相続放棄申述受理証明書が必要になる場面や申請方法・費用など解説

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相続放棄申述受理証明書とは

相続放棄申述受理証明書とは、相続放棄の事実を公的に証明する法的文書です。裁判所で発行される書面であり、相続放棄したことを第三者に示す際の公的な文書として使用されます。

相続放棄申述受理証明書は、主に借金返済請求への対応や相続登記手続などで使用されます。たとえば、被相続人の債務について支払い請求を受けた際、相続放棄申述受理証明書を提示することで、自身が相続放棄をして債務を負う義務がないことを証明できます。

相続放棄申述受理証明書を取得できるのは、相続放棄した本人だけでなく、ほかの相続人や利害関係人も申請可能です。1通150円で発行でき、必要なときに必要な枚数だけ取得可能です。

相続に関するさまざまな手続をスムーズに進めるためにも、相続放棄申述受理証明書の適切な使用方法を理解しておくことは非常に重要です。

相続放棄申述受理証明書と相続放棄申述受理通知書の違い

比較項目 相続放棄申述受理証明書 相続放棄申述受理通知書
発行方法 申請が必要 自動送付
再発行 可能(手数料必要) 不可
主な用途 第三者への公式な証明 本人への通知
取得者 申述人、相続人、利害関係人 申述人のみ
取得費用 必要(1通150円) 不要

相続放棄申述受理証明書と相続放棄申述受理通知書は、どちらも相続放棄が裁判所で受理されたことを示す書類ですが、いくつかの重要な違いがあります。

相続放棄申述受理通知書は、家庭裁判所が相続放棄の申述を受理したときに申述人に送付される書類です。相続放棄手続が完了すると、申請をしなくても相続放棄申述受理通知書が送付されます。この点は、取得するのに申請が必要な相続放棄申述受理証明書とは異なります。

ただし、手数料を支払えば何度でも発行可能な相続放棄申述受理証明書とは違い、相続放棄申述受理通知書は再発行できません。

また、両者は使用用途の違いもあります。相続放棄申述受理通知書は、そもそも裁判所が本人に相続放棄が完了したことを単に通知する文書です。これに対し、相続放棄申述受理証明書は、第三者に相続放棄の事実を公式に証明する際に使用する文書です。

相続放棄の事実を示すために相続放棄申述受理通知書を使用することも可能ですが、正式な証明が求められる場合には相続放棄申述受理証明書を取得して使用するのが一般的です。

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相続放棄申述受理証明書が必要とされるケース

相続放棄申述受理証明書は、相続手続の過程において重要な役割を果たす法的文書です。相続放棄申述受理証明書がどのように活用され、どのような場面で効力を発揮するのか、具体的な使用方法や役割について解説します。

債権者に相続放棄を証明するとき

相続放棄申述受理証明書を債権者に提示することで、相続放棄の事実を明確に示し、債務返済義務がないことを主張できます。相続放棄をしても、その事実が公表されるわけではありません。そのため、被相続人の債権者が相続放棄の事実を知らず、債務請求をしてくる可能性があります。このような場合、相続放棄申述受理証明書を相続放棄の事実を証明する証拠として提示することで、自身が債務を相続していないことを債権者に示せます。

相続放棄申述受理証明書は何度でも発行可能であり、複数の債権者に対して提示することも可能です。そのため、通知書の原本と異なり、1つの場面で証明書を提出してもほかの場面で使用できなくなる心配がありません。

相続放棄申述受理証明書を使えば、自身の権利を適切に守りつつ不要な債務請求から効果的に身を守ることができます。

不動産などの名義変更をするとき

相続放棄申述受理証明書によって相続関係が明確化され、誤った登記や将来の紛争を防ぐことができます。

たとえば、相続登記の際はすべての法定相続人の状況を明らかにする必要があり、相続放棄をした人がいればその事実を証明する必要があります。そこで、相続放棄申述受理証明書があれば誰が相続放棄をしたかを明らかにできるため、正しく登記手続ができます。

また、銀行口座の名義変更などで相続放棄申述受理証明書の提出が求められることがあります。ただし、金融機関によって手続の内容は異なるため、必要書類などは事前に確認しておく必要があります。このように、相続放棄申述受理証明書は、複雑な相続手続を正確かつ効率的に進めるうえで極めて重要な文書であり、相続に関わるさまざまな問題を未然に防ぐ役割を果たします。

相続放棄申述受理証明書の申請手順・必要書類

相続放棄申述受理証明書の申請手順・必要書類_イメージ

相続放棄申述受理証明書の申請手順、申請書の記入方法、必要書類について詳しく解説します。相続放棄を行った本人だけでなく、ほかの相続人や利害関係人が申請する場合の違いにも触れ、それぞれのケースに応じた適切な対応方法を紹介します。

これらの情報を理解することでスムーズな証明書の取得が可能となり、相続関連手続を円滑に進められます。

相続放棄申述受理証明書の申請手順

相続放棄申述受理証明書の申請手順は、以下のとおりです。

  1. 相続放棄の決断と申述
  2. 家庭裁判所への申述書提出
  3. 相続放棄申述受理通知書の受領
  4. 相続放棄証明書の申請書作成
  5. 必要書類の準備
  6. 家庭裁判所への申請書と書類の提出

申請書を提出するタイミングは、相続放棄申述が受理され、相続放棄申述受理通知書が届いたあとです。

相続放棄申述受理証明書の申請は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。通常、相続放棄申述受理通知書と一緒に送られてきますが、紛失した場合は窓口申請と郵送申請が可能であり、請書は各家庭裁判所公式サイトからダウンロードできます。ただし、裁判所によって書式が異なる場合があるため、申請する際は事前に確認しておきましょう。

手数料は1通150円で、申請書に収入印紙を貼付して手数料を納付します。郵送で申請する場合、返信用封筒と切手代も別途必要です。申請から発行までは通常1〜2週間程度かかります。

相続放棄申述受理証明書の申請書の書き方

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※引用:相続放棄受理証明書交付申請書 記入例│裁判所

申請書の記入には、以下の情報が必要です。

  • 事件番号
  • 受理年月日
  • 申請者の氏名
  • 申請者の電話番号
  • 必要な証明書の通数

事件番号と受理年月日は、相続放棄申述受理通知書に記載されているので、そちらを参照しながら正確に記入しましょう。

相続放棄申述受理証明書の申請の必要書類

必要書類は以下のとおりです。

本人が申請する場合

  • 相続放棄申述受理証明申請書
  • 相続放棄申述受理通知書
  • 申述人の本人確認書類(運転免許証、健康保険証など)
  • 未成年や被後見人の場合、法定代理人の本人確認書類

ほかの相続人や利害関係人が申請する場合

  • 相続放棄申述受理証明申請書
  • 請求者の本人確認書類
  • 利害関係を証明する書類(戸籍謄本、金銭消費貸借契約書など)
  • 法人の場合は法人の資格証明書と代表者の本人確認書類

利害関係人の申請では、申請者と被相続人の関係や利害関係を証明する追加書類が必要です。一方、利害関係人は自身の利害関係を証明する書類を提出するため、申述人本人にのみ送付される通知書を提出する必要はありません。

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相続放棄申述受理証明書で気をつけること

相続放棄申述受理証明書を取得するうえでは、いくつかの注意点があります。スムーズな手続のために以下の主要な注意点を押さえ、潜在的な問題の回避に役立てましょう。

即日発行はできない

相続放棄申述受理証明書は、裁判所へ直接訪問しても即日発行はできません。これは、裁判所職員が申請書類を精査して正確な証明書を作成し、裁判所印を押印するという一連の手順に時間が必要であるためです。

交付までの日数は裁判所によって異なるため、証明書がいつまでに必要なのかを把握したうえで、事前に確認しておくことが重要です。急を要する場合には、申請する裁判所に相談して最短の発行期間を確認しておくとよいでしょう。

申請には事件番号が必要

相続放棄申述受理証明書を申請する際は、申請書に「事件番号」を記入する必要があります。

本人が申請する場合、相続放棄申述受理通知書に記載されている事件番号を確認しましょう。相続放棄申述受理通知書を紛失してしまった場合、家庭裁判所へ照会して事件番号を確認することが可能です。照会に手数料はかかりません。ほかの相続人や利害関係人が申請する際も、事前に事件番号の調査が必要です。

情報の保存期間は30年間

裁判所は相続に関する情報を30年間保存しており、この期間を過ぎると相続放棄申述受理証明書の発行ができなくなります。もっとも。多くの債権は5~10年で時効を迎えるため、30年経過後に証明書が必要となるケースは稀です。

被相続人の債務が不明確な場合や予期せぬ債務を判明することが不安であれば、財産調査を念入りに行うのがおすすめです。財産調査によって相続財産の全体像が把握でき、隠れた債務の発見や時効の確認によって不安が解消できる可能性があります。

必要に応じて司法書士などの専門家に相談し、適切な対応を検討しましょう。

難しい法的手続は司法書士に相談しよう

相続放棄申述受理証明書は、相続放棄の事実を公的に証明する重要な法的文書です。被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で申請でき、窓口申請と郵送申請が可能です。手数料は1通150円で、申請から発行までは通常1〜2週間程度かかります。

相続放棄申述受理通知書とは異なる文書であるため、それぞれの特性と用途を理解し、適切に使い分けることが重要です。取得の際には即日発行ができないことや、申請時に事件番号が必要であることなど、いくつかの重要なポイントも押さえておきましょう。

相続に関する法的手続は、場合によっては非常に複雑になることがあります。不安やご不明点がございましたら、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。ご相談だけでも丁寧にサポートいたしますので、どうぞ安心してお問い合わせください。

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記事の監修者

司法書士法人さくら事務所 坂本孝文

司法書士法人さくら事務所
代表司法書士 坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

【メディア掲載】
・「女性自身」2024年5月7・14日合併号にて相続手続の解説を掲載