相続放棄の照会書とは?回答書の書き方や申し立ての流れを解説

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相続放棄照会書とは

相続放棄照会書とは、申述人の意思を再確認し、相続放棄の手続が適切に進められているかを確認するために使用される家庭裁判所の書面です。申述人(相続放棄する意思を示し、手続をした人)のもとに届くときには、回答書が同封されており、申述人はこれに記入して返送する必要があります。

相続放棄申述書の受理後に届く

相続放棄照会書は、通常、相続放棄申述書を家庭裁判所に提出してから1週間から2週間程度で到着します。これは家庭裁判所とやりとりする正式な文書であり、申述人の意思を再度確認することを目的としています。

照会書の送付は、相続放棄が重要な法的手続であることを踏まえ、申述人の真意を慎重に確認するための重要な手続です。家庭裁判所は、この文書を通じて、申述人が相続放棄の意味と効果を十分に理解しているか、また外部からの圧力や強制なしに自発的に相続放棄を選択したかを確認します。

同封されている回答書の返送が必要

相続放棄照会書には回答書が同封されており、申述人はこれに必要事項を記入して返送しなければなりません。回答書の内容は、相続放棄の受理判断に大きな影響を与えます。家庭裁判所は、この回答内容を基に申述人の意思や相続放棄の適格性を判断します。回答内容に矛盾や不明点がある場合、追加の確認が行われる可能性もあります。

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回答書の見本と書き方・記入例

相続放棄照会書に同封される回答書の記入は、相続放棄の手続を進める上で極めて重要です。正確かつ詳細な回答が求められるため、慎重に記入する必要があります。以下では、回答書の主要な項目について、具体的な記入例を交えながら説明します。

相続放棄照会書の見本

相続放棄照会書の様式は、家庭裁判所によって若干の違いがあります。ただし、基本的な構成や確認事項はほぼ共通しています。以下に、一般的な相続放棄照会書の見本を示します。この例はあくまでも参考用であり、実際の様式とは細部が異なる可能性があることに注意してください。


事件番号 令和〇年(家)第〇〇〇号
被相続人 〇〇〇〇

申述人  〇〇〇〇


令和〇年〇月〇日
〇〇家庭裁判所 裁判所書記官 〇〇〇〇


照会書


あなたが申し立てた上記被相続人の相続放棄申述受理申立事件について、下記のとおり照会します。この照会書は、あなた自身の意思で相続放棄の申述をしたかどうかを確認するものです。同封の回答書に必要事項を記入し、申立書に使用した印鑑で押印のうえ、令和〇年〇月〇日までに当裁判所まで返送してください。


注意:相続放棄とは、被相続人の財産や債務を一切引き継がないこと、つまり相続人にならないということです。


【記載要領】
 (1)記載にあたっては、鉛筆書きはせず、ボールペンなどを使用してください。

 (2)訂正は修正液を使用せず、二重線で誤字を消しその上に訂正印を押してください。

 (3)回答書は、あなた自身で書いて署名してください。

 (4)代筆してもらうことはかまいませんが、署名押印はあなた自身で行ってください。

 (5)代筆は被相続人の財産を相続する人や配偶者ではない方に代筆を依頼してください。

 (6)1つを選ぶようになっているところは、あてはまる箇所にレ点をつけてください。

 (7)書き込むスペースが足りないときは、便せんなど、適当な用紙を使ってください。

その他、本件について不明な点があるときは、担当までお問い合わせください。その際は、この文書の左上にある事件番号を言ってください。

※申述書に記載された内容と重複する質問事項もありますがご容赦ください。

実際に届く照会書には、別紙として回答書がついています。回答書のほかに照会事項に関する記入をすべき書面が添付されることがあり、その場合には、それぞれ記載して返送しなければなりません。

回答書の書き方・記入例

以下では回答書への書き方や記入例を解説します。なお、実際に記入するときは、選択式・日付を書き入れる方式・自由記述で述べる方式がある点に留意し、適切に回答欄を埋めるようにしましょう。

相続放棄の申述の手続に関する項目

相続放棄は不利益に繋がりやすいものであり、本人の意思で確実に行われたものであるか(ほかの誰かが不正に行ったものでないか)の確認が行われます。その内容は、一般に次のようなものです。

【質問】
あなたの名前で、当裁判所に相続放棄の申述手続がなされていることを知っていますか。

【回答】
知っています。

【質問】
相続放棄申述受理の申し立ては、あなた自身で行ったものですか。それとも、誰かに手続を依頼しましたか。

【回答】
自分でしました。

相続開始を知った日

相続開始を知った日と経緯は、相続放棄の期限(3か月)の起算点となるため、正確に記入することが重要です。被相続人の死亡日と相続開始を知った日が異なる場合は、その理由も含めて記載を求められることがあります。

【質問】
あなたは、被相続人の死亡をいつ知りましたか。

【回答】
令和3年5月15日に知りました。

単純承認にあたる行為に関する状況

【質問】
被相続人の遺産について、これまでに処分、隠匿又は消費したことがありますか。

【回答】
ある/ない

相続放棄の効果の理解

相続放棄の効果を正確に理解していることを示すのは重要です。相続権の完全な放棄、プラスの財産も相続できないこと、相続放棄が撤回できないものであることなど、それぞれ明確に認識していることを記載します。

【質問】
相続放棄をすると、その相続人について初めから相続人とならなかったとみなされ、被相続人の財産に関する一切の権利義務を失うことになります。このことを理解したうえで、この手続を、あなたが本当に自分の意思に基づいてしたことに間違いありませんか。

【回答】
はい、理解しています。

相続放棄の手続についての照会事項

相続放棄の手続に関する質問では、申述書の作成者、相続放棄の理由、現在の相続放棄の意思を明確に記載します。これらの回答は、相続放棄が申述人の自由意思によるものであることを確認するために重要です。

【質問】
放棄の書類は、誰が作成したものですか。

【回答】
自分で記名押印して裁判所に提出した/専門家に依頼した

【質問】
相続放棄をする理由はなんですか。

【回答】
債務超過のため/遺産が少ないため/その他

回答書に記入するときの注意点

回答書に記入するときの注意点_イメージ

相続放棄照会書の回答書に記入する際は、いくつかの重要な点に注意する必要があります。正確な回答、適切な印鑑の使用、期限の厳守などが特に重要です。また、家庭裁判所からの連絡にも適切に対応することが求められます。

正確に回答する

回答書への記入は、事実に基づいて正確に行うことが。もっとも重要です。推測や憶測ではなく、確実な情報のみを記載しましょう。不明な点がある場合は「不明」と正直に記載することが適切です。

記載の前には、あらかじめ相続放棄に至るまでの状況を時系列で整理しておくと、回答しやすくなります。被相続人の死亡を知った日、債務の存在を知った日、相続放棄を決意した日などを明確にしておくと良いでしょう。これにより、一貫性のある回答が可能となり、家庭裁判所の審査をスムーズに進めることができます。

代筆は原則として不可

回答書は原則として申述人本人が記入する必要があります。やむを得ない事情で代筆した場合は、代筆者の氏名および住所、代筆者と依頼者の関係を記し、代筆者の署名押印しなければなりません。ほかに、代筆の理由も明記しましょう。

なお、照会書の文例にあったとおり、代筆者は相続人およびその配偶者以外の人物を選ぶ必要があります。これらの情報を適切に記載することで、代筆による回答も有効となります。

印鑑は申述書と同じものを利用する

回答書に押す印鑑は、申述書で使用したものと同じものを使用することが重要です。申述書提出時に使用した印鑑を確認し、同じものを用意しましょう。

申述書および回答書で利用する印鑑は実印・認印どちらでも問題ありません。ただし、印鑑が申述書と異なる場合は、家庭裁判所から問い合わせがくる可能性があります。そのため、申述書提出時に使用した印鑑を忘れないよう、しっかりと管理しておくことが大切です。

返送期限は厳守する

照会書に記載された回答書の返送期限は、必ず守るようにしましょう。返送期限は家庭裁判所によって異なりますが、照会書に記載があり、通常10日または14日程度となっています。

期限に間に合わない場合は、すぐに対応することが重要です。照会書に記載されている連絡先を確認し、家庭裁判所に連絡を入れましょう。事情を説明し、対応について相談することで、多くの場合は柔軟に対応してもらえます。ただし、無断で期限を過ぎてしまうと、相続放棄が認められない可能性があるので注意が必要です。

家庭裁判所からの電話連絡には要対応

家庭裁判所から電話連絡がある場合、必ず対応するようにしましょう。電話連絡の目的は主に内容確認や追加質問です。回答書の記載内容に不明点がある場合や、追加情報が必要な場合に連絡がくることがあります。電話に出られなかったときは、できるだけ早くかけ直すようにしましょう。

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回答書の返送と返送後の流れ

相続放棄回答書への記入が完了したら、次は回答書の返送です。返送方法には郵便と直接持ち込みの2つの選択肢があります。返送後は、相続放棄受理証明書が届くまで待つことになります。

回答書の返送方法

回答書の返送方法には、郵便で送付する方法と家庭裁判所に直接持ち込む方法があります。郵便で送付する場合は、照会書に同封されている切手を使用できます。これにより、追加の費用負担なく返送することができます。

一方、直接持ち込む場合は、本人確認書類(運転免許証など)と一緒に回答書を持参する必要があります。この方法は、確実に提出できる上、提出日を明確に把握できるというメリットがあります。

いずれの方法を選択する場合も、回答書のコピーを取っておくことをおすすめします。コピーがあれば、後日回答内容を確認したり、万が一の紛失時にも対応できます。また、返送前に記入漏れや誤記がないか、もう一度確認することも大切です。確実な返送により、相続放棄の手続をスムーズに進めることができるでしょう。

相続放棄申述受理通知書の受け取り

相続放棄申述受理通知書は、家庭裁判所が相続放棄の申述を正式に受理したことを通知する重要な書類です。受け取れるのは申述人のみであり、ほかの相続人には送られません。通常、回答書の返送から1週間から2週間程度で届きます。薄い封筒が普通郵便で届く場合が多く、ほかの郵便物との区別は慎重に行うべきです。

相続放棄不受理の決定通知書が届いた場合

確率は非常に低いものの、手続の不備などにより、相続放棄不受理の決定通知書が届く場合があります。この場合は「即時抗告」と呼ばれる手続をとり、もう一度家庭裁判所で審理してもらいましょう。

即時抗告を申し立てることができるのは、不受理決定を受けた人本人です。申し立てる際は、最初に相続放棄の手続を行った家庭裁判所で、即時抗告の抗告状を提出します。抗告にあたっては、抗告状と抗告の理由を示す証拠書類を提出しなければなりません。審理に影響する証拠書類は、個別の判断が必要となるため、司法書士などに依頼するのが適切です。

相続放棄照会書のよくある質問

相続放棄の手続を進める中で、照会書や回答書に関する疑問が生じることは少なくありません。ここでは、よくある質問とその回答を紹介します。

照会書が届かない場合はどうする?

相続放棄申述書を提出後、2週間程度経っても照会書が届かない場合があります。弁護士や司法書士に依頼している場合は、代理人に送付されている可能性があるため、問い合わせて確認しましょう。

自分で相続放棄の手続を始めた場合や、代理人のもとに届いていない場合には、可能性の1つとして、申述内容が明確で追加の確認が不要と判断されたため送付の省略があったと考えられます。もっとも、これはほとんどないケースであり、手続が遅れていることも考えるべきでしょう。

回答書に誤りがあった場合の修正方法は?

回答書に誤りを発見した場合、確実に指定された方法で修正しなければなりません。修正するときは、誤った箇所に二重線を引き、その上から訂正印を押します。訂正印は、申述書や回答書で使用した印鑑と同じものを使用しましょう

大きな誤りや多数の修正がある場合は、家庭裁判所に連絡し、対応方法を確認することをおすすめします。場合によっては、回答書の再提出が必要になることもあります。再提出の場合は、新しい回答書に正しい内容を記入し、再度提出します。この際、提出期限に注意し、必要に応じて期限の延長を申し出ましょう。

相続放棄の受理はいつ完了する?

相続放棄の受理完了は、相続放棄申述受理通知書の到着をもって確認できます。通常、回答書の返送から1週間から2週間程度で通知書が届きます。ただし、家庭裁判所の業務状況により、この期間が前後する場合もあります。

受理完了の確認は、この通知書の到着を待つのがもっとも確実です。なお、相続放棄が受理されない場合にも通知は届きます。音沙汰がない場合は、何らかの理由で手続が進んでいないものと考えられます。通知書が届かない場合や、期間が大幅に過ぎても連絡がない場合は、家庭裁判所に問い合わせることをおすすめします。

相続放棄照会書には迅速かつ確実に対応を

相続放棄照会書は、相続放棄の手続において極めて重要な役割を果たします。申述人の意思確認や手続の適正性を確保するためのものであり、慎重に対応する必要があります。回答書の記入には正確さが求められ、期限内の返送も重要です。また、印鑑の一致や代筆の制限など、細かな注意点も多くあります。

当事務所では、相続放棄の手続を迅速かつ確実に行えるよう、助言などの支援を行っています。時間がないなどの不安要素が少しでもあれば、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載