点

相続放棄の相談を効果的に進めるために、基本的な知識を押さえておくことが大切です。特に、手続の期限や注意すべき行為、相続放棄後の義務、ほかの相続人との関係については、事前に押さえておく必要があります。以下では、相続放棄で覚えておきたいポイントについて、具体的に解説していきましょう。

相続放棄の期限は3か月以内

相続放棄には「熟慮期間」と呼ばれる手続期間の制限があり、自己のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内に実施しなければなりません。期限を過ぎてしまった場合、原則として相続放棄はできません。

もっとも、熟慮期間内に期間の延長(期間の伸長)を認めてもらったり、期間外に例外的に相続放棄を受理してもらったりする方法はあります。これらの手続にあたっては、個別に理由の説明を上申書などを通じて行う必要があり、専門家による対応が必要となる可能性が大きいと言えます。

単純承認とみなされる場合がある

相続人が一定の行為をすると、相続人に属する権利義務の承継を受け入れたものとみなされ、相続放棄できなくなります。具体的には、相続財産の処分(預貯金の払い戻し・不動産の売却など)や、債権者に対する支払い(債務の弁済)などが該当します。

注意したいのは、退去費用や死亡時の入院費用の精算も単純承認となる可能性がある点です。相続放棄を検討しているときは、専門家からアドバイスを得るまで相続財産に一切手を触れず、各種督促にも安易に約束しないように心掛けましょう。

相続放棄後も財産の保存義務は残る

放棄した不動産のうち、現に住んでいるなど占有している建物がある場合は、その財産を適切に保存する義務が残ります。具体的には、土地・建物の現状維持のためのメンテナンスや、安全な場所での家財道具の保管など、通常の管理行為を行わなければなりません。

この義務は、ほかの相続人または家庭裁判所に選任された相続財産清算人に財産を引き渡すまで継続します。特に不動産については、適切な管理を怠ると近隣住民や自治体に損害賠償責任を問われる可能性もあるため、注意が必要です。実務上は、速やかに次の相続人に財産の引き渡しを行うか、相続財産清算人の選任申し立てを検討するのが望ましいと言えます。

ほかの相続人と情報共有する必要がある

相続放棄は相続人ごとに行う手続であり、受理されると放棄された財産は次順位の相続人に移転します。放棄の事実をほかの相続人に知らせないままにしておくと、親族が予期しない負担を被り、結果として深刻なトラブルに発展する恐れがあります

情報共有すべき内容としては、相続放棄を検討している理由、手続の時期、判明している財産や債務の内容などが挙げられます。多額の債務があるケースでは、次順位の相続人が対応を検討できるよう、早めの情報共有が重要です。

相続放棄の手続なら司法書士へご相談ください

「相続放棄するべきかどうか」「手続や相続人との調整はどうするのか」といった問題は、専門家に相談することで適切なアドバイスが得られます。支援のプロである司法書士や弁護士、税理士への相談は、各事務所の初回無料サービスなどにより、気軽に試すことができます。

相談する際は、相続人や財産状況の整理、相続放棄を検討している理由の明確化など、事前準備を怠らないことが重要です。また、3か月の期限や単純承認、保存義務など、基本的な知識を押さえておくことで、より効果的な相談が可能となります。

当事務所では、相続放棄に関する相談を随時受け付けております。お気軽にご連絡ください。

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記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載